バリアフリーリフォームの費用相場|場所別の目安と総額の考え方

リフォームで直す

親の家を直そうと決めても、まず引っかかるのが「いくらかかるのか」です。検索すれば数万円という数字も、数百万円という数字も出てきて、どちらが自分の家に当てはまるのか分かりません。

バリアフリーリフォームの費用は、直す場所と工事のやり方、そして家の今の状態で大きく変わります。手すりを1本付けるだけの工事と、浴室を丸ごと入れ替える工事では、そもそも桁が違います。ひとつの相場に丸めて示せる工事ではありません。

そこで、場所ごとに費用が何で決まるのか、介護保険の20万円という物差しをどう使うのか、総額をどう見積もるのかを順に見ていきます。これから業者に問い合わせる前の、当たりをつける材料として役立ててください。

バリアフリーリフォームの費用相場の幅

バリアフリーリフォームの費用は、ひとつの平均値で言い当てられるものではありません。ここでは、相場の幅がなぜここまで開くのかを見ていきます。

工事の部位と規模で金額の桁が変わる

費用の幅が開くいちばんの理由は、バリアフリーリフォームという言葉がまったく規模の違う工事をまとめて指しているからです。廊下に手すりを1本付ける工事も、浴室を在来工法からユニットバスに入れ替えて段差をなくす工事も、どちらもバリアフリーリフォームと呼ばれます。前者は半日で終わり、後者は解体から給排水の手直しまで含めて1週間前後かかる工事です。

同じ「バリアフリーリフォーム」でも、手すり1本と浴室の全面改修では費用の桁が2つほど違います。だから「相場はいくらか」と広く調べても、自分の家に効く数字にはたどり着きません。まずは親の家で直したい場所を1か所か2か所に絞り、その場所の工事について調べてみてください。

リフォーム資金は平均154万円で中央値は48万円

家庭が実際にリフォームへ出している金額を見ると、平均と中央値のずれが分布の偏りを教えてくれます。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査では、リフォーム住宅のリフォーム資金は平均154万円、中央値は48万円と示されています。三大都市圏でリフォームを行った世帯を対象にした調査で、バリアフリー工事に限った数字ではありません。

平均が154万円なのに中央値が48万円ということは、半分の世帯は48万円以下で済ませ、一部の大きな工事が平均を押し上げている形です。同じ調査では自己資金比率が85.5%とも示されており、多くの世帯は手持ちの範囲でまかなえる規模に収めています。この分布を頭に置いておくと、いきなり数百万円の見積りが出てきたとき「うちはそこまでやる必要があるのか」と立ち止まれるでしょう。

相場を調べる前に直す場所を決める

金額から入ると、どこまで直すかがぼやけたまま予算だけが膨らみます。業者に「バリアフリーにしたい」とだけ伝えると、家じゅうを一度に直す提案が返ってきやすく、見積り総額は当然大きくなるでしょう。一方で「夜中のトイレでふらつくので、寝室からトイレまでの動線を安全にしたい」と伝えれば、手すりと足元灯と敷居の段差解消といった、必要な範囲の見積りになります。

先に決めるのは金額ではなく、いま親がどこで危ないかです。ふらついた場所、つかまろうとして何もなかった場所、またぎづらそうにしている場所を、家族が見て書き出しておきましょう。何をどう直すかの全体像から確かめたい方は、バリアフリーリフォームとはを先に読んでおくと、この後の金額の話が実感を持って読めます。

場所別の費用の目安

同じ工事名でも、家の状態しだいで費用は上下します。ここでは、場所ごとに何が金額を動かすのかを説明します。

手すりの費用は本数と下地の状態で動く

手すりは、バリアフリーリフォームでいちばん多く選ばれ、いちばん安く済む工事です。金額を左右するのは、まず本数と長さで、廊下に1本と階段の上り下り全体に通すのとでは手間がまるで違います。もうひとつ大きいのが、取り付ける壁の中に下地(手すりのねじを効かせる木材)が入っているかどうかです。

下地がある壁ならビス留めで済みますが、無い壁では下地を入れるために壁の一部を開ける工事が加わり、費用は上乗せになります。石膏ボードにそのまま留めた手すりは、体重をかけた瞬間に抜けて転倒につながるため、下地の確認は省けません。壁を壊さず据え置きや突っ張りの手すりで足りる場所もあるので、工事の前に介護用品の手すりも見比べておくとよいでしょう。

段差解消の費用は高さと範囲で動く

段差解消は、数千円のミニスロープで済む場合から、床全体を組み直す工事まで幅があります。金額を決めるのは、段差の高さと、直す範囲の広さです。和室と廊下のあいだにある数センチの敷居なら、すりつけ板を渡すだけで解決することもあります。

これが「和室の床を廊下と同じ高さまで上げる」となると、既存の畳をはがし、根太(床板を支える下地の材)を組み、床材を張る工事になり、部屋の広さぶんの費用がかかる規模です。玄関の上がり框のように高さが20センチを超える段差も、踏み台で済ませるか、式台を造作するか、土間を打ち直すかで金額は大きく変わってきます。どの高さの段差が危ないのかを先に測っておくと、業者の提案を金額と見比べやすくなるはずです。

トイレと浴室は設備の交換で金額が跳ねる

トイレと浴室は、手すりを付けるだけなら数万円で収まりますが、設備そのものを替えると一気に金額が跳ねます。和式便器を洋式に替える工事は、便器の代金に加えて床の解体と配管の手直しが入る工事です。浴室の場合、タイル張りの在来工法からユニットバスへ入れ替えると、解体、防水、給排水、電気の工事がひとまとめに動きます。

この2か所は、転倒とヒートショックの危険が集まる場所でもあるので、費用が大きいから後回しという判断が必ずしも正しくありません。手すりと滑りにくい床材だけを先に入れ、設備の交換は数年後に回すという段取りも取れます。今どこまで必要かを、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に見てもらってから決めてください。

玄関スロープと引き戸と床材は現況で幅が開く

玄関スロープ、引き戸への交換、床材の変更は、家の今の状態によっていちばん見積りが割れる工事です。スロープは勾配を緩くするほど長さが必要になり、敷地に余裕がなければ折り返しの踊り場を作ることになって、その分だけ費用が伸びます。門から玄関までの距離が短い家では、そもそもスロープが成立せず、段差昇降機など別の手段を検討することになるでしょう。

引き戸への交換は、開き戸の枠だけを利用できるか、壁を開けて戸を引き込む場所を作るかで金額が分かれます。床材の変更も、既存の床の上に重ねて張れるか、はがしてから張り直すかで手間が変わります。いずれも現地を見ないと金額が出ない工事なので、カタログの価格だけで予算を組まないようにしましょう。

場所ごとに費用を動かす要素を、下の表にまとめました。

場所 主な工事 費用を動かす要素 介護保険の対象
廊下・階段 手すりの取付け 本数と長さ、壁の下地の有無 対象
室内の段差 敷居の解消、床のかさ上げ 段差の高さ、直す範囲の広さ 対象
トイレ 手すり、洋式便器への取替え 便器交換の有無、配管の手直し 対象
浴室 手すり、床材の変更、ユニットバス化 在来工法かどうか、解体の範囲 手すりと床材は対象
玄関 上がり框の段差解消、スロープ 段差の高さ、敷地の余裕 対象
建具 引き戸等への取替え 枠の流用可否、壁の造作 対象
滑りにくい床材への変更 重ね張りか張り替えか 対象

介護保険の20万円という物差し

工事費の話をするとき、介護保険の住宅改修は金額の物差しとして使えます。ここでは、その20万円という基準の中身を説明します。

支給限度基準額は20万円で支給の上限は18万円

要介護認定を受けていれば、住宅改修の費用の一部が介護保険から戻ってきます。厚生労働省の介護保険の住宅改修に関する資料では、支給限度基準額が20万円と示され、その9割にあたる18万円が支給額の上限になると説明されています。20万円という額は要支援・要介護の区分にかかわらず定額で、区分が重いから増えるという性質のものではありません。

同じ資料では、工事完成後に領収書などを提出して支払いを受ける償還払いの仕組みや、要介護状態区分が3段階上がったときと転居した場合には再度20万円までの限度額が設定されることも示されています。自己負担の割合は所得に応じて変わるため、9割が戻るとは限りません。使えるかどうかと戻る額は、担当のケアマネジャーに確かめておきましょう。

対象になるのは6種類の工事

住宅改修として支給されるのは、どんな工事でもよいわけではなく、種類が決まっています。厚生労働省の同じ資料では、手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、これらに付帯して必要となる住宅改修の6つが挙げられています。

この一覧を見ると、浴室のユニットバス化やキッチンの入れ替えといった大きな設備工事は含まれていません。同じ浴室でも、手すりの取付けと滑りにくい床材への変更なら対象になり、浴槽そのものの交換は対象外という分かれ方をします。どこまでが対象かは自治体の運用でも判断が分かれるので、工事の前に保険者へ確認してもらってください。

20万円で収まる工事と超える工事の線を引く

対象6種と20万円という枠を重ねると、工事が2つの側に分かれて見えてきます。手すりを数本付ける、敷居の段差をすりつけ板で解消する、開き戸を引き戸に替えるといった工事は、20万円の枠に収まる可能性があります。一方で、浴室をユニットバスに入れ替える、和室の床を全面的に上げる、屋外に本格的なスロープを造るといった工事は、20万円ではまず足りません。

20万円で収まる側から手をつけると、少ない持ち出しで危ない場所をひとつ減らせます。大きい側の工事が本当に今必要か、それとも用具や小さい工事で先送りできるかを、この線引きで見分けてください。制度の使い方や申請の順番まで知りたい方は、介護保険の住宅改修で詳しく説明しています。

区分 工事の例 総額の見立て
20万円で収まりやすい 手すりの取付け、敷居の段差解消、引き戸への交換、床材の重ね張り 介護保険の枠内で足りることが多い
20万円を超えやすい ユニットバスへの入れ替え、和室の床の全面かさ上げ、屋外スロープの造作、階段昇降機 枠を超えた分は自己負担か他の制度で補う
注意

介護保険の20万円は工事費の一部にしか届きません。大きい工事では枠を超えた分が自己負担になり、対象になる工事の範囲や申請の手順は自治体によって運用が異なります。工事を契約する前に、必ず担当のケアマネジャーと保険者へ確認してください。

費用が上がる要因

見積りが想定より高く出るときは、たいてい家の側に理由があります。ここでは、金額を押し上げる代表的な要因を挙げます。

壁の下地補強が入ると手すりでも上がる

いちばん多いのが、手すりを付けたい壁に下地が入っていないケースです。日本の住宅の壁は石膏ボードで仕上げてあることが多く、ボードだけでは体重を預けた手すりを支えられません。下地の位置は壁の中に隠れているため、業者が下地探しで確認し、無ければ壁を開けて木材を入れる作業が加わります。

下地補強が必要かどうかで、同じ手すり1本でも工事の手間と費用が変わります。壁紙の張り直しまで含めると、手すり本体より工事側の金額が大きくなる場合もあるでしょう。見積りを見て高いと感じたら、下地の工事が入っているかを聞いてみてください。

構造壁と配管の移動は金額が跳ね上がる

トイレや浴室を広げたい、車椅子が通る幅を確保したいという相談では、壁を抜けるかどうかが分かれ目になります。建物を支えている構造壁は抜けないため、間取りを変える案そのものが成立しません。抜ける壁であっても、補強を入れながらの工事になり、費用は一気に大きくなります。

便器や洗面台の位置を動かす場合は、給水と排水の管を引き直す工事が付いてきます。排水は勾配を取る必要があるので、床を開けて配管をやり直す規模になりやすい工事です。間取りを動かす提案が出てきたら、動かさずに用具や小さい工事で解決できないかも並べて考えましょう。

マンションは管理規約で工法が縛られる

分譲マンションでは、直せる範囲が管理規約で決まっています。専有部分の中でも、床のフローリング材は遮音等級の指定があることが多く、好きな床材を選べません。玄関ドアやサッシ、共用廊下側の手すりは共用部分にあたり、個人の判断では手を入れられないのが原則です。

工事の時間帯や搬入経路にも制限があるため、同じ工事でも戸建てより日数と費用がかかる場合があります。着工の前に管理組合へ届け出て承認を取る手続きも欠かせません。マンションで検討している方は、規約の写しを手元に置いてから業者に相談すると、後戻りを防げます。

解体と仮住まいが総額に乗る

見積書の金額を見て驚くとき、新しい設備の代金より周辺の工事のほうが大きいことがあります。既存の浴室やトイレを壊す解体費、出た廃材の処分費、養生や運搬の費用は、どの工事にも付いてきます。古い家ほど、開けてみたら土台が傷んでいて補修が要るという追加も起こりがちです。

浴室のように何日も使えなくなる工事では、その間の入浴をどうするかという費用も出てきます。近くの親族宅を頼れるか、デイサービスの入浴を使えるか、仮住まいが要るかで総額は変わります。工期と生活の段取りまで見積りの段階で聞いておくと、後から慌てずに済むでしょう。

総額の考え方

総額は、場所別の金額を足し上げて出すものではありません。ここでは、上限から逆算して総額を決める順番を説明します。

いま危ない場所から順に並べる

最初にやるのは、家の中の危ない場所に順番をつけることです。全部を一度に直そうとすると総額は膨らみ、結局どれも進まないまま時間が過ぎます。実際にふらついた場所、つまずいた場所、本人が避けて通っている場所を書き出し、転んだときの怪我が大きい順に並べてみてください。

多くの家では、浴室、トイレ、階段、玄関の順に危険が集まります。ただし親の体の状態と生活の動線しだいで順番は変わるもので、夜間のトイレが最優先になる家もあるでしょう。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に一度家を見てもらうと、家族が気づいていない危険も拾えます。

制度で下がる分を引く

危ない場所が並んだら、そこへ制度を当てて実際の持ち出しを計算します。介護保険の住宅改修が使えるなら、対象6種にあたる工事は20万円の枠のなかで負担が下がります。自治体によっては介護保険とは別枠の助成を用意しているところもあり、住まいの窓口へ問い合わせると案内をもらえるでしょう。

ここで気をつけたいのは、制度に合わせて工事内容を決めてしまわないことです。対象になるからという理由で必要のない工事を足すと、持ち出しはかえって増えます。危ない場所を直す工事が結果として制度の対象だった、という順番を守ってください。

残りの払い方を決める

制度で下がった後に残る金額が、実際に用意する必要のある額です。国土交通省の調査で自己資金比率が85.5%と示されているように、多くの世帯は預貯金の範囲でリフォームを済ませています。それでも足りないときは、工事を分割して数年に分ける、優先度の低い工事を用具で代替する、ローンを使うといった手が残ります。

親の家を子が直す場合は、誰がどれだけ出すかで税の扱いに関わる話も出てくるため、兄弟のあいだで先に決めておくほうが揉めません。金額が足りず諦めかけている方は、費用が払えないときの進め方で優先順位のつけ方と支援の探し方を説明しているので、あわせて確認してみてください。

見積りで相場を確かめる

ここまでの目安は当たりをつけるための材料で、最終的な金額は現地を見た見積りでしか出ません。ここでは、見積りで相場を確かめるときの見方を説明します。

相見積もりで内訳をそろえて比べる

1社の見積りだけでは、その金額が高いのか妥当なのか判断できません。同じ工事の範囲で2社から3社に見積りを頼み、内訳を横に並べると、材料費と工事費の配分や、業者ごとの得意分野が見えてきます。頼むときは各社へ同じ条件を伝え、直したい場所と親の状態をそろえて説明してください。

安さだけで選ぶと、下地補強を省いた手すりのように、必要な工事が抜けた見積りをつかむ危険があります。金額の差が出たときは、どの項目で差がついているのかを確かめましょう。業者を見極める手順はバリアフリーリフォームの業者選びで詳しく説明しています。

一式表記の見積りは内訳を聞く

見積書に「浴室改修工事一式」とだけ書かれていたら、その場で内訳を聞いてください。一式表記は何が含まれ何が含まれないかが読めず、後から追加費用が出たときに約束の範囲を確かめられません。解体費、処分費、養生費、給排水の工事費が別立てなのかどうかも、着工前に文書で確認しておく必要があります。

内訳を聞いたときに嫌がる業者や、根拠を説明しない業者は候補から外して構いません。契約を急がせる相手であればなおさら慎重になってください。見積書は工事後のやり取りでも根拠になる書類なので、金額の内訳が読める状態にしてから判を押しましょう。

まとめ

バリアフリーリフォームの費用は、手すり1本の工事から浴室の全面改修まで桁が違い、ひとつの相場に丸められません。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査ではリフォーム資金の平均が154万円、中央値は48万円と示されており、多くの世帯は手持ちの範囲に収まる規模で済ませています。金額は場所そのものより、壁の下地の有無や抜けない壁、配管の位置、マンションの規約といった家の側の事情で動きます。

総額を決めるときは、いま危ない場所を並べ、介護保険の住宅改修で下がる分を引き、残りの払い方を決める順に考えてください。介護保険の支給限度基準額20万円は、収まる工事と超える工事を見分ける物差しになります。最後は現地を見た見積りでしか金額は出ないので、内訳の読める見積書を2社以上から取ってから決めましょう。工事の種類と進め方を最初から確かめたい方は、バリアフリーリフォームとはもあわせて役立ててください。

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