親の住むマンションに手すりを付けたい、玄関の段差をなくしたいと考えたとき、戸建てと同じ感覚で業者に頼むと途中で話が止まります。マンションには、自分の判断で直せる部分と、直せない部分がはっきり分かれているからです。
分かれ目になるのが、専有部分と共用部分という線引きです。室内の手すりは付けられても、共用廊下の壁には付けられません。窓のサッシを断熱仕様に替えたくても、窓は自分のものではないため、管理組合の承認なしには手を出せない扱いになっています。
そこで、分譲マンションで実際にできる工事とできない工事、管理組合への申請の進め方、躯体や排水からくる制約、中古を買って直す場合の確認点までをまとめました。工事を頼む前に、自分のマンションで何がどこまで可能かを見きわめる手がかりとしてお使いください。
マンションのリフォームを分ける専有部分と共用部分
マンションの工事は、直したい場所が専有部分か共用部分かで、できるかどうかが決まります。ここでは、その線引きの考え方を見ていきます。
直せる範囲は専有部分に限られる
区分所有者が自分の判断で直せるのは、専有部分だけです。国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)第7条では、区分所有権の対象となる専有部分は「住戸番号を付した住戸」とされ、天井・床・壁については躯体部分を除く部分が専有部分だと示されています。つまり、あなたが買ったのは箱そのものではなく、コンクリートの内側の空間だと考えると分かりやすいでしょう。
室内側の仕上げは専有部分、コンクリートの躯体から外側は共用部分というのが、マンションのリフォームを分ける基本の線です。壁紙を張り替える、床を張り替える、室内の建具を替えるといった工事は、この線の内側に収まります。まずは直したい場所がこの線のどちら側にあるかを、工事の相談より先に確かめておいてください。
共用部分は個人の判断で工事できない
共用部分は区分所有者全員の共有なので、一戸の判断では動かせません。同じ規約の第8条と別表第2では、共用部分の範囲としてエントランスホール、廊下、階段、エレベーター室、内外壁、床スラブ、柱、基礎部分などが挙げられています。日常的に自分だけが使っている場所でも、名義のうえでは全員のものという扱いです。
ここを勘違いすると、見積もりを取った後で工事が止まります。共用廊下に手すりを付けたい、玄関の外の段差にスロープを置きたいといった要望は、個人の工事としては通りません。共用部分に手を入れたい場合は、後述する総会の議題として管理組合に持ち込む道を選ぶことになります。
規約の中身はマンションごとに違う
国土交通省が示しているのはあくまで標準的なひな形であって、実際に効力を持つのは自分のマンションの管理規約です。標準管理規約をもとに作られていても、細かい部分は分譲時の設計や過去の総会決議で書き換えられていることがあります。雨戸や網戸の扱い、専用庭の使い方などは、規約によって差が出やすい部分です。
手元に規約がなければ、管理会社か理事長に頼めば写しをもらえます。あわせて使用細則も取り寄せると、工事の曜日や時間の決まりまで確認できます。この記事の内容も標準的な考え方として読んだうえで、最後は必ず自分のマンションの規約と照らし合わせてください。
専有部分でできるバリアフリー工事
線引きが分かったところで、室内で実際に手を入れられる工事を見ていきましょう。ここでは、専有部分で選べる代表的な工事と、そこにかかる制約を説明します。
手すりは下地のある壁に付ける
室内の手すりは、専有部分の工事として付けられます。廊下やトイレ、浴室の出入り口など、親がふらつく場所に取り付ければ、日常の動きはかなり楽になるでしょう。ただし、手すりは体重を預ける道具なので、ビスが効く下地がなければ意味をなしません。
マンションの間仕切り壁は、石膏ボードの裏に軽量鉄骨の下地が入っている造りが多く、その下地の位置にしかしっかり固定できないのが実情です。下地から外れた場所に付けたい場合は、壁の上に補強板を張ってから手すりを載せる方法をとります。取り付けたい位置に下地があるかどうかは自分では判断しにくいため、現地調査のときに業者へ下地の位置を確かめてもらってください。工事を伴わない据え置き型を先に試したいなら、工事不要の手すりもあわせて検討するとよいでしょう。
段差解消と引き戸への交換は室内で収まる
室内の段差をなくす工事や、開き戸を引き戸に替える工事も、専有部分の中で完結します。和室と廊下の間にある数センチの段差は、床をかさ上げして高さをそろえるか、緩やかなスロープでつなぐ方法で解消できます。開き戸を引き戸に替えれば、扉を引く動作のために体を後ろへ下げる必要がなくなり、車椅子や歩行器でも通りやすくなるでしょう。
ただし、引き戸への交換では戸を引き込むための壁の長さが要ります。引き込む先に別の扉やスイッチがあると、上から吊るタイプや折れ戸など、別の形を選ぶことになります。間取りの変更にあたる工事は、次章で説明する理事長の承認が必要になる点にも注意してください。
浴室とトイレはユニットのサイズが上限になる
浴室とトイレも専有部分なので、入れ替えそのものは可能です。ユニットバスを新しいものに替えれば、またぎの高い浴槽を低いものにでき、床も滑りにくい仕上げに変わります。トイレも、和式から洋式へ替えたり、手すり付きの便器を選んだりできます。
制約になるのが寸法です。マンションのユニットバスは、コンクリートの壁と天井に囲まれた決まった枠の中に納めるため、今より大きなサイズへの変更はほぼできません。既存のユニットを外したときに現れる枠の実寸で、入るシリーズが絞られる形になります。広げて介助スペースを取りたい場合は、隣の洗面所との間仕切りごと動かす大きな工事になるため、まず業者に枠の寸法を測ってもらってから検討しましょう。
床材の変更は遮音等級の指定を受ける
滑りにくい床への変更は、マンションでもっとも規約に引っかかりやすい工事です。標準管理規約のコメントでは、理事長の承認が必要な工事の具体例として、床のフローリングやユニットバスの設置が挙げられています。下の階へ音が響く工事だからです。
とくに、新築時にカーペット敷きだった高経年のマンションでは、フローリングへの変更そのものを禁じている規約が残っています。承認する場合でも、標準管理規約の別添資料では、遮音等級を条件として示す運用例が紹介されています。カタログで「LL-45相当」などと書かれている数値がこれにあたり、指定より性能の低い材料は選べません。好みの床材が使えるかどうかは規約と使用細則で決まるので、ショールームへ行く前に管理会社へ確認しておくと二度手間を防げます。
個人では直せない共用部分
自分の家の一部だと思っていた場所が、規約のうえでは共用部分にあたることがあります。ここでは、間違えやすい代表的な場所を挙げていきます。
玄関ドアは内側の塗装だけが専有部分
玄関ドアは、一枚の扉が専有と共用に切り分けられている珍しい場所です。標準管理規約第7条第2項では、玄関扉について「錠及び内部塗装部分」を専有部分とすると定めています。裏を返すと、ドア本体も外側の面も共用部分だという意味になります。
そのため、開き戸の玄関ドアを引き戸に替える、ドアの下枠の段差をなくすといった工事は、自分の一存では進みません。外観をそろえる目的でこの扱いになっているので、たとえ自費で工事すると申し出ても、承認が下りない場合があります。玄関まわりを直したいときは、ドア本体でなく、室内側の上がり框や照明といった専有部分でできる工夫から手をつけてください。
共用廊下とエントランスに手すりは付けられない
住戸の外に出た瞬間から、そこは共用部分です。別表第2でエントランスホールや廊下、階段が共用部分として挙げられているとおり、玄関を出た先の廊下に自分で手すりを付けることはできません。歩くのがつらい親のために付けたいと思っても、個人の工事としては通らない領域です。
同じ理由で、共用廊下の段差にスロープを置く、エントランスの重い扉を軽いものに替えるといった要望も、個人では実現できません。共用部分をバリアフリーにしたいなら、工事を頼むのではなく、管理組合に提案して総会にかける手順を踏みます。時間はかかりますが、同じ悩みを持つ住戸は他にもあるはずなので、理事会に相談するところから始めてみてください。
バルコニーは専用使用権があっても共用部分
洗濯物を干し、物置を置いているバルコニーも、規約のうえでは共用部分にあたります。標準管理規約第14条では、バルコニーや玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭などについて、区分所有者が専用使用権を持つと定めています。専用使用権とは、共用部分のうち特定の住戸だけが使える権利のことです。
使う権利はあっても、造り替える権利までは含まれません。掃き出し窓とバルコニーの段差をなくす工事や、床にウッドデッキを敷き詰める行為は、避難の妨げになる可能性もあり、管理組合の判断を仰ぐことになります。窓やサッシを断熱仕様に替えたい場合も同じ扱いなので、まず理事会へ相談してから業者に声をかけましょう。
間違えやすい場所を、下の表にまとめました。
| 場所 | 扱い | 個人での工事 |
|---|---|---|
| 室内の壁・床・天井の仕上げ | 専有部分 | できる(承認が要る工事あり) |
| 室内の建具・浴室・トイレ | 専有部分 | できる |
| 玄関ドアの錠と内側の塗装 | 専有部分 | できる |
| 玄関ドア本体・外側の面 | 共用部分 | できない |
| 窓枠・窓ガラス・サッシ | 共用部分(専用使用権あり) | できない |
| バルコニー・専用庭 | 共用部分(専用使用権あり) | できない |
| 共用廊下・階段・エントランス | 共用部分 | できない |
| 躯体の壁・床スラブ・柱 | 共用部分 | できない |
管理組合への申請と承認
専有部分の工事であっても、黙って始めてよいわけではありません。ここでは、工事の前に踏むべき手続きを説明します。
工事の前に理事長へ申請して書面の承認を受ける
専有部分の工事のうち一定のものは、事前に管理組合の承認が要ります。標準管理規約第17条では、専有部分の修繕等であって「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるもの」を行おうとするときは、あらかじめ理事長に申請し、書面による承認を受けなければならないと定めています。承認するかどうかを決めるのは理事会の決議です。
申請には、設計図や仕様書、工程表を添えます。バリアフリー工事でいえば、床のフローリングへの変更、ユニットバスの設置、配管の枝管の取り替え、間取りの変更などが、規約のコメントで承認の要る例として挙げられている工事です。理事会は月に一度しか開かれないことも多いため、工事日程は承認が下りてから逆算して組んでください。
承認が要らない工事でも届出を求められる
承認までは要らない小さな工事にも、届出の決まりがあります。同じ第17条の第7項では、承認を要しない修繕等のうち、業者の立入り、資機材の搬入、工事の騒音や振動といった影響を管理組合が事前に把握する必要があるものについて、あらかじめ理事長へ届け出るよう定めています。手すりの取り付けのような一日で終わる工事でも、ドリルの音が響けば近隣には伝わるものです。
届出を出しておけば、管理組合から掲示で周知してもらえる場合もあります。あわせて、上下左右の住戸へ工事の前に挨拶をしておくと、音への苦情はぐっと減るでしょう。手続きの要否は自分で判断せず、工事の内容を伝えたうえで管理会社に確認しておくのが確実です。
工事の曜日と搬入経路は使用細則で決まる
いつ工事ができるかも、マンションの決まりに縛られます。多くのマンションでは使用細則で、工事のできる曜日や時間帯を平日の日中に限り、日曜や祝日を除外しています。エレベーターに養生を張る、荷物の搬入は裏口からにする、駐車位置を指定するといった条件が付くことも珍しくありません。
こうした条件は工期にも費用にも跳ね返ります。戸建てなら二日で終わる工事が、搬入の制約で三日に延びることもあるからです。相見積もりを取るときは、自分のマンションの使用細則を業者に渡し、その条件込みの日程と金額を出してもらいましょう。工事費の目安そのものを知りたい方は、バリアフリーリフォームの費用相場もあわせて確認しておくと見積もりを比べやすくなります。
マンションならではの工事の制約
規約をクリアできても、建物の造りそのものが工事を止めることがあります。ここでは、マンションで断られやすい三つの制約を見ていきます。
手すりの下地はコンクリートの壁で確かめる
住戸を囲む壁がコンクリートの場合、手すりの取り付け方が変わります。躯体は共用部分にあたるため、標準管理規約のコメントでも、区分所有法にもとづき主要構造部に影響を及ぼす行為はできないと示されています。コンクリートの壁に自由に穴を開けてよいわけではないという意味です。
実際には、躯体を傷めない範囲でアンカーを打つ工法や、壁の手前に下地を組んでから手すりを付ける方法がとられます。壁式のマンションでは間仕切りにも耐力壁が混ざっており、抜けない壁が室内にあることも多いものです。どの壁に何ができるかは図面と現地を見なければ分からないので、竣工図の写しを管理会社から借りて業者に見せてください。
水回りの移動は排水の勾配で止まる
トイレや浴室の位置を動かす工事は、マンションでは通りにくい部類に入ります。汚水は勾配で流すため、便器や排水口をパイプスペースから離すほど、床下に必要な高さが増えていきます。戸建てと違ってマンションの床下は薄く、余裕がほとんどありません。
そのため「介助しやすいようトイレを寝室の隣へ移したい」という要望は、勾配が取れず断られることがあります。床を上げて配管を通す方法もありますが、その分だけ段差が生まれ、バリアフリーの目的と逆を向いてしまう場面も出てきます。水回りを動かしたいときは、まず業者にパイプスペースの位置を確認してもらい、動かせる距離の限界を聞いてから間取りを考えましょう。
床を上げると天井までの高さが削られる
床のかさ上げは、マンションでは天井高との引き算になります。段差の解消や配管のために床を上げると、その分だけ天井までの高さが減るからです。もともとの天井高が二メートル四十センチ前後の住戸で床を十センチ上げれば、部屋の圧迫感ははっきり変わります。
上げられる高さには、玄関ドアや窓の高さという物理的な上限もあります。ドア枠より床が高くなれば扉が開かなくなるため、上げ幅は自然と決まってしまうものです。段差をなくす方法は、床を上げる以外にもスロープや薄い樹脂プレートなどがあります。どこまで上げれば何が解決するのかを業者と確かめ、天井高を削らずに済む方法から先に検討してください。
共用部分のバリアフリーは総会で決まる
エントランスや廊下を直したいときは、工事の話ではなく合意の話になります。ここでは、共用部分を動かすために必要な決議の種類を説明します。
スロープと手すりの追加は普通決議で進む
共用部分の工事にも、比較的通りやすいものがあります。標準管理規約のコメントでは、バリアフリー化の工事のうち、建物の基本的な造りを取り壊すような加工を伴わずに階段へスロープを併設し、手すりを追加する工事は、普通決議で実施できると考えられると示されています。普通決議とは、総会の出席組合員の議決権の過半数で決まる決議のことです。
つまり、エントランスの階段に後付けでスロープを添える程度なら、住民の過半数の賛成で前へ進む可能性があります。まずは理事会に相談し、困っている住戸が他にもあることを示せると議題に上がりやすくなるでしょう。総会は年に一度が基本なので、次の総会に間に合うよう早めに動いてください。
エレベーターの新設は3分の2以上の賛成が要る
建物に手を加える度合いが大きくなると、必要な賛成の数も増えます。同じコメントでは、階段室部分を改造したり外壁に外付けしたりしてエレベーターを新たに設置する工事について、組合員総数および議決権総数の各過半数を有する組合員が出席した総会で、出席組合員および議決権の各3分の2以上の賛成により実施可能と考えられると示されています。
共用部分のバリアフリーは、費用の問題である前に、住民の合意をどこまで集められるかの問題です。高齢の住民が多いマンションほど賛成は得やすいものの、若い世帯が多ければ「自分は使わない」という反対も出ます。個人の努力でどうにかなる話ではないので、エレベーターのない上階に親が住んでいる場合は、住み替えを含めて考える視点も持っておきましょう。
費用は長期修繕計画に載せて順番を待つ
決議が通っても、お金の裏づけがなければ工事は始まりません。共用部分の工事費は修繕積立金から出るため、長期修繕計画に載せて何年目に実施するかを決める流れになります。外壁の補修や給排水管の更新といった、先に控えている工事との順番争いにもなるものです。
大規模修繕のタイミングに合わせて足場を共用できれば、単独で工事するより費用は抑えられます。急いでほしい事情があるなら、次の大規模修繕の計画づくりの段階で理事会に声を届けておくのが現実的な進め方です。数年単位の話になるので、親の暮らしを今すぐ支える工事は専有部分の側で先に手を打っておきましょう。
中古マンションを買って直すとき
中古を買ってバリアフリーにする計画では、買った後に規約で止められるのがいちばん痛い失敗です。ここでは、契約の前に見ておきたい点を挙げます。
購入前に管理規約と使用細則を取り寄せる
中古マンションでは、規約と使用細則を契約前に読めます。仲介の担当者に頼めば写しをもらえるので、フローリングへの変更が禁じられていないか、遮音等級の指定があるか、工事のできる曜日はいつかを先に確かめておきましょう。買ってから「床を替えられない住戸だった」と気づいても、規約は個人の都合では変わりません。
長期修繕計画と修繕積立金の残高、直近の総会議事録もあわせて見ておくと、管理組合の体力が分かります。積立金が不足しているマンションでは、エントランスのバリアフリー化を提案しても順番は回ってきにくいものです。中古を買って直すという選択肢そのものを検討している段階なら、中古住宅のバリアフリーで判断の全体像から確かめてください。
内見では下地と天井の高さと水回りの位置を見る
内見のときは、間取りの好みだけでなく、直せる余地があるかを見ます。手すりを付けたい壁を軽く叩いて音を確かめる、天井の高さを測る、パイプスペースから水回りまでの距離を見るといった点を押さえておけば、後から断られる工事をあらかじめ避けられます。可能なら、リフォーム業者に内見へ同行してもらうのがいちばん確実です。
築年数の古い住戸ほど、スラブが薄く遮音の条件が厳しい傾向にあります。反面、新しい物件は室内の段差が最初から少なく、手を入れる範囲が小さく済む場合もあるものです。物件ごとの当たり外れが大きいので、気になる住戸が出てきたら、その都度できる工事とできない工事を業者に洗い出してもらいましょう。
介護保険の住宅改修を使うとき
マンションでも、条件を満たせば介護保険の住宅改修が使えます。ここでは、対象になる工事と、マンションで引っかかりやすい点を説明します。
対象になるのは6種類の工事
介護保険で費用の一部が戻る工事は、種類が決まっています。厚生労働省の住宅改修の概要では、手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止や移動の円滑化のための床または通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、これらに付帯して必要となる住宅改修の6種類が対象として挙げられ、支給限度基準額は20万円と示されています。
この6種類は、マンションの専有部分でできる工事とよく重なります。室内の手すり、和室と廊下の段差、滑りにくい床材への変更、引き戸への交換は、いずれも制度の対象になりうる工事です。ケアマネジャーに相談すると、住宅改修が必要な理由書の作成から進めてもらえます。制度の流れそのものは介護保険の住宅改修で確かめてください。
親名義の住戸は所有者の承諾書が要る
工事をする住戸の名義には注意が必要です。厚生労働省の資料では、支給申請のときの提出書類として「住宅の所有者の承諾書(住宅改修を行った住宅の所有者が当該利用者でない場合)」が挙げられています。親が住む住戸の名義が子や配偶者になっている場合や、賃貸で借りている住戸の場合が、これにあたります。
分譲マンションを賃貸で借りて住んでいるなら、承諾書をもらう相手は貸主です。名義が家族の誰かなら手続きは難しくありませんが、貸主の承諾は簡単に下りないこともあります。名義の確認と承諾の依頼は工事の日程を左右するので、見積もりと同時に進めておきましょう。
共用部分の工事は対象になりにくい
介護保険の対象になるのは、原則としてその方が暮らす住宅の工事です。共用廊下やエントランスは全住戸で使う場所なので、一人の被保険者の住宅改修としては認められにくい扱いになります。マンションの玄関を出た先の段差に困っていても、制度で直せる範囲には入りにくいのが実情です。
どこまでを対象とするかの判断は保険者である市区町村が行うため、扱いは自治体によって差が出ます。判断に迷う場所があれば、工事を契約する前にケアマネジャーを通じて保険者へ確認を入れてもらってください。
マンションの管理規約は組合ごとに違い、同じ工事でも承認が下りるかどうかは分かれます。介護保険の住宅改修も、対象になるかの判断は保険者である市区町村が行います。工事を契約する前に、管理会社と担当のケアマネジャーの両方へ必ず確認してください。
まとめ
マンションのバリアフリーリフォームは、専有部分と共用部分の線引きで、できることの範囲が決まります。室内の手すりや段差解消、引き戸への交換、浴室やトイレの入れ替えは専有部分の工事として進められる一方、玄関ドア本体や窓、共用廊下、バルコニーは共用部分にあたり、個人では直せません。床材の変更のように、規約で遮音等級を指定される工事もあります。
専有部分の工事でも、影響が及ぶものは理事長への申請と書面の承認が必要で、承認が要らない工事にも届出の決まりがあります。エントランスのスロープやエレベーターは総会の決議と長期修繕計画の話になるため、親の暮らしを今すぐ支えたいなら室内の工事から着手するのが現実的です。工事の内容が固まってきたら、バリアフリーリフォームの進め方もあわせて読み、管理会社への確認と業者への相談を同時に進めてください。


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