戸建て・賃貸・二世帯のバリアフリーリフォーム|住居タイプ別の勘所

リフォームで直す

親の家に手すりを付けたい、段差をなくしたいと考えたとき、同じ工事でも住んでいる家の形によってできることが変わります。持ち家の戸建てなら好きに直せても、賃貸では大家の許可なく壁に穴を開けられません。

住居タイプごとに立ちはだかるのは、それぞれ別の制約です。戸建てなら建物の造りと予算、賃貸なら所有者の承諾と原状回復、二世帯なら誰の名義の家を誰のお金で直すかという問題がついて回ります。ここを飛ばして見積もりを取ると、工事の直前で止まることにもなりかねません。

そこで、戸建て・賃貸・二世帯の3つについて、それぞれどこで詰まりやすいのか、何を先に確かめておけばよいのかをまとめました。家の形に合った進め方を選ぶ手がかりとしてお使いください。工事の内容そのものから知りたい方は、バリアフリーリフォームとはもあわせてご覧ください。

住居タイプで変わるリフォームの制約

同じ手すり1本でも、持ち家か借家か、名義が誰かで手続きの重さが変わります。ここでは、3つの住居タイプがそれぞれ抱える制約を見ていきます。

戸建ては建物の造りと予算だけが制約になる

本人か家族の名義の戸建てなら、誰かの許可を取らずに工事へ進めます。壁を壊して浴室を広げることも、階段に昇降機を付けることも、建物が耐えられて予算が届くならほぼ自由に選べる立場です。止めるものが少ないぶん、話は早く進みます。

戸建てで残る制約は、建物の造りと予算の2つだけです。柱や耐力壁など建物を支える部分は動かせず、床下の高さや基礎の造りによっては段差を消しきれない場合もあります。反対に言えば、この2つさえクリアできれば止める人がいません。だからこそ「どこから直すか」で迷いやすく、あれもこれもと足すうちに予算が膨らみがちになります。まずは危ない場所を書き出し、優先順位を決めてから見積もりへ進むとよいでしょう。

賃貸は所有者の承諾がないと工事できない

借りて住んでいる家では、建物の持ち主は大家(貸主)です。借りている側は住む権利を持っていても、建物そのものを変える権利は持っていません。壁に手すりを付ける、扉を引き戸に替えるといった工事は、どれも建物へ手を入れる行為にあたるため、承諾なしに進めると契約違反になります。

賃貸で最初にやることは、業者探しではなく大家か管理会社への相談です。承諾が取れるかどうかで、工事で直すのか、工事をしない方法に切り替えるのかという分かれ道が決まります。相談の前に見積もりを取っても、承諾が下りなければ無駄になってしまいます。まず「この工事をしてよいか」を聞くところから始めてください。

二世帯は名義と費用の出し手が絡む

親と子が同居する二世帯では、家の名義人と、工事のお金を出す人と、直した設備を使う人が別々になりがちです。親名義の家に子の世帯が住み、親の介護のために子がお金を出して浴室を直す、といった組み合わせが起こります。この分かれ方こそ、戸建てにも賃貸にもない面倒のもとです。

名義人が親なら、工事の承諾は親から取ります。お金を子が出すなら税金の論点が顔を出し、共有で使う玄関や階段を直すなら両世帯の合意も要ります。1つの家に見えても、権利とお金の面では複数の当事者がいる家だと考えて進めてください。

3つの住居タイプの違いを、下の表にまとめました。

住居タイプ 主な制約 所有者の承諾
戸建て(本人・家族の名義) 建物の造りと予算 不要
賃貸 原状回復と工事の可否 必要(書面でもらう)
二世帯(親名義) 名義と費用の出し手 必要(名義人の同意)

戸建てのバリアフリーリフォーム

戸建ては自由度が高いぶん、どこから手を付けるかの判断が家族に委ねられます。ここでは、戸建てで迷いやすい優先順位と、建物側の限界について説明します。

優先順位は転倒の危険が大きい場所から決める

戸建てで最初に決めるのは、家じゅうのどこから直すかという順番です。予算に上限がある以上、全部を一度に直せる家庭はそう多くありません。順番を決めずに業者へ相談すると、提案されたまま工事の範囲が広がり、いちばん危ない場所が後回しになることも起こります。

順番の基準は、転んだときのけがが大きい場所と、毎日必ず通る場所の2つです。浴室やトイレ、階段は、濡れた床や高低差があって転倒が重い骨折につながりやすく、しかも毎日使います。逆に、たまにしか入らない部屋の敷居は後ろへ回せます。親がどこでヒヤリとしたかを本人に聞き取り、危ない順に並べてから予算を割り振ってください。

生活の場を1階に集める

戸建てで効きめが大きいのに見落とされやすいのが、生活の場を1階へ移す方法です。寝室が2階にあると、夜中のトイレのたびに階段を上り下りすることになり、家の中でいちばん危ない場所を毎日何度も通る暮らしになってしまいます。手すりを付けても、階段そのものの危なさは消えません。

1階に和室や物置があるなら、そこを寝室へ移せば階段を使う回数を大きく減らせます。寝室・トイレ・浴室・食事の場所を1階へ集めると、階段の上り下りをほぼ無くせます。工事としては床の張り替えや扉の交換ぐらいで済み、昇降機を入れるより費用も軽くて済むでしょう。2階建ての実家を直す話が出たら、まず1階だけで暮らしが完結するかを図面で確かめてみてください。

2階を使わない判断も選択肢に入れる

1階へ生活を移したあと、2階をどうするかという判断が残ります。空いた2階を使える形で保とうとすると、階段への昇降機や手すりの工事が必要になり、費用は一気に膨らみます。年に数回しか上がらない部屋のために、数十万円から百万円を超える工事を選ぶかどうかという話です。

思い切って2階を使わないと決めれば、その予算をまるごと1階の浴室やトイレへ回せます。荷物置きとして残し、上がるときは家族が付き添う形にしておく家庭も少なくありません。家全体を直すのではなく、暮らす範囲を狭めて安全にするという考え方も、戸建てなら選べます。子や孫が泊まりに来る頻度も含めて、家族で話してから決めましょう。

建物を支える壁は動かさず迂回する

戸建てで唯一どうにもならないのが、建物を支える柱と壁です。木造では筋かいの入った耐力壁、鉄筋コンクリートでは構造壁がそれにあたり、抜くと建物の強さが落ちます。「浴室を広げて車椅子で入りたい」という希望が、この壁1枚で止まる場面は珍しくありません。

壁を抜けないとわかったら、目的を変えずに手段を差し替えます。浴室が広げられないなら、脱衣所側で座って着替えられるようにする、入口の建具だけ引き戸へ替えて開口を広く取る、といった逃げ道があります。どこまで動かせるかは建物ごとに違うので、図面を持って業者に建物の確認を依頼し、抜ける壁と抜けない壁を先に切り分けてもらってください。

賃貸で工事するときの大家の承諾

賃貸を直す話は、すべて大家の承諾から始まります。ここでは、承諾の取り方と、介護保険を使うときに必要になる書類について説明します。

承諾は工事の前に書面でもらう

賃貸で工事へ進めるかどうかは、大家か管理会社が握っています。伝え方としては、親の体の状態と、どこにどんな工事をしたいか、費用は誰が持つのかをそろえて相談すると話が早く進みます。手すり1本のような小さな工事なら、断られずに済む例も多くあります。

大事なのは、口約束で済ませず書面に残すことです。担当者が代わったり、大家が亡くなって相続で持ち主が変わったりすると、口頭の許可は跡形もなく消えてしまいます。承諾書には、工事の場所と内容、退去のときにどうするかまで書いてもらってください。介護保険を使う場合、この書面がそのまま申請の書類になります。

介護保険の申請には所有者の承諾書を添える

賃貸でも、要介護認定を受けた本人が住んでいれば介護保険の住宅改修は使えます。ただし借家の場合、申請には持ち主の承諾書が要ります。厚生労働省の介護保険の住宅改修では、支給申請のときの提出書類として「住宅の所有者の承諾書(住宅改修を行った住宅の所有者が当該利用者でない場合)」が挙げられています。

借家で介護保険を使うなら、大家の承諾書は「あると安心な書類」ではなく、申請に要る書類です。同じ資料には対象となる工事として手すりの取付けや段差の解消など6種類が示され、支給限度基準額は20万円と定められています。制度そのものの中身は介護保険の住宅改修とはで詳しく扱っているので、賃貸で使えるか確かめたい方は担当のケアマネジャーに早めに相談してみてください。

原状回復の範囲を承諾のときに決める

賃貸には、退去のときに借りたときの状態へ戻す原状回復という約束がついて回ります。手すりを付けた壁のビス穴、引き戸に替えた建具、外した敷居。どこまで戻すよう求められるかで、退去時に出ていく金額が変わります。ここを曖昧にしたまま工事を始めると、何年か後に思わぬ請求を受けかねません。

そこで、承諾をもらう場で「手すりは残していってよいか」「戻すとしたらどこまでか」を確認し、その答えも書面に入れておきます。次に入る方にも役立つ設備なら、そのまま置いていってよいと言ってくれる大家もいます。都市再生機構(UR賃貸住宅)や公営住宅では独自の取り扱いを設けている場合があるため、募集元の窓口にも直接確かめておくと確実です。

注意

賃貸の工事は、大家か管理会社の承諾を得ずに進めると契約違反になります。介護保険の住宅改修を使う場合、持ち主が本人でなければ所有者の承諾書が申請に必要です。工事の相談より先に、承諾が取れるかどうかを確かめてください。

工事をしない賃貸の直し方

承諾が下りなかったり、原状回復の負担が重かったりする場合でも、打つ手はあります。ここでは、建物に手を入れずに危ない場所を減らす方法を説明します。

据え置き型の手すりで壁を傷めず支える

壁にビスを打てないときの代わりになるのが、床に置いて使う据え置き型の手すりです。土台の重さと本人の体重で安定させる造りなので、工事も穴も要りません。トイレの便器を囲む形のもの、布団やベッドからの立ち上がりを支えるもの、玄関の上がり框(あがりかまち)用のものと、置く場所に合わせた形がそろっています。

しかも、手すりは介護保険の福祉用具貸与の対象です。厚生労働省の福祉用具貸与では、手すりとスロープが貸与種目に含まれており、工事を伴わないものが対象になります。要介護認定を受けていれば、自己負担は原則として単価の1〜3割で借りられます。賃貸で壁に触れないとわかったら、まず福祉用具専門相談員に置ける型があるかを聞いてみましょう。

可搬式スロープで段差を越える

玄関の上がり框や部屋の敷居のような段差も、置くだけのスロープで越えられます。可搬式スロープは必要なときだけ渡し、使わないときは片づけておける板状やレール状の用具で、こちらも工事は不要です。車椅子で出入りするときや、すり足でつまずきやすい敷居にそのまま渡して使えます。

据え置き手すりと同じく、スロープも福祉用具貸与の対象種目に入っています。段差の高さと、車椅子か歩行かで必要な長さが変わるため、選ぶときは実際の段差を測ってもらうのが確実です。勾配がきつすぎると介助する家族の腰に負担がかかるので、置ける長さと段差の高さを見て福祉用具専門相談員に選んでもらってください。

直せない賃貸は住み替えとも比べる

承諾が下りず、用具でも危なさが消えないなら、その家に住み続ける前提そのものを見直す時期かもしれません。急な階段しかない2階の部屋、浴室に入るのに大きな段差がある間取りなど、建物の造りから来る危なさは置き型の用具では埋めきれません。無理をして住み続けた末に転倒すれば、費用も体もはるかに大きな代償を払うことになります。

判断の物差しは、用具でしのげる範囲かどうかです。手すりとスロープで毎日の動線が安全になるなら住み続ける、階段や浴室そのものが危ないなら移ることを検討する、と切り分けます。バリアフリーの整った物件を探す手順はバリアフリー賃貸の探し方でまとめているので、住み替えも視野に入れる方はそちらもご覧ください。

二世帯住宅のバリアフリーリフォーム

二世帯の工事は、建物の話に入る前に人とお金の確認から始まります。ここでは、名義と費用負担で詰まりやすい点を説明します。

名義と費用の出し手を先に確かめる

二世帯で最初に確かめるのは、誰の名義の家を、誰のお金で直し、誰が使うのかという3点です。親名義の家を親のお金で直して親が使うなら、話は戸建てとほぼ同じで、税金の問題も起きません。ややこしくなるのは、名義人とお金の出し手が食い違うときです。

親名義の家を子がお金を出して直す形は、二世帯でいちばんよく起こる組み合わせでしょう。この場合、工事の承諾は名義人である親から取り、費用の出し方は税の論点まで見てから決めます。登記の名義は法務局で登記事項証明書を取れば確かめられるので、思い込みで進めず、書類で確認しておくと安心です。

親名義の家を子が直すと贈与税の論点が出る

親名義の家に子がお金を出して増築や改修をすると、税金の話が絡んできます。国税庁の親名義の建物に子供が増築したときでは、増築部分は建物の所有者のものになり、親が子に対価を支払わないときは、親が子から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税されると示されています。同じページでは、子が出した資金に相当する建物の持分を親から子へ移して共有にすれば課税されないことも説明されています。

とはいえ、どの工事がこれにあたるかは、金額や工事の中身で変わります。手すりの取付けのような小さな修繕と、部屋を建て増しする増築とでは扱いが同じではありません。税の判断は自己判断で決めず、工事の前に税務署か税理士に確かめてください。実家を子の負担で直す話が出たら、見積もりを持って相談に行くのが確実です。

共有部分は使う人全員で決める

二世帯では、玄関や階段、水回りを両世帯で使う造りも多くあります。共有部分に手を入れると、親のためによかれと思った工事が、子世帯の使い勝手を落とすこともあります。玄関の段差を埋めるスロープが子どもの自転車の出し入れをふさぐ、といったすれ違いが起こりがちです。

工事の範囲を決める段階で、両世帯が同じ場に集まって話しておくと後の摩擦が減ります。誰がいつどう使う場所なのかを声に出して確かめ、譲れない点を先に出し合ってください。玄関を2つに分ける、親世帯側の水回りだけ直すといった折衷案が見つかることもあります。片方の世帯だけで決めて工事を進めるやり方は避けましょう。

介護保険は本人が現に住む住宅が対象になる

二世帯で介護保険の住宅改修を使うときは、対象になる家がどこかという点に気をつけてください。厚生労働省の資料には「要介護者等が、自宅に手すりを取付ける等の住宅改修を行おうとするとき」と書かれており、対象は要介護認定を受けた本人が現に住んでいる住宅です。子世帯の家を親のために直したくても、親がそこに住んでいなければ支給の対象になりません。

親を呼び寄せて同居する前に子の家を直したい、という相談は多いものの、住民票や実際の居住がどうなっているかで扱いが変わります。保険者である市区町村ごとに運用の細かい違いもあるため、工事の前にケアマネジャーか市区町村の窓口へ確かめておいてください。順番を間違えて工事を先に済ませると、支給を受けられなくなる恐れがあります。

住居タイプに共通する確認

戸建て・賃貸・二世帯のどれであっても、工事の前に押さえておく点は共通しています。ここでは、住居タイプを問わず確かめたい2つを説明します。

工事前に名義と承諾をそろえる

3つの住居タイプを通して効いてくるのは、名義と承諾です。持ち主が本人なら承諾は要らず、持ち主が別の人なら、賃貸でも二世帯でも承諾を取ってから進めます。介護保険を使うなら、その承諾を書面にしたものが申請の書類にもなります。

確認の順番は、名義を調べる、名義人へ相談する、承諾を書面でもらう、そのうえで見積もりを取る、という流れです。見積もりや業者選びを先にやると、承諾が下りなかったときに全部やり直しになってしまいます。工事の中身を詰めたい気持ちを一度抑えて、まず持ち主が誰かをはっきりさせるところから始めてください。

判断に迷ったらケアマネジャーに相談する

住居タイプごとの判断は、家族だけで抱え込むと止まりがちです。賃貸の承諾が取れるか、二世帯で誰が費用を持つか、そもそも工事と用具のどちらが向くか。どれも建物と制度と家族の事情がまたがる問題なので、専門職を挟むと前へ進みます。

介護保険を使うなら、担当のケアマネジャーが窓口です。住宅改修が必要な理由書を書く立場でもあり、市区町村ごとの運用にも通じています。福祉用具で代えられそうな場面では福祉用具専門相談員、税の論点が出たら税務署か税理士と、相手を分けて聞くのが確実です。まずはケアマネジャーに家の形を伝え、どこから相談すべきかを教えてもらいましょう。

まとめ

同じバリアフリーリフォームでも、住んでいる家の形で詰まる場所が変わります。戸建てなら止める人がいないぶん、危ない場所から順に決める判断が家族に委ねられ、生活を1階へ集める方法が効きます。賃貸なら大家の承諾が先で、承諾書は介護保険の申請にも要る書類です。二世帯では名義と費用の出し手を確かめ、親名義の家を子が直すなら税の論点まで見ておきます。

承諾が取れない賃貸でも、据え置き手すりや可搬式スロープなら工事なしで危なさを減らせます。それでも建物の造りから来る危なさが残るなら、住み替えとも比べてください。どの住居タイプでも、まず名義を調べ、持ち主の承諾を書面でそろえてから見積もりへ進むのが遠回りに見えて確実な順番です。工事の場所ごとの費用や中身を見比べたい方は、バリアフリーリフォームとはもあわせて役立ててください。

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