滑りにくい床材への変更|場所別の選び方と段差が生まれる注意点

リフォームで直す

親が風呂場でひやりとした、廊下の敷居につまずいた。そんな話を聞くと、床そのものを滑りにくいものへ変えられないかと考える家族は多いものです。ところが床材を調べ始めると、クッションフロアやタイルカーペットといった名前ばかりが並び、どれが実家に合うのかまでは見えてきません。

床材選びが分かりにくいのは、場所によって床に求めるものが正反対になるからです。浴室で欲しいのは濡れても滑らない表面ですが、居室で欲しいのは転んでも痛くない柔らかさで、車椅子を通すなら逆に硬い床が要ります。一種類で家じゅうの困りごとを解決できる床材はありません。

そこで、場所ごとに床材へ求めるものと種類別の弱点、張り替えたときに生まれる段差の処理、介護保険で対象になる範囲までをまとめました。どの部屋のどの床から手を付けるか決める段階で役立ててください。

場所ごとに床材へ求めるもの

同じ「滑りにくい床」でも、水がかかる浴室と、素足で長く過ごす居室では、求める性質が食い違います。ここでは、場所を三つに分けて、それぞれ何を優先するかを見ていきます。

濡れる場所は濡れても滑らない床材を選ぶ

浴室や脱衣所、トイレのように水がかかる場所では、濡れた状態で滑らないかどうかがすべての物差しになります。乾いていれば滑らない床材でも、水膜ができると足裏と床の間に水が入り込み、踏み込んだ瞬間につるりと足が流れてしまうのです。石けんやシャンプーが混じるとさらに滑りやすくなり、浴室の出入りや洗い場での方向転換で足を取られます。

濡れる場所向けの床材は、表面に細かな凹凸を付けて水を逃がし、足裏が床に触れる部分を残す作りになっています。国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針でも、住戸内の床の仕上げは滑りや転倒に対する安全性へ配慮したものとするよう示されています。カタログでは「防滑」「浴室用」と書かれた区分にあたるので、水回りを直すときはまずこの区分の中から候補を絞ってください。

居室と廊下は転んでも痛くない床材を選ぶ

居室や廊下で優先したいのは、つまずかないことと、転んだときに体へのダメージが小さいことです。水がかからないぶん滑る心配は減りますが、そのかわり長い時間を過ごし、歩く距離も長いので、転ぶ機会そのものは水回りより多くなります。高齢の方は転んで手や腰を打つと骨折につながりやすく、そのまま寝たきりの入り口にもなりかねません。

硬いフローリングの上で尻もちをつけば衝撃はそのまま骨に届きますが、クッション性のある床材なら衝撃をいくらか吸収してくれます。すり足で歩く方の場合、毛足の長いカーペットやめくれたマットの縁が引っかかる点にも注意が必要です。転倒そのものをどう減らすかは家全体の考え方が絡むので、転倒予防の考え方もあわせて確認したうえで、居室の床材を決めるとよいでしょう。

車椅子を使う場所は硬くて転がる床材を選ぶ

車椅子や歩行器を使う場所では、これまでの二つと逆に、硬くて平らな床が要ります。柔らかい床やカーペットは車輪が沈み込み、押す側の力が余計に要るうえ、方向を変えるときに前輪が引っかかって思うように向きが変わりません。介助する家族が毎日押すことを考えると、この差は腰への負担として積み上がります。

車椅子で通る廊下やリビングは、板張りの床材のように硬く表面が平らなものが向いています。同じ家の中でも、浴室は防滑、廊下は硬い床というように、通る場所を思い浮かべながら分けて考えてください。どの部屋で何をする人が、どんな状態で床に触れるのかを先に決めると、床材は自然に絞れます。

滑りにくい床材の種類

床材は名前が似ていても、水への強さと硬さ、価格の位置づけがそれぞれ違います。ここでは、介護目的の張り替えで候補に挙がる四つの床材を順に説明します。

クッションフロアは水に強く価格が抑えられる

水回りの張り替えでもっともよく選ばれるのが、塩化ビニル製のシート状の床材であるクッションフロアです。継ぎ目が少なく水を通しにくいので、トイレや脱衣所のように水はねが避けられない場所に向きます。厚みの中に発泡層があるぶん足当たりが柔らかく、転んだときの衝撃もフローリングほど強くは伝わりません。

材料費と工事費を合わせても比較的抑えやすく、いくつかの部屋をまとめて直したいときに予算が組みやすい床材でもあります。反面、重い家具の脚で跡が残ったり、熱に弱かったりする弱点があり、車椅子を毎日通す場所では表面がすり減ります。まず水回りの一室から試したい方は、この床材を最初の候補に置いてみてください。

フローリングは硬く車椅子で転がしやすい

板張りのフローリングは、硬くて平らなので車椅子や歩行器の車輪が転がりやすく、家具も安定して置ける床材です。掃除がしやすく、見た目が家の他の部屋となじむため、居室や廊下を張り替えるときの標準的な選択肢になります。介護保険の解釈でも、居室の床材変更の具体例として板製床材への変更が挙げられています。

弱点は、水に濡れると滑ることと、転んだときに衝撃を逃がさない硬さです。そのため水回りには向かず、居室で使うなら転倒そのものを減らす手立てとセットで考える必要があります。近ごろは表面に滑りにくい加工を施した製品も出ているので、居室に使うときは加工の有無をメーカーの仕様で確かめてから選んでください。

タイルカーペットは転倒時の衝撃を吸収する

四角いパネル状に切られたタイルカーペットは、居室や廊下に敷いて転倒時の衝撃をやわらげる床材です。汚した部分だけを外して洗ったり、新しい一枚と交換したりできるので、飲みこぼしや粗相のある部屋では張り替え全体をやり直さずに済みます。裏面に滑り止め加工のあるものを選べば、敷いたパネルがずれて足を取られる心配も減らせるでしょう。

一方で、毛足に足先が引っかかりやすく、すり足で歩く方にはかえってつまずきの原因になることがあります。車椅子では車輪が沈んで押す力が余分に要り、毎日の移動が長い家には向きません。歩ける方の寝室や、座って過ごす時間が長い部屋から検討するとよいでしょう。

浴室用の床材は水はけがよく冷たくない

浴室専用に作られた床材は、表面の溝で水を流して足裏の接地を保ち、濡れた状態でも滑りにくくしています。断熱の層を持つ製品なら、冬場に素足で踏んだときのひやりとした冷たさがやわらぎ、急な温度差で体に負担がかかる場面も減らせるでしょう。床だけを既存の浴室に張る工法もあり、浴室まるごとの入れ替えより費用と工期を抑えられます。

ただし、細かな溝に皮脂や石けんかすがたまると滑りが戻るので、こまめな掃除が前提の床材です。既存の浴室の下地や排水の状態によっては、床だけの張り替えができないこともあります。浴室から手を付けたい方は、現地を見てもらう段階で床だけの施工ができるかを業者に確かめてください。

四つの床材の位置づけを、下の表にまとめました。

床材 向いている場所 弱点
クッションフロア トイレ・脱衣所・水はねのある部屋 家具の跡が残る/車椅子ですり減る
フローリング 居室・廊下・車椅子で通る場所 濡れると滑る/転ぶと衝撃が大きい
タイルカーペット 寝室・座って過ごす部屋 毛足につまずく/車輪が沈む
浴室用の床材 浴室の洗い場 溝の汚れで滑りが戻る
和室のまま使う部屋 車椅子に向かない/へこみやすい

床材の変更で生まれる段差

床材を張り替えると、直したはずの部屋の入り口に新しいつまずきの種ができることがあります。ここでは、なぜ段差が生まれるのかと、どう処理するのかを説明します。

厚みの差で敷居や継ぎ目に数ミリの段差が出る

床材にはそれぞれ厚みがあり、張り替えると元の床と数ミリの差が生まれます。薄いシート状の床材から厚みのある床材へ替えれば新しい床のほうが高くなり、逆に薄くすれば低くなって、部屋の境目や敷居のきわに小さな崖ができてしまうのです。数ミリなら大丈夫だろうと思われがちですが、すり足で歩く方や、足が上がりにくくなった方にとっては、この数ミリが引っかかります。

国土交通省の設計指針では、段差のない構造として五ミリ以下の段差までを含めて扱っています。逆に言えば、それを超える差が部屋の境目に残っていれば段差として扱う必要があります。床材を替えるときは、床の表面をどこにそろえるかを工事の前に決めておいてください。段差全体の直し方は段差解消の工事と費用にまとめています。

見切り材で継ぎ目の段差を処理する

床材が切り替わる継ぎ目には、見切り材(境目に取り付ける細い部材)を入れて高さの差を処理します。金属や樹脂でできた細い部材で、段差の縁を斜めに削いだ形をしており、足やスリッパが引っかからないよう傾斜をつけて渡すものです。同じ高さの床同士でも、切り口をきれいに納めるために入れる場面があります。

避けたいのは、見切り材そのものが盛り上がって新しいつまずきの棒になってしまう納まりです。上に乗り上げる形ではなく、床面と面一に近い形で渡してもらうよう、見積もりの段階で伝えてください。図面や仕様書に見切り材の型番が出てきたら、断面の形を写真で見せてもらうと安心です。

部屋ごとに分けて張ると継ぎ目が増える

予算の都合で部屋ごとに順番に張り替えていくと、そのたびに新しい継ぎ目が家の中へ増えていきます。トイレを直し、翌年に廊下を直し、その次に居室を直すと、三か所の境目にそれぞれ厚みの違う床がぶつかる形です。一枚ずつ丁寧に納めていても、境目の数が増えるほど、どこかが引っかかる確率は上がっていきます。

対策として、直す順番を決める段階で、最終的にどの部屋をどの床材にするかまで先に決めておくとよいでしょう。全部を一度に工事しなくても、厚みをそろえる方針さえ決まっていれば、後から張る床を先の床に合わせられるからです。何年かに分けて直す予定なら、最初の見積もりのときに全体の計画を業者へ伝えておきましょう。

滑りにくさと引き換えになるもの

床材の性質は、片方を強めると別の使いやすさが削られる関係にあります。ここでは、知らずに選ぶと後悔しやすい二つの相反する点を説明します。

滑りにくい床材は車椅子が転がりにくくなる

床の滑りにくさは、足裏が滑らないという良い面と、車輪が転がらないという困った面をいつも一緒に連れてきます。表面の凹凸を強くするほど足は止まりますが、同じ凹凸が車椅子の前輪を引っかけ、押す家族の力が余分に要ります。歩ける親のために防滑性の高い床を入れたところ、数年後に車椅子になって押しづらくなったという行き違いも起きています。

どちらを優先するかは、これから数年でその部屋をどう使うかで決まります。今も先も歩いて過ごす部屋なら滑りにくさを優先し、車椅子が視野に入っている廊下やリビングなら硬く平らな床へ寄せてください。判断がつかないときは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に体の見通しを聞いてから決めるとよいでしょう。

柔らかい床は杖が沈んで歩行が不安定になる

転んだときに痛くない柔らかい床は、歩いている最中の安定という点では不利に働きます。杖の先ゴムが柔らかい床にわずかに沈むと、体重を預けた瞬間に支点がずれ、支えたつもりの手が流れてしまうのです。厚手のカーペットや、下地の傷んだ床の上に敷いた柔らかい床材では、この沈み込みが大きくなります。

杖や歩行器を使っている方の部屋では、柔らかさより支点の安定を優先してください。転倒時の衝撃をやわらげたいなら、床全体を柔らかくするのではなく、ベッドまわりのように転びやすい場所に限って衝撃吸収マットを敷く手もあります。どこで杖をつくのかを実際に歩いてもらいながら見ておくと、範囲を絞れます。

介護保険で床材を変えるとき

床材の変更は、介護保険の住宅改修として費用の一部が戻ってくる可能性があります。ここでは、対象になる範囲と、外れやすい工事の線引きを説明します。

床材の変更は住宅改修の対象6種に入る

介護保険の住宅改修には対象となる工事が六種類あり、床材の変更はそのひとつです。厚生労働省の住宅改修の概要では、手すりの取付けや段差の解消と並んで「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」が住宅改修の種類として挙げられています。同じ資料に支給限度基準額は二十万円と示されており、要支援・要介護の区分にかかわらず定額です。

屋外についても、告示改正により平成十二年十二月以降は玄関から道路までの工事が支給の対象になったことが記されています。庭から玄関までのアプローチを滑りにくい舗装材へ替える工事も、条件を満たせば視野に入ります。実家の外まわりで滑る場所があるなら、屋内とあわせて相談してみてください。

対象になる工事は告示の具体例で確かめる

どんな工事が床材の変更にあたるかは、厚生労働省の告示に関する解釈通知に具体例が書かれています。原文では「居室においては畳敷から板製床材、ビニル系床材等への変更、浴室においては床材の滑りにくいものへの変更、通路面においては滑りにくい舗装材への変更等が想定される」と示されており、この記事で挙げてきた床材がそのまま並ぶ形です。

同じ通知には付帯工事の扱いもあり、床材の変更のための下地の補修や根太の補強、通路面の材料変更のための路盤の整備が、付帯して必要となる住宅改修として挙げられています。床をはがして下地が傷んでいた場合の補修まで含められる可能性があるということです。見積もりを見るときは、下地の補修が別扱いになっていないかを担当者と確かめておきましょう。

滑り防止が目的でない張替えは対象外になる

対象となる工事の名前は「滑りの防止及び移動の円滑化等のための」と目的を限って書かれています。つまり、床が古くなったから新しくしたいという理由だけの張り替えは、この枠に入りません。傷んだ床をきれいにするついでに滑り止めも兼ねたい、という頼み方をすると、工事の目的があいまいになって判断が難しくなります。

申請では、どこで誰がどう滑って困っているのかを理由書に書き、その解決として床材を替える形に整えます。同じ工事でも、目的の説明の仕方で結論が変わることがあるので、着工前にケアマネジャーへ相談してください。判断は保険者である市区町村が行うため、迷う工事は事前に窓口へ確かめておくと確実です。

注意

床材の変更が介護保険の対象になるかは、工事の目的や住まいの状態、保険者である市区町村の判断で変わります。老朽化に伴う張り替えのように滑りの防止が目的でないものは対象になりません。工事の契約を結ぶ前に、必ず担当のケアマネジャーか市区町村の窓口に確かめてください。

床材の工事を頼む前に確かめること

床材を替える工事は、貼ってしまうと元に戻すのに同じだけ費用がかかります。ここでは、業者へ声をかける前に家族でそろえておきたい三点を説明します。

どこで滑りどこでつまずくかを書き出す

工事の前にまずやりたいのは、実家のどこで誰がひやりとしたのかを紙に書き出すことです。「風呂場が危ない」ではなく、「洗い場で体を洗ったあと立ち上がるとき足が流れた」「脱衣所のマットの縁に何度もつまずいた」というところまで下ろすと、直す場所と床材が絞れます。本人の記憶があいまいなら、実際に一緒に歩いてもらい、動きが止まる場所を見ておく方法もあるでしょう。

書き出したものは、そのまま業者やケアマネジャーへ渡す材料になり、介護保険の理由書を書いてもらうときの下地にもなります。家じゅうの点検の観点はバリアフリーリフォームの全体像にまとめているので、床以外の危ない場所も一度に洗い出しておくと二度手間になりません。まずは十分ほど家の中を歩いて、気になった場所をメモしてみてください。

下地の傷みを工事の前に確かめる

床材そのものより先に確かめたいのが、その下にある下地の状態です。歩くと沈む、きしむ音がする、水回りの床がぶよぶよするといった症状があれば、下地が湿気で傷んでいる可能性があります。傷んだ下地の上に新しい床材を貼っても、沈み込みは残り、杖の支点が安定しないうえ、数年で表面が波打ちます。

築年数が経った家の水回りは、はがしてみて初めて傷みが分かることも珍しくありません。見積もりの段階で、下地の補修が必要になった場合の追加費用の考え方まで聞いておくと、工事中の追加請求で慌てずに済みます。床鳴りや沈みに心当たりがあるなら、現地調査のときに必ず伝えてください。

ケアマネジャーに相談してから見積もりを取る

介護保険を使う予定があるなら、業者へ見積もりを頼む前にケアマネジャーへ声をかけるのが順番です。住宅改修は工事の前に申請書類を出す仕組みなので、先に契約して着工してしまうと、対象になる工事でも支給を受けられないことがあります。理由書もケアマネジャーなどが書くため、早い段階で相談しておくほど話が早く進むでしょう。

相談のときは、書き出した困りごとのメモと、直したい場所の写真を持っていくと具体的な話になります。制度を使わず自費で直す場合でも、体の見通しを知る専門職の意見を聞いてから床材を選ぶと、数年で貼り直す事態を避けられます。動き出す前に、まずケアマネジャーへ電話を一本入れてみましょう。

まとめ

床材は場所によって求めるものが変わり、濡れる場所は濡れても滑らないこと、居室や廊下は転んでも痛くないこと、車椅子を通す場所は硬くて転がることが優先されます。クッションフロアは水に強く、フローリングは車椅子に向き、タイルカーペットは衝撃を吸収し、浴室用の床材は水はけと冷たさに効きます。どれも弱点があるので、部屋ごとに分けて選んでください。

張り替えでは厚みの差から数ミリの段差が生まれるため、見切り材の納まりと、床の高さをどこにそろえるかを工事の前に決めておく必要があります。滑りにくさと車輪の転がりやすさ、柔らかさと杖の安定は相反するので、これから数年の使い方から優先順位を決めましょう。介護保険では床材の変更が対象六種のひとつに入りますが、滑り防止が目的でない張り替えは外れます。契約の前に、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口へ確かめてから動いてください。張り替えで残る境目の段差まで含めて直したい方は、段差解消の工事と費用もあわせて役立ててください。

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