親の住まいに手すりを付けたり段差をなくしたりと、バリアフリーのリフォームを考え始めると、工事費のほかに「使える減税はないか」が気になってきます。ただ、調べると所得税や固定資産税など複数の話が出てきて、どれが自分の家に当てはまるのか分かりにくいものです。
バリアフリー改修の減税は、大きく分けると所得税の控除と固定資産税の減額の2つです。かかる税も申請する窓口も別々で、それぞれに対象者や工事の条件が決まっています。仕組みを知らないまま工事を終えると、使えたはずの減税を逃してしまうこともあります。
そこで、2つの減税の全体像と、対象になる方や控除額の目安、申告の時期、補助金との関係までをまとめました。細かな手続きは確定申告や固定資産税の記事に譲り、まずは使える減税を一望する手がかりとして役立ててください。
バリアフリーリフォームで使える2つの減税
バリアフリー改修には、所得税と固定資産税という2つの税で使える減税があります。ここでは、それぞれの全体像と、共通して押さえておきたい前提を説明します。
減税は所得税と固定資産税の2本立て
バリアフリーリフォームの減税は、大きく所得税の控除と固定資産税の減額の2つに分かれます。所得税は、工事をした年の所得にかかる税から一定額を差し引く仕組みで、確定申告をして受けるものです。固定資産税は、家や土地にかかる税で、一定の改修をすると翌年度分が軽くなります。かかる税も手続きの窓口も別なので、まずは2本立てだと知っておくと、あとの説明が追いやすくなるでしょう。
所得税は国に納める税、固定資産税は市区町村に納める税で、減税の申請先もそれぞれ分かれます。どちらか一方しか使えないわけではなく、要件を満たせば両方を受けられる場合もあります。まずは自分の工事がどちらの対象になりそうかを思い浮かべながら読み進めてください。
対象になるのは高齢者や要介護の方の住まい
どちらの減税も、対象になるのはおもに高齢者や要介護・要支援の方が暮らす住まいです。所得税では、50歳以上の方や、要介護・要支援の認定を受けた方、障害のある方、そうした親族と同居している方などが対象とされています。固定資産税でも、65歳以上の方や要介護・要支援の方、障害のある方が住んでいることが要件に含まれます。
若い世代だけが暮らす家の一般的なリフォームは、これらの減税の対象になりません。手すりの取り付けや段差の解消など、体の状態に合わせて住まいを整える工事が想定されています。自分の家族がこの対象に当てはまるかを、先に確かめておくと、あとの判断が早くなります。
補助金を受けた分は費用から差し引く
減税額を考えるうえで見落としやすいのが、補助金を受けた分の扱いです。介護保険の住宅改修費や自治体の補助金を受け取った場合、その金額は工事費用から差し引いたうえで、残りの自己負担分をもとに減税額を計算します。補助金でまかなった部分にまで減税を重ねられるわけではない、という考え方になります。
たとえば工事費が80万円で補助金を40万円受けたなら、減税の計算のもとになるのは残りの40万円です。所得税の控除でも固定資産税の減額でも、この差し引きの考え方は共通します。補助金と減税を両方使うときは、費用の内訳を分けて把握しておくと計算で迷いません。使う予定の補助金の額は、工事の見積もりと同時に確かめておくとよいでしょう。
所得税の控除(住宅特定改修特別税額控除)
所得税では、バリアフリー改修をした年の税額から一定額を差し引けます。ここでは、対象者や控除額、受け取るための手続きを説明します。
対象者は50歳以上や要介護・要支援の方
所得税の控除は、正式には住宅特定改修特別税額控除と呼ばれ、対象になる方の範囲が決まっています。国税庁の案内では、その年の12月31日時点で50歳以上の方、要介護・要支援の認定を受けた方、障害のある方、これらに当てはまる親族や65歳以上の親族と同居している方などが対象とされています。
このほかに、合計所得金額が一定額以下であることや、工事後の住宅の床面積が50平方メートル以上であることも要件です。自分や同居の家族がどの区分に当てはまるかで、使えるかどうかが変わってきます。国税庁のNo.1220 バリアフリー改修工事をした場合に対象者の細かな条件が示されているので、当てはまりそうなら早めに目を通しておくとよいでしょう。
控除額は標準的な費用の10パーセント
控除額は、実際に払った額そのものではなく、工事ごとに国が定めた標準的な費用をもとに計算します。国税庁の案内では、バリアフリー改修の標準的な費用相当額(補助金を差し引いた後)の10%を、その年の所得税から差し引く形が基本です。この対象になる費用には上限があり、200万円までとされています。
標準的な費用の上限200万円に対して10%にあたる20万円が、所得税控除のおおまかな上限になります。実際の支払額が標準的な費用と一致するとは限らないため、いくら戻るかは工事の内容しだいです。正確な控除額は、工事を頼む業者や税務署に確かめながら見積もっておくと安心です。
控除を受けるには確定申告が要る
所得税の控除は、黙っていても受けられるものではなく、確定申告をして初めて適用されます。会社員などふだん確定申告をしない方でも、控除を受ける年は自分で申告しなければなりません。申告のときには、増改築等工事証明書など、工事の内容と費用を証明する書類をそろえて提出します。
控除を受けられるのは、原則として工事をして住み始めた年の分です。申告の時期を逃すと、その年の控除が受けられなくなることもあるので注意してください。必要な書類や手順は、確定申告の記事で詳しく扱っているので、申告の前にあわせて確認しておくとよいでしょう。
固定資産税の減額
固定資産税は、一定のバリアフリー改修をすると翌年度分が軽くなります。ここでは、減額の幅や対象になる住宅、申告の仕方を説明します。
翌年度分の固定資産税が3分の1減る
バリアフリー改修をした住宅は、工事をした翌年度分の固定資産税が3分の1減額されます。国土交通省の固定資産税の減額措置でも、一定のバリアフリー改修工事を行った家屋について、翌年度分の固定資産税から3分の1が減額されると示されています。軽くなるのは1年度分で、ずっと続く割引ではありません。
減額されるのは家屋のうち100平方メートル相当分までで、それを超える広い家では全体が3分の1になるわけではありません。大きな邸宅より、一般的な広さの住まいで効きやすい仕組みといえます。おおよその減額幅を知りたいときは、いま納めている固定資産税額を目安に見当をつけておくとよいでしょう。
対象は新築10年以上でバリアフリー改修した住宅
固定資産税の減額には、住宅と工事についていくつかの要件があります。国土交通省の資料では、新築されてから10年以上を経過した家屋であること、賃貸住宅ではないこと、補助金などを差し引いた工事費用が50万円を超えることなどが挙げられています。改修後の床面積にも、下限と上限が定められている点に気をつけてください。
工事の中身も、手すりの取り付けや段差の解消、通路や出入口の拡張、滑りにくい床材への変更など、対象になるものが決まっています。見た目を変えるだけの改装は含まれません。自分の工事が当てはまるか迷うときは、市区町村の資産税の窓口に工事の内容を伝えて確かめておくと確実です。
工事後3か月以内に市区町村へ申告する
固定資産税の減額を受けるには、工事完了の日から3か月以内に、家屋のある市区町村へ申告する必要があります。所得税が国への確定申告なのに対し、こちらは市区町村の窓口が申請先になります。提出する書類は、固定資産税減額申告書のほか、対象者であることを示す介護保険の被保険者証の写しや、工事費用がわかる書類などです。
期限が工事後3か月と短めなので、工事が終わったら早めに動くことが欠かせません。必要書類は自治体によって少しずつ違うこともあります。減額の条件や書き方をもう少し詳しく知りたい方は、固定資産税の減額の記事もあわせて確認しておくとよいでしょう。
所得税控除と固定資産税減額の違い
所得税の控除と固定資産税の減額は、似た制度に見えて手続きも効き方も違います。ここでは、2つの違いと、両方を使えるかどうかを説明します。
手続きの窓口と時期が違う
2つの減税は、申請する相手も時期も別々です。所得税の控除は、工事をして住み始めた年の分を、翌年の確定申告の時期に税務署へ申告する形です。固定資産税の減額は、工事完了から3か月以内という短い期限で、市区町村へ申告します。同じ工事でも、それぞれの窓口に別々に手続きをすることになります。
下の表に、2つの減税のおもな違いをまとめました。
| 項目 | 所得税の控除 | 固定資産税の減額 |
|---|---|---|
| 軽くなる税 | 所得税(国税) | 固定資産税(地方税) |
| 効く期間 | 工事をして住んだ年の分 | 翌年度分の1年 |
| 減る額の目安 | 標準的な費用の10%(上限あり) | 税額の3分の1(100平方メートル相当分まで) |
| 申請先 | 税務署(確定申告) | 市区町村 |
| 申告の時期 | 翌年の確定申告 | 工事完了から3か月以内 |
期限や窓口を取り違えると、使えたはずの減税を逃すことにつながります。申請の順番や必要な書類も、それぞれの窓口で早めに確かめておくと迷いません。どちらを使うにしても、工事の前に手続きの流れを確かめておくと落ち着いて動けるでしょう。
所得税と固定資産税は併用できる
所得税の控除と固定資産税の減額は、それぞれの要件を満たせば両方を受けられます。かかる税が国税と地方税で別々なので、一方を使ったらもう一方が使えなくなる、という関係ではありません。同じバリアフリー改修について、所得税は確定申告で、固定資産税は市区町村で、と並行して申請できます。
ただし、それぞれに対象者や工事の条件があり、片方は満たしてももう片方は外れることもあります。補助金を差し引いた費用が両方の基準を超えているかなど、条件は別々に確かめなければなりません。両方を狙うなら、工事の前に業者や各窓口へ、どちらの対象になるかを聞いておくと無駄がありません。
減税を無駄にしないための注意点
減税は要件や期限が細かく、思い込みで進めると使い損ねることがあります。ここでは、申請の前に気をつけたい点を説明します。
制度は年度で変わるため最新を確認する
バリアフリー改修の減税は、適用の期限や要件が年度ごとに見直されます。固定資産税の減額措置にも適用期限が定められており、延長や条件の変更が過去にも行われてきました。数年前の情報のまま進めると、要件が変わっていて対象から外れてしまうこともあります。
工事を計画する時点で、国税庁や国土交通省、市区町村の最新の案内を確かめておくことが欠かせません。とくに控除額や対象工事の範囲は、細かく改正されることがあります。固定資産税の減額の適用期限も、これまで何度か延長を重ねてきた経緯があるものです。この記事で挙げた数字も目安として読み、実際に申請するときは最新の一次情報で確かめてください。
標準的な費用と実際の支払額は別に考える
所得税の控除でつまずきやすいのが、標準的な費用と実際に払った額の違いです。控除額は、工事ごとに国が定めた標準的な費用をもとに計算するため、実際の支払額がそのまま10%戻るわけではありません。見積書の金額だけを見て戻る額を多く見込むと、あとで差にとまどうことがあります。
どの工事がいくらの標準的な費用にあたるかは、工事の内容ごとに決まっているものです。増改築等工事証明書を作る業者に、控除のもとになる金額を確かめておくと見込みを立てやすくなります。戻る額をあてにして予算を組むときは、少し控えめに見積もっておくと安全でしょう。
補助金を先に固めてから減税を計算する
補助金と減税は、順番を取り違えると計算が合わなくなります。減税額のもとになるのは、補助金を差し引いた後の自己負担分です。先に減税額を見込んでから補助金を申請すると、差し引きで対象費用が減り、思ったより戻らないこともあります。使う予定の補助金は、工事費の見積もりと同時につかんでおきましょう。
介護保険の住宅改修費や自治体の補助金は、制度ごとに上限や対象が違います。補助金でどこまでまかなえるかが決まると、減税のもとになる自己負担分も見えてくるはずです。補助金と減税をどちらも使うなら、まず補助金の額を固めてから減税を計算する順番で進めると、見込み違いを防げます。
バリアフリー改修の減税は、対象者や工事の内容、適用期限が年度で変わります。この記事で挙げた控除額や要件はおおまかな目安です。実際に申請する前に、所得税は国税庁と税務署、固定資産税は市区町村の窓口で、最新の条件を必ず確かめてください。
まとめ
バリアフリーリフォームの減税には、所得税の控除と固定資産税の減額の2つがあります。所得税は、工事をして住んだ年の分を確定申告で申請し、標準的な費用の10%が戻ります。固定資産税は、翌年度分が3分の1軽くなり、工事完了から3か月以内に市区町村へ申告する形です。
どちらも対象になるのは高齢者や要介護・要支援の方の住まいで、補助金を受けた分は費用から差し引いて計算します。要件を満たせば両方を受けられますが、期限も窓口も別々なので、工事の前に流れを確かめておくことが欠かせません。制度は年度で変わるため、申請の前に最新の条件を確認しておいてください。介護保険を使った工事そのものの進め方は、介護保険の住宅改修もあわせて役立ててください。


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