バリアフリーリフォームの確定申告|所得税控除の必要書類と手順

費用・補助金・税制

親のために手すりを付けたり段差をなくしたりする工事は、まとまった費用がかかります。この費用の一部が、確定申告をすることで所得税から戻ってくる場合があると聞いて、どう手続きすればよいか調べている方は多いものです。

ただ、バリアフリー改修に関わる控除にはいくつか種類があり、名前も似ています。すでに終わった制度も混ざっているため、どれが自分の家に当てはまるのか、何をそろえて申告すればよいのかが分かりにくくなっています。

そこで、バリアフリーリフォームで使える所得税の控除の種類と、対象になる要件、確定申告でそろえる必要書類、申告の時期と手順を国税庁の情報をもとにまとめました。はじめて確定申告で控除を受ける方の手がかりとして役立ててください。

バリアフリーリフォームで受けられる所得税の控除

バリアフリーリフォームの費用は、確定申告をすると所得税から差し引ける控除の対象になる場合があります。ここでは、使える控除の種類と、混同しやすい制度の違いを見ていきます。

ローンがなくても使える投資型の控除

はじめに押さえておきたいのが、住宅ローンを使わなくても受けられる「住宅特定改修特別税額控除」です。自己資金でバリアフリー改修をした場合でも、工事の内容が要件に合えば、標準的な工事費用の一部を申告した年の所得税から直接差し引けます。投資型と呼ばれるこの控除は、その年の確定申告だけで完結するのが特徴です。

国税庁の「No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」では、一定の要件を満たすバリアフリー改修について、標準的な工事費用の額をもとに計算した金額をその年分の所得税額から控除できると示されています。ローンを組まずに自己資金で工事をした家庭でも使えるのが、この投資型控除の大きな利点です。親の介護のために現金で工事費をまかなった方は、まずこの控除に当てはまるかを確かめてみてください。

ローン型の控除は現在終了している

もう一つ、住宅ローンを使って改修した場合の「特定増改築等住宅借入金等特別控除」という制度がありました。ただし、この控除は現在は新たに受けられません。ローンの年末残高をもとに数年にわたって控除する仕組みでしたが、適用の期限が過ぎています。

国税庁の「No.1218 借入金を利用してバリアフリー改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)」によれば、令和3年12月31日までに居住の用に供した場合が対象で、令和4年以後に工事をして住み始めた場合はこの控除を受けられないと示されています。古い情報を見てローン型で申告しようとすると行き違いが起きるので、これから工事をする方は前の投資型控除のほうを軸に考えてください。

医療費控除とは別の制度として考える

バリアフリー改修に関わる税の負担軽減には、所得税の控除とは別に医療費控除もあります。ただし両者は目的が異なる制度で、同じ工事費をそのまま両方に使えるわけではありません。住宅特定改修特別税額控除はリフォーム工事そのものへの控除で、医療費控除は治療に必要な費用に対するものです。

要介護認定を受けた方の住宅改修や福祉用具のうち、医師の指示など一定の条件を満たすものは医療費控除の対象になる場合があります。どちらで申告できるか、あるいは併用できるかは工事の内容や条件で変わるので、介護リフォームや福祉用具の医療費控除の扱いもあわせて確認しておくと迷いにくくなります。判断に迷うときは、税務署や税理士に一度相談してから申告方法を決めるとよいでしょう。

控除を受けるための主な要件

投資型の控除は、誰でも工事さえすれば受けられるわけではなく、人と工事と住まいそれぞれに条件があります。ここでは、確認しておきたい主な要件を順に説明します。

対象になるのは50歳以上や要介護認定を受けた方

まず確かめたいのは、住む方がこの控除の対象者に当てはまるかどうかです。国税庁の説明では、50歳以上の方、介護保険の要介護または要支援の認定を受けている方、所得税法上の障害者に当たる方、これらの方や65歳以上の親族と同居している方などが対象として挙げられています。親のための工事であれば、要介護認定や年齢の条件で当てはまることが多いでしょう。

対象者かどうかは、工事をした住まいに実際に住んでいる方を基準に判断します。親と同居してその家を改修した場合は、同居する家族を対象者として控除を受けられることがあります。自分の家庭が当てはまるか分からないときは、要介護認定の状況や同居の実態を書き出したうえで、税務署に確認してみてください。

対象工事は手すり設置や段差解消など8種類

次に確かめるのは、行った工事が控除の対象になる種類かどうかです。国税庁は対象となる高齢者等居住改修工事等として、通路や出入口の幅を広げる工事、階段の勾配をゆるめる工事、浴室の改良、便所の改良、手すりを取り付ける工事、床の段差を解消する工事、出入口の戸を替える工事、床を滑りにくい材料に取り替える工事の8種類を挙げています。

親の家でよく行われる手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床への張り替えは、いずれもこの対象工事に含まれるものです。ただし、同じ場所の工事でも内容によって対象になるかが分かれることがあります。見積もりや契約の前に、頼む業者や建築士に「この工事は住宅特定改修特別税額控除の対象になるか」を確かめておくと、後で申告できずに困る事態を防げます。

工事後の床面積は50平方メートル以上が必要

住まいそのものにも要件があり、工事をした後の床面積が一定以上あることが求められます。国税庁の説明では、改修後の住宅の床面積が50平方メートル以上で、かつ床面積の2分の1以上を自分の居住のために使っていることが条件とされています。マンションの一室でも一戸建てでも、この床面積の考え方は共通です。

床面積は登記事項証明書などで確認できるので、申告の前に自分の家がこの条件を満たすかを見ておきましょう。二世帯住宅や店舗兼住宅のように居住以外の用途が混ざる家では、居住部分の割合が条件に関わってきます。判断が難しい住まいの場合は、登記の内容を手元に用意したうえで税務署に相談すると確実です。

居住を始めた期限に注意する

この控除には、工事をした住まいに住み始める期限が定められています。国税庁の説明では、改修した家屋を平成26年4月1日から令和7年12月31日までの間に居住の用に供した場合が対象とされてきました。工事が終わった時期ではなく、住み始めた時期が基準になる点に気をつけてください。

控除の対象になる居住開始の期限は、税制改正で延長されたり変わったりすることがあります。古い年の情報のまま判断すると、期限を読み違えるおそれがあります。自分が住み始めた年が対象に入るかどうかは、申告する年の最新の内容を国税庁の該当ページで確かめてから手続きを進めるとよいでしょう。

確定申告で用意する必要書類

控除を受けるには、確定申告のときに工事の内容や住まいを証明する書類を添える必要があります。ここでは、そろえておきたい主な必要書類を説明します。

増改築等工事証明書は建築士などが発行する

最も欠かせないのが、工事が控除の対象に当たることを証明する「増改築等工事証明書」です。この書類は建築士や指定確認検査機関などが発行するもので、行った工事の内容や標準的な費用の額が記されています。控除額の計算のもとになる金額もこの証明書で確認するため、これが無いと申告そのものが進みません。

証明書は自分では作れないので、工事を頼む段階で発行してもらえるかを業者や建築士に確かめておくことが欠かせません。発行には別途費用がかかる場合もあります。工事が終わってから慌てないよう、契約の前に「増改築等工事証明書を発行してもらえるか」を確認しておきましょう。

工事の請負契約書と領収書をそろえる

工事を実際に行い、費用を支払った事実を示す書類も必要になります。具体的には、工事の請負契約書の写しや、支払った費用の領収書などです。これらは工事の内容や金額を裏づけるもので、増改築等工事証明書に記された内容とあわせて確認されます。

契約書や領収書は、工事のたびに受け取ったらまとめて保管しておくと申告のときに探さずに済みます。複数の業者に分けて工事を頼んだ場合は、それぞれの書類がそろっているかを確かめてください。補助金や介護保険の住宅改修費を受け取った場合は、その額が分かる書類も用意しておくと、控除額の計算がスムーズに進みます。

登記事項証明書で床面積を証明する

住まいの床面積が要件を満たすことを示すため、家屋の登記事項証明書も添えます。この書類には床面積が記載されており、50平方メートル以上という条件を満たしているかの確認に使われるものです。登記事項証明書は法務局で取得でき、オンラインでも請求できます。

対象者が介護保険の要介護認定などを受けていることを条件にする場合は、介護保険の被保険者証の写しなどを求められることもあります。給与所得者の方は、源泉徴収票も手元に用意しておくとよいでしょう。主な必要書類を下の表にまとめました。

書類 主な役割 入手先
計算明細書 控除額を計算して示す 国税庁(作成コーナー等)
増改築等工事証明書 対象工事と費用を証明する 建築士・指定確認検査機関等
請負契約書・領収書 工事内容と支払いを示す 工事を頼んだ業者
登記事項証明書 床面積の要件を証明する 法務局
補助金等の額が分かる書類 差し引く給付額を示す 交付元の自治体等
注意

増改築等工事証明書は、控除を受けるうえで欠かせない書類です。建築士や指定確認検査機関などしか発行できず、これが無いと控除額を計算できません。工事を頼む段階で発行してもらえるかを必ず確かめ、契約書や領収書とあわせて保管しておいてください。

確定申告の進め方

書類がそろったら、決められた期間に確定申告書を作って税務署に提出します。ここでは、申告の時期と提出のしかたを説明します。

申告期間は原則として翌年の2月16日から3月15日

確定申告は、控除を受けたい年の翌年に行います。所得税の確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。たとえば工事をした年に住み始めたなら、その翌年のこの期間に申告します。期限を過ぎると手続きが煩雑になるため、書類は早めにそろえておきましょう。

申告書には、住宅耐震改修特別控除額・住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書を作って添えます。この明細書に増改築等工事証明書の内容を書き写して控除額を計算し、確定申告書と一緒に提出する流れです。計算に迷うときは、国税庁の確定申告書等作成コーナーを使うと案内に沿って入力できます。

e-Taxか書面で所轄の税務署に提出する

でき上がった申告書と添付書類は、住所地を管轄する税務署に提出します。提出のしかたは、パソコンやスマートフォンから送るe-Taxと、書面を郵送または持参する方法があります。e-Taxを使う場合は、マイナンバーカードなど本人確認の準備が必要です。

書面で出す場合は、増改築等工事証明書や登記事項証明書などの添付書類を申告書に添えて提出します。e-Taxでは一部の書類の提出を省略できる場合もありますが、求められたときに示せるよう手元に保管しておく必要があります。どちらの方法が自分に合うか迷うときは、税務署の相談窓口で確認しながら進めるとよいでしょう。

控除額の計算と申告前の確認

控除でいくら戻るのかは、工事の費用や受け取った補助金によって変わります。ここでは、控除額の考え方と、申告の前に確かめておきたい点を説明します。

控除額は標準的な工事費用の10パーセント

投資型の控除額は、標準的な工事費用の額を10パーセントかけて計算するのが基本です。国税庁の説明では、控除額はバリアフリー改修工事の標準的な費用の額に10パーセントをかけた金額を軸に、一定の追加分に5パーセントをかけた金額を加える形で計算します。もとになる標準的な費用の額には、令和4年1月1日以後に住み始めた場合は200万円という上限が設けられています。

実際にかかった金額そのものではなく、工事の種類ごとに定められた標準的な費用の額を使う点に注意してください。この金額は増改築等工事証明書に記されるので、自分で相場を調べて計算する必要はありません。おおよその戻り額を知りたいときは、証明書に書かれた標準的な費用の額をもとに見当をつけるとよいでしょう。

補助金や介護保険の給付分は差し引く

工事費に対して補助金や介護保険の住宅改修費を受け取っている場合は、その分を差し引いて控除額を計算します。自治体の補助金や介護保険から給付を受けたお金は自分で負担した費用ではないため、控除の対象から除く決まりだからです。受け取った給付を含めたまま計算すると、控除額が過大になってしまいます。

補助金や給付の額は、交付を決めた通知や自治体からの書類で確認できます。介護保険の住宅改修費を使った場合は、その支給額が分かる書類も用意しておきましょう。給付分を差し引いた後の自己負担額がいくらになるかを整えておくと、申告書の計算で迷わずに済みます。

制度は年度で変わるため最新は国税庁で確認

バリアフリー改修の税の優遇は、控除額の上限や適用の期限が税制改正で変わることがあります。ここで挙げた金額や年の期限も、申告する年によって異なることがあるでしょう。古い年の情報のまま準備を進めると、対象から外れていたり、控除額の計算がずれたりするおそれがあります。

申告の前には、その年の最新の要件と控除額を国税庁の該当ページで確かめてから手続きしてください。所得税の控除だけでなく固定資産税の減額なども含めて全体を見たいときは、バリアフリーリフォームで使える減税のまとめもあわせて確認しておくと、使える制度を見落としにくくなります。判断に迷う点があれば、税務署や税理士に相談してから申告するのが確実です。

まとめ

バリアフリーリフォームの費用は、確定申告をすると住宅特定改修特別税額控除として所得税から差し引ける場合があります。ローンがなくても使える投資型の控除で、対象者や工事の種類、工事後の床面積が50平方メートル以上といった要件を満たすことが条件です。

確定申告では、建築士などが発行する増改築等工事証明書、工事の請負契約書と領収書、登記事項証明書、計算明細書などをそろえて、原則として翌年の2月16日から3月15日までに税務署へ提出します。控除額は標準的な工事費用の10パーセントを軸に計算し、補助金や介護保険の給付分は差し引きます。制度は年度で変わるので、対象になるかや控除額は申告する年の最新の内容を国税庁で確かめてから手続きしてください。福祉用具や住宅改修が医療費控除の対象になるかを知りたいときは、介護リフォームや福祉用具の医療費控除もあわせて役立ててください。

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