親のために手すりを付けたり段差をなくしたりしようと考えたとき、介護保険の住宅改修とは別に、住んでいる市区町村が独自の補助金を出していることがあります。うまく使えれば、自己負担をさらに減らせる場合もあります。
ただ、この自治体の補助金は国が全国一律で決めた制度ではありません。市区町村ごとに、そもそも制度があるかどうか、いくらまで出るのか、どんな工事や人が対象になるのかがまるで違います。隣の市では使えても、自分の市にはない、ということも珍しくありません。
そこで、自治体の補助金が介護保険とどう違うのか、自分の市区町村の制度をどう探せばよいのか、申請でつまずかないためのコツまでをまとめました。どの窓口に何を確かめればよいか迷ったとき、動き出す前の手がかりとして役立ててください。
自治体の補助金と介護保険の住宅改修の違い
自治体の補助金を探す前に、これが介護保険の住宅改修とは別のお金だと知っておくと、窓口での相談がかみ合いやすくなります。ここでは、両者がどこで分かれているのかを見ていきます。
自治体の補助金は市区町村ごとに有無や上限が違う
自治体の補助金でまず押さえたいのは、内容が市区町村ごとにばらばらだという点です。介護保険の住宅改修が全国どこでも同じルールで動くのに対し、自治体独自の助成は、それぞれの市や区が予算の範囲で独自に設けているものです。制度の名前も上限額も対象工事も、住んでいる場所によって変わります。
たとえば東京都福祉局の住宅改善事業の区市町村別事業概要一覧でも、この事業は各区市町村が補助を行うもので、実施状況が異なる(実施していない区市町村もある)と明記されています。つまり「バリアフリー補助金はいくらもらえるか」という問いに、全国共通の答えはありません。まず自分の市区町村にそもそも制度があるかを確かめるところから始めてください。
介護保険の住宅改修とは財源も枠も分かれている
自治体の補助金と介護保険の住宅改修は、お金の出どころも使える枠も別になっています。介護保険の住宅改修は、要介護・要支援の認定を受けた方が対象で、支給限度基準額は一人あたり生涯20万円と全国共通です。厚生労働省の住宅改修の制度概要でも、この枠組みが示されています。
一方、自治体の補助金は市区町村の予算から出るお金で、介護保険の20万円とは別に数えます。要介護認定がなくても、一定の年齢以上なら使える制度を持つ自治体もあるでしょう。両者は目的が近く工事の中身も重なりますが、財源も申請先も別だと分けて考えると、どちらを先に使うかの見当がつきやすくなります。二つの違いを表にまとめました。
| 項目 | 介護保険の住宅改修 | 自治体の補助金 |
|---|---|---|
| 財源 | 介護保険(全国共通) | 市区町村の予算 |
| 上限 | 一人生涯20万円 | 自治体ごとに異なる |
| 対象者 | 要介護・要支援の認定者 | 自治体ごとに異なる |
| 申請先 | 市区町村の介護保険担当 | 市区町村の高齢福祉担当など |
介護保険に上乗せで使える自治体もある
自治体の補助金の中には、介護保険の住宅改修に上乗せする形で使えるものもあります。介護保険の20万円の枠を超えた部分や、介護保険では対象にならない工事に対して、市区町村が独自に費用の一部を助成する仕組みです。うまく組み合わせれば、介護保険だけを使うより自己負担を抑えられることがあります。
ただし、上乗せできるか、介護保険と同時に使えるかは自治体によって扱いが分かれる点に注意しましょう。介護保険を優先して使うことを条件にしている市区町村もあれば、別立てで申請できるところもあります。自治体の補助金は介護保険とは別枠だが、併用できるかどうかは市区町村ごとに決まっている点に気をつけてください。親の家を子が費用を出して直す場合の負担や税の考え方は、親の家をリフォームするときの補助金と費用負担でも扱っています。
自治体の補助金の探し方
自分の市区町村にどんな補助金があるかは、待っていても向こうからは知らせてくれません。ここでは、制度を自分から見つけにいくための三つの道筋を説明します。
市区町村の公式サイトで助成の名前を検索する
最初に試したいのは、住んでいる市区町村の公式サイトで制度を探す方法です。検索窓や検索エンジンで「(市区町村名) 高齢者 住宅改修 助成」「(市区町村名) バリアフリー 補助金」といった言葉を組み合わせて調べると、制度のページにたどり着けることが多くあります。制度名は「住宅改修費助成」「住宅改善事業」「福祉のまちづくり」など自治体ごとに違うので、いくつかの言い方で試してみてください。
公式サイトのページには、対象工事や上限額、申請の条件、募集の期間、問い合わせ先の窓口が書かれています。年度ごとに内容が変わることもあるため、見つけたページが今年度のものかどうかも確かめておきましょう。情報が古かったり見当たらなかったりするときは、次に挙げる相談窓口に直接聞くのが確実です。
地域包括支援センターやケアマネジャーに聞く
公式サイトだけでは分かりにくいときは、地域包括支援センターに相談する方法があります。地域包括支援センターは市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、厚生労働省の地域包括支援センターの概要でも、地域の高齢者の総合相談や必要な援助を行う中核的な機関と位置づけられています。地元の福祉サービスに詳しいので、自治体独自の助成についても最新の情報を持っていることが多くあります。
すでに介護保険を使っていて担当のケアマネジャーがいるなら、ケアマネジャーに聞くのも早い方法です。住宅改修に関わることの多い立場なので、地域でどんな補助金が使えるか、どの窓口に行けばよいかを教えてもらえます。一人で調べて迷うより、こうした窓口に「うちの市で使える補助金はありますか」と一度たずねてみるとよいでしょう。
広報誌や窓口で今年度の募集を確かめる
インターネット以外にも、市区町村の広報誌に補助金の案内が載ることがあります。年度の始めや募集の時期に合わせて、住宅改修やバリアフリーの助成が特集されることがあるので、毎月届く広報誌に目を通しておくと見つけやすくなります。過去の号は公式サイトでも読めることが多いものです。
もっとも確実なのは、市区町村の高齢福祉担当の窓口に直接足を運ぶことです。先ほどの東京都福祉局の一覧でも、申請手続は各区市町村の窓口へ直接問い合わせるよう案内されています。窓口では、今年度の募集がまだ受け付けているか、予算が残っているかまで確かめられます。制度は年度ごとに区切られるので、動くと決めたら早めに現在の募集状況を聞いておきましょう。
自治体の補助金でよくある対象と条件
自治体の補助金は内容がばらばらとはいえ、対象や条件にはよく見られる共通の傾向があります。ここでは、申請の前に確かめておきたい代表的な条件を挙げます。
対象はバリアフリーを目的とした工事が中心
自治体の補助金の多くは、高齢者や体の不自由な方が暮らしやすくなる工事を対象にしています。手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床への変更、和式から洋式へのトイレの取り替え、浴室の改修など、バリアフリーを目的とした工事が中心です。介護保険の住宅改修と重なる工事が多いものの、自治体によっては対象の幅が広いこともあります。
一方で、住まいの快適さを増すだけの模様替えや、老朽化に伴う修繕は対象外とされることがほとんどです。同じ工事でも、何のために行うかで対象になるかどうかが変わります。申請の前に、自分が考えている工事がその制度の対象に入るかを、窓口や制度のページで一つずつ確かめておいてください。
年齢や要介護認定などの条件が付く
自治体の補助金には、使える人の条件が定められていることが一般的です。よくあるのは「65歳以上の高齢者がいる世帯」「要介護または要支援の認定を受けている方」といった条件です。介護保険の住宅改修と同じく要介護認定を求める制度もあれば、認定がなくても年齢の条件だけで使える制度もあり、ここも自治体で分かれます。
対象者の条件は、その工事で暮らしが楽になる本人を基準に決められていることが多いものです。同居している家族の状況が問われる場合もあります。自分や親がその補助金の対象者に当てはまるかは、年齢と要介護認定の有無をまず確かめると見当がつきます。条件に合うか判断に迷うときは、思い込みで決めず窓口に確認してください。
所得や世帯の制限が設けられることもある
年齢や要介護認定に加えて、所得や世帯の状況に条件を付ける自治体もあります。一定の所得を超える世帯は対象外にしたり、住民税の課税状況によって補助の割合や上限を変えたりする仕組みです。限られた予算を、より支援が必要な世帯へ届けるための線引きといえます。
こうした制限があるかどうか、あるとすればどの範囲かは制度ごとに違うでしょう。所得の条件があると知らずに工事を進めてしまうと、あとで対象外と分かって補助を受けられないこともあります。申請の前に、対象工事だけでなく、所得や世帯についての条件まで含めて確かめておくことが欠かせません。
自治体の補助金を受けるための申請のコツ
条件に合いそうだと分かったら、次は申請でつまずかないための段取りです。ここでは、補助を確実に受け取るために押さえておきたい四つのコツを説明します。
工事に着手する前に申請する
申請でもっとも大切なのは、工事を始める前に申請を済ませることです。多くの自治体の補助金は、介護保険の住宅改修と同じく、着工前の申請と自治体からの承認を条件にしています。工事が終わってから申請しても補助を受けられないことがほとんどなので、ここを外すと制度そのものが使えなくなります。
段取りとしては、工事の内容と見積もりを決めたら、契約や着工の前にまず申請する流れになります。よかれと思って先に工事を進めてしまうと、あとから補助の対象にならないと分かる失敗が起こりがちです。自治体の補助金は着工前の申請が原則で、工事を始めてからでは間に合わないと考えてください。動く順番を間違えないよう、申請を工事より先に置きましょう。
年度の予算枠と締め切りに間に合わせる
自治体の補助金は、その年度の予算の範囲で行われるため、早く動くほど有利になります。募集の件数や金額に上限があり、申請が予算に達すると年度の途中でも受け付けを終える制度が少なくありません。先着順で埋まっていくところもあるので、年度の後半になると残っていないこともあります。
制度は多くが四月から翌年三月までの年度で区切られ、申請の締め切りや工事を終える期限が決められています。使えると分かったら、次の募集を待つより、今年度の枠がまだ残っているうちに動くのが確実です。予算の残り具合や締め切りは年度ごとに変わるので、窓口で最新の状況を確かめてから計画を立ててください。
必要書類を早めにそろえる
申請には、いくつかの書類をそろえる必要があります。よく求められるのは、申請書のほか、工事の見積書、工事する場所の現状がわかる写真、住宅の平面図、本人確認の書類などです。制度によっては、要介護認定の内容がわかる書類や、住宅の所有者の承諾書が要ることもあります。
これらの書類は、業者に用意してもらうものと自分でそろえるものが混じります。見積書や図面は工事を頼む業者に、写真や本人確認書類は自分で準備する形が一般的です。書類がひとつでも足りないと受け付けてもらえないので、申請の窓口で必要なものの一覧をもらい、早めにそろえ始めるとよいでしょう。
介護保険の住宅改修との併用の可否を確かめる
自治体の補助金を使うときは、介護保険の住宅改修と一緒に使えるかを先に確かめておくことが大切です。介護保険を優先して使うことを条件にする自治体、介護保険で足りない分だけを補助する自治体、別立てで申請できる自治体など、扱いは分かれます。順番や組み合わせを間違えると、片方しか使えなくなることもあるでしょう。
どちらも着工前の申請が必要になるため、二つの制度を使うなら申請の段取りをまとめて考えておくと動きやすくなるでしょう。ケアマネジャーや福祉用具の担当者、市区町村の窓口に、両方を使う場合の順番を相談しておくと、どちらも無駄なく使えます。
自治体の補助金を介護保険の住宅改修と併用できるかは、市区町村ごとに扱いが違います。どちらも工事に着手する前の申請が原則なので、両方を使いたいときは、契約や着工の前に市区町村の窓口とケアマネジャーへ順番を確かめてください。工事を始めてからでは、補助を受けられなくなることがあります。
補助金を使うときに気をつけたい点
制度が見つかり条件にも合いそうでも、進め方を誤ると補助を受け損ねます。ここでは、申請の前後で気をつけておきたい二つの点を挙げます。
交付決定の前に契約や着工をしない
補助金の手続きでとくに注意したいのは、自治体からの交付決定を待ってから工事に入ることです。申請を出しただけでは、まだ補助が受けられると決まったわけではありません。自治体が審査して交付を決定する前に契約や着工をすると、対象外と判断されて補助を受けられない場合があります。
見積もりや業者が決まると早く工事を進めたくなりますが、交付決定の通知が届くまでは契約書に印を押さず、着工も待つのが安全です。どの時点から工事を始めてよいかは制度によって違うので、申請のときに「いつから着工してよいか」を窓口ではっきり確かめておきましょう。手順を守ることが、補助を確実に受け取る近道になります。
業者の見積もりは申請前に固める
申請には工事の見積書が要るため、業者選びと見積もりは申請より前に済ませておく必要があります。どんな工事をいくらで行うかが決まっていないと、申請書も書けず書類もそろいません。複数の業者から見積もりを取って比べておくと、金額の妥当さも判断しやすくなります。
見積もりを頼むときは、補助金を使う予定だと業者に伝えておくとよいでしょう。自治体の補助金や介護保険の住宅改修を扱い慣れた業者なら、申請に必要な書類の作成にも協力してくれます。見積もりの内容が申請後に大きく変わると出し直しになることもあるので、工事の範囲は申請の前にしっかり固めておいてください。
まとめ
自治体の補助金は、介護保険の住宅改修とは別枠で、市区町村ごとに有無も上限も対象もばらばらです。まずは自分の住む市区町村に制度があるかを、公式サイトの検索や地域包括支援センター、窓口への問い合わせで確かめるところから始めます。対象工事や、年齢や要介護認定、所得といった条件に当てはまるかも一つずつ確認しましょう。
申請のコツは、工事に着手する前に申請すること、年度の予算枠と締め切りに間に合わせること、必要書類を早めにそろえること、介護保険との併用の可否を先に確かめることの四つです。交付決定の前に契約や着工をしない点にも気をつけてください。使える制度が複数あるときは、バリアフリーリフォームの補助金まとめもあわせて役立ててください。


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