廊下・階段のバリアフリーリフォーム|手すり・照明・階段昇降機

リフォームで直す

親が階段の途中で立ち止まるようになったり、手すりのない壁に手をついて下りるようになったりすると、家族はまず階段から直したいと考えます。ただ、階段のリフォームは手すり一本を付ける工事から、百万円を超える昇降機まで幅が広く、どこから手をつければよいのかが見えません。

階段が怖いのは、転んだときに平らな床の上と違って落ちてしまう点です。数段分の高さから頭や胸を打つため、同じ「ころんだ」でも骨折や頭のけがになりやすく、入院や寝たきりにつながります。廊下は落差こそありませんが、幅が狭くて夜に暗いという別の危なさを抱えています。

そこで、廊下と階段で実際に起きている事故から、手すりと滑り止めと照明という費用の軽い工事、廊下の幅と段差、そして階段昇降機の費用と介護保険の扱いまでをまとめました。階段の昇り降りが不安になってきた家族は、直す順番を決める手がかりとして役立ててください。

廊下と階段で起きている事故

階段と廊下は毎日通る場所なので、危ないとわかっていても後回しにされがちです。ここでは、階段と廊下でどんなけがが起きているのかを見ていきます。

階段からの転落は入院につながりやすい

高齢者の家庭内の事故というと転倒が思い浮かびますが、階段のけがはそれとは重さが違います。東京消防庁の救急搬送データからみる高齢者の事故では、高齢者の「落ちる」事故で令和6年に8,719人が救急搬送され、事故原因の1位が階段の4,240人だと示されています。脚立や踏み台よりも、自宅の階段のほうがはるかに多いという結果です。

同じ資料では、「落ちる」事故の4割以上が入院の必要がある中等症以上だとされています。階段の事故は、床で転ぶのと違って高さの分だけ体に加わる力が大きく、骨折や頭のけがとして入院につながります。大腿骨を折れば数か月の入院になり、そのまま歩けなくなる方もいます。まずは階段を、家の中でもっとも重いけがが起きる場所として見直してみてください。

階段は下りはじめの数段で体重が前に出る

階段のなかでも危ないのは、上るときより下りるときです。下りは体重が前へ、しかも低いほうへかかるため、足を置く場所を見誤ると体を支え直す余裕がありません。とくに下りはじめの数段は、まだ体が階段の動きに慣れておらず、視線が下を向いて足元の見え方も変わります。

年齢とともに脚の力が落ちると、下りの一歩で膝が耐えきれず、かくんと落ちるように足が着く場面も増えてくるでしょう。その瞬間に支えるものがなければ、体は前へ投げ出されてしまいます。親が下りるところを一度後ろから見て、体が前へ泳ぐ場面がないか、壁に手をついて下りていないかを確かめておきましょう。

廊下は幅の狭さと夜の見えにくさが重なる

廊下には落差がないぶん見過ごされますが、危なさの中身は階段と違います。古い木造住宅の廊下は幅が狭く、杖や歩行器を使い始めると肘や車輪が壁に当たり、体をひねって避けようとしてよろけるのです。壁づたいに歩こうにも、途中に扉や柱があって手が離れる場所も出てきます。

夜のトイレも廊下の事故が起きやすい場面です。寝起きで足元がおぼつかないうえ、暗い廊下では敷居の高さやコードが見えず、つまずいて手前の壁や柱に体をぶつけます。廊下は幅と明るさの二つで見ると危ない場所が絞れるので、家全体をどう直すかを考えるときはバリアフリーリフォームの進め方もあわせて確認しておくとよいでしょう。

階段の手すり工事

階段の工事でいちばん効き目が大きく、費用も軽いのが手すりです。ここでは、手すりを付ける側と高さ、続け方について説明します。

手すりは下りるときの利き手側に付ける

片側だけに手すりを付けるなら、階段を下りるときに利き手が来る側を選びます。階段のけがは下りで起きやすいので、手すりは下りるときに強く握れる側へ付けるのが基本です。右利きの方なら、上から下りてきて右手に来る壁が候補になります。上りは体を持ち上げる動きなので、握力が弱くても脚の力でどうにかなりますが、下りは体を止める動きなので、握る力がそのまま安全に直結するのです。

ただし、片脚に痛みや麻痺があるなら話が変わります。麻痺のある側で握っても体を支えられないため、健側の手で握れる側に付けるほうが安全です。左右のどちらに付けるかは親が実際に下りる様子を見て決め、迷うときは理学療法士や福祉用具専門相談員に一度見てもらってから工事を頼んでください。

高さは踏面の先端から700ミリから900ミリに合わせる

手すりの高さは、床からではなく踏面の先端(段の角)を基準にそろえます。国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針では、階段の手すりは踏面の先端からの高さが700ミリから900ミリの位置に設けられていることが求められています。斜めに走る手すりを、どの段で測っても同じ高さになるように取り付けるという意味です。

高さの決め方は、親がまっすぐ立って腕を下ろしたとき、手首の骨あたりに手すりが来る位置が目安になります。高すぎると肩が上がって力が入らず、低すぎると前かがみになって体が階段側へ倒れます。同じ資料では、通路の有効な幅員は780ミリ以上、出入口の幅員は750ミリ以上といった寸法も示されているので、業者と打ち合わせる前に目を通して数値を控えておきましょう。

手すりは踊り場でも切らずに続ける

手すりで見落とされやすいのが、途中で途切れる場所です。踊り場で一度切れていたり、階段の下から3段目でようやく始まっていたりすると、握り替えのために手を離した瞬間が生まれます。そこがまさに体を支えたい場面なので、途切れは事故のきっかけになりかねません。

踊り場をはさむ折れ階段では、曲がりの部分をつなぐ部材を使って手すりを回し、上下の階段で高さがそろうようにします。階段の最上段より少し先まで、最下段より少し手前まで手すりを伸ばしておくと、階段に入る前と出た後も握ったままでいられるでしょう。見積もりを取るときは長さだけでなく「どこからどこまで連続させるか」を図に書いて渡し、途切れる箇所がないかを確かめてください。

勾配が急な階段は両側に付ける

古い家の階段は勾配が急なことが多く、片側の手すりでは足りません。国交省の指針でも、階段の手すりは少なくとも片側とされる一方、勾配が45度を超える場合には両側に設けることが求められています。加えて、より安全側の推奨レベルでは両側が基本になっており、片側は勾配が緩くホームエレベーターがある場合の例外として扱われています。

両側に付けると、上りと下りのどちらでも利き手で握れ、体の向きを変えずにすみます。両手で握れるので、片脚に力が入らないときも腕で体を引き上げたり止めたりできます。工事費は片側の倍近くになりますが、それでも数万円から十数万円の範囲に収まる工事なので、親の階段の勾配が急なら両側を前提に見積もりを取るとよいでしょう。

踏面と段鼻の滑り止め

手すりの次に効くのが、足を置く面そのものを滑りにくく、見えやすくする工事です。ここでは、滑り止めと段鼻と蹴込み板について説明します。

滑り止めの部材は踏面と同じ面に納める

階段の滑り止めというと、ホームセンターで買える滑り止めテープや、段の角に張るゴム材が思い浮かびます。手軽な反面、貼り付けるだけの部材は厚みの分だけ踏面から出っ張るため、そこに靴下やスリッパの先が引っかかることがあります。滑らないようにした部材が、新しいつまずきの原因になっては元も子もありません。

国交省の指針でも、踏面に滑り防止のための部材を設ける場合は、その部材が踏面と同一面となっていることが推奨レベルとして求められています。工事で入れるノンスリップ材は、踏面を溝状に彫り込んでから埋め込むので、面が平らなまま滑りにくくなります。貼るタイプで様子を見るなら、めくれや浮きがないかを月に一度確かめ、本格的に直すときは埋め込み式を業者に頼んでください。

段鼻は色を変えて段の位置を見せる

滑り止めと同時に考えたいのが、段の角がどこにあるか見えるかどうかです。年齢とともに水晶体が濁ると、明暗の差やわずかな色の違いが判別しにくくなり、同じ木目が続く階段では段の切れ目が溶けて見えます。踏み外しは、脚力より先に「段の位置を見誤った」ことから起きるのです。

段鼻(段の先端部分)に濃い色のノンスリップ材を入れると、明るい踏面との差で段の位置が線として浮かびます。踏面が濃い色の階段なら、逆に明るい色を入れると同じ効果が出るでしょう。滑り止めを入れる工事のついでに色を変えられるので、業者に頼むときは「滑らないように」だけでなく「段の角が見えるように」も伝えておきましょう。

蹴込み板がない階段はつま先が入り込む

古い家では、段と段の間に板がなく、向こう側が透けて見える階段(オープン階段)を見かけます。この形は上りで足のつま先が奥へ入り込み、引き抜くときに体が前へ振られるのです。下りでは段の隙間から下が見えて、高さを強く感じるという怖さもあります。

国交省の指針では、蹴込みは30ミリ以下とされ、推奨レベルでは蹴込み板が設けられていることまで求められています。蹴込み板は既存の階段に後から入れられることが多く、手すりや滑り止めと同時に頼めば足場の手間もまとめられます。親の階段が透けて見える形なら、板を入れられるかどうかを見積もりの段階で相談してみてください。

階段と廊下の照明

階段と廊下の事故は夜に集中するので、明るさは工事と同じくらい効きます。ここでは、スイッチの位置と足元灯の使い方を説明します。

スイッチは階段の上と下の両方に置く

階段の照明で確かめたいのは、明るさより先にスイッチの場所です。上と下のどちらか一方にしかないと、消しに戻るために暗い階段を一度下りることになり、それがいちばん危ない移動になります。夜中に上がるときも、下でつけて上で消せなければ、結局つけっぱなしにするか暗いまま上がるかの二択です。

上下の二か所からひとつの照明を入り切りできるようにする工事(三路スイッチ)は、配線の引き回しが要るものの、電気工事のなかでは小さい部類に入ります。壁の中を通せない場合は、無線でつながるスイッチを増設する方法もあります。階段を直す業者と打ち合わせるとき、手すりの話と一緒にスイッチの位置も見てもらってください。

足元灯は人感センサー付きを夜間の動線に置く

寝室からトイレまでの廊下は、まぶしすぎない明かりが向きます。天井の照明をつけると目が覚めてしまい、親が「面倒だから」と暗いまま歩く癖につながりかねません。足元灯(フットライト)は床に近い高さから足元だけを照らすので、まぶしさを抑えたまま敷居や壁の位置がわかります。

人感センサー付きを選べば、スイッチを探さずに歩き出せるでしょう。コンセントに挿すだけのものが数千円から手に入り、工事の要らない範囲で試せます。寝室のドアから廊下、トイレの入り口までを歩いてみて、暗くて足元が見えない箇所に一つずつ置いていくとよいでしょう。

廊下の幅と段差

廊下は、杖や車椅子を使い始めた段階で急に狭く感じ始めます。ここでは、幅と段差と手すりについて説明します。

通路の有効幅員は780ミリ以上を目安にする

廊下の広さは、壁から壁までの寸法ではなく、実際に通れる幅(有効幅員)で見ます。国交省の指針では、日常生活空間内の通路の有効な幅員は780ミリ以上、柱などの箇所では750ミリ以上が基本レベルとされ、推奨レベルでは850ミリ以上(柱などの箇所は800ミリ以上)が求められています。まずは親の家の廊下をメジャーで測り、この数値に届いているかを確かめましょう。

足りない場合、壁を動かす工事は柱や筋かいが絡んで大がかりになります。手前にできることとして、廊下に置いた棚や新聞の束をどけるだけで有効幅員が戻ることも珍しくありません。物をどけても幅が足りず、車椅子で通す必要があるなら、壁を動かせるかどうかを業者に構造から見てもらってください。

出入口の幅は750ミリ以上を確保する

廊下を広げても、部屋へ入る戸が狭ければそこで詰まります。国交省の指針では、日常生活空間内の出入口の幅員は750ミリ以上(浴室の出入口は600ミリ以上)が基本レベル、推奨レベルでは800ミリ以上とされています。開き戸は建具の厚み、引き戸は引き残しを差し引いた、実際に通れる幅で測るのが決まりです。

古い家の戸は幅が足りないことが多く、開き戸のままでは体を斜めにして通ることになります。引き戸に替えると、戸を開けたまま通れて幅も稼げるうえ、体を引きながら開ける動作が減ります。廊下の幅を測るときは各部屋の戸の幅も一緒に測っておき、どこが最初に詰まるかを見てから工事の順番を決めるとよいでしょう。

敷居の段差は床のかさ上げかすりつけでなくす

廊下と部屋の境にある敷居は、高さ数センチでもつまずきの元になります。すり足で歩く方はつま先が上がらないため、2センチの段差でも引っかかるのです。夜の廊下では見えないので、なおさら足を取られます。

直し方は二つあります。低い側の床全体をかさ上げして高さをそろえる方法と、段差の手前に傾斜のある部材を当てて緩やかにつなぐ方法(すりつけ)です。すりつけは費用が軽い反面、傾斜そのものが車椅子では抵抗になります。どちらを選ぶかは段差の高さと使う道具で変わるので、家じゅうの段差をどう直すかは段差解消の工事と費用を見ながら、業者と現地で決めてください。

廊下の手すりは高さをそろえて途切れさせない

廊下の手すりは、階段ほど強く体重を預けない代わりに、長い距離を握ったまま歩けることが値打ちになります。高さは床から750ミリから800ミリ前後で、親が腕を下ろしたときの手首の高さに合わせるとよいでしょう。壁の下地がない場所には付けられないので、工事では下地を探すか、当て板を入れてから取り付けます。

途中に戸や柱があって手すりが切れる場合は、切れ目の端を丸く納めて、次の手すりまでの距離を短くしてください。1メートル以上離れると、その間は支えのない状態で歩くことになります。工事で付ける手すりの選び方と場所別の費用は手すり設置の費用と選び方にまとめてあるので、廊下と階段をまとめて頼む前に目を通しておきましょう。

主な対策の費用感と介護保険の扱いを、下の表にまとめました。

対策 費用の目安 介護保険の住宅改修
階段の手すり(片側) 数万円〜十数万円 対象
踏面のノンスリップ材 数万円〜 対象(床材の変更)
敷居の段差解消 数万円〜 対象
引き戸への交換 十万円前後〜 対象
足元灯(コンセント式) 数千円〜 対象外
階段昇降機 数十万円〜百万円超 対象外

階段昇降機とホームエレベーターの費用

階段そのものを昇らずにすませる設備は、費用の桁が変わります。ここでは、昇降機の制度上の扱いと設置の条件、代わりになる選択肢を説明します。

階段昇降機は介護保険の住宅改修の対象外

椅子に座ったままレールで上下する階段昇降機は、直線の階段で数十万円から、曲がりのある階段では百万円を超えることもあります。ホームエレベーターは数百万円が中心で、建物への影響も大きくなります。金額が大きいだけに介護保険を当てにしたくなりますが、制度の扱いは別です。

厚生労働省の介護保険の住宅改修に関する資料では、住宅改修の種類として手すりの取付け、段差の解消、床または通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、それらに付帯して必要となる工事の6つが挙げられています。動力を使う昇降機やエレベーターはここに含まれず、支給限度基準額20万円の対象にもなりません。自治体が独自の助成を持っている場合があるので、諦める前に市区町村の高齢福祉の窓口へ問い合わせてみてください。

注意

階段昇降機とホームエレベーターは、介護保険の住宅改修(限度額20万円)の対象になりません。使えるとしたら自治体独自の助成や貸与制度で、内容は市区町村ごとに違います。契約の前に、必ず市区町村の窓口とケアマネジャーの両方に確認してください。

設置は階段の幅と曲がりの数で決まる

昇降機は費用を用意すれば必ず付くというものではなく、階段の形に左右されます。椅子とレールが階段の片側を占めるため、残った幅で家族が上り下りできるかが問われるのです。おおむね幅が750ミリを下回る階段では、椅子をたたんでも通りにくく、家族の動きを妨げます。

曲がりのある階段は、レールを現場の形に合わせて作るので、直線階段より費用も工期も上がるでしょう。踊り場のない回り階段では、そもそもレールを回しきれないこともあります。設置できるかどうかは業者の現地調査でしか判断できないので、金額を調べる前に、まず階段の幅と曲がりの数を測って複数の業者に見てもらってください。

1階で生活を完結させるほうが安く済む

昇降機の見積もりを取る前に、一度立ち止まって考えたいのが、そもそも階段を使わずにすむ暮らしにできないかという点です。2階の寝室を1階の和室や納戸に移し、寝室からトイレと浴室と居間までを1階でつなげば、階段を上るのは物を取りに行くときだけになります。寝室を1階へ移す工事は、昇降機の費用よりはるかに軽く、階段の事故そのものを消せます。

畳をフローリングに替えて介護ベッドを入れ、敷居の段差をなくして手すりを付けても、合計で数十万円に収まることが多く、一部は介護保険の住宅改修の対象にもなるでしょう。2階に思い入れがある、来客用の部屋がなくなるといった事情はあるので、家族だけで決めずに親本人と話してください。1階で完結させたうえで足りない部分だけを昇降機で補う、という順番でも遅くはありません。

まとめ

階段のけがは床で転ぶのと違い、高さの分だけ重くなります。東京消防庁のデータでも、高齢者が「落ちる」事故の原因は階段が最多で、4割以上が入院の必要な中等症以上でした。まず手をつけたいのは、下りるときの利き手側に付ける手すりと、踏面と同じ面に納める滑り止め、段鼻の色分け、そして上下から入り切りできる照明です。どれも数万円の範囲で、介護保険の住宅改修の対象にもなります。

廊下は有効幅員780ミリ以上と出入口750ミリ以上を目安に測り、物をどけて幅を戻すところから始めます。敷居の段差をなくし、手すりを高さをそろえて途切れさせずに回せば、夜のトイレまでの動線が変わります。階段昇降機とホームエレベーターは介護保険の住宅改修の対象外で費用も大きいため、寝室を1階へ移す案と並べて比べてください。工事の内容と順番で迷ったら、注文の前にケアマネジャーか福祉用具専門相談員に現地を見てもらうと失敗を防げます。家じゅうの段差をどう直すかを続けて考えたいときは、段差解消の工事と費用もあわせて役立ててください。

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