和室・寝室のバリアフリーリフォーム|畳からフローリングと1階への移動

リフォームで直す

親の足元が危なくなってくると、まず手すりや段差に目が向きます。ところが家の中でいちばん危ないのは、毎日2階の寝室へ上がり下りしている階段そのものだった、という家は珍しくありません。

そこで候補に挙がるのが、1階の和室です。客間として年に数回しか使っていない6畳間が空いているなら、そこを親の寝室に変えるだけで、階段を使う回数を1日ゼロにできます。畳をフローリングに変えるか、敷居の段差をどうするか、襖のままでよいのかは、その先に続く工事の話になります。

畳をやめるかどうかには、はっきりした正解がありません。畳には転んだときに衝撃をやわらげる利点があり、フローリングには車椅子や介護ベッドを置ける利点があります。判断の材料と工事の中身、介護保険で使える部分までをまとめたので、和室を寝室に変える前の手がかりとして役立ててください。

寝室を1階へ移す判断

工事の中身を考える前に、そもそも寝室をどこに置くかで安全性は大きく変わります。ここでは、2階の寝室を1階の和室へ移す判断について説明します。

2階の寝室は毎日の階段が危ない

親の寝室が2階にあると、朝晩の着替えや就寝のたびに階段を往復することになります。手すりを付けても段板を滑りにくくしても、階段を使う行為そのものが家の中でもっとも転落の危険が大きい場面です。しかも夜中にトイレへ起きるときは、寝ぼけた状態で暗い階段を下りることになり、危険はいっそう膨らみます。

どれだけ階段を安全に直しても、階段を使わずに済ませることには及びません。2階の寝室を1階へ移せば、往復の回数がそのままゼロになります。段差解消や手すりに何十万円もかける前に、寝る場所を1階へ動かせないかを家族で話し合ってみてください。工事をせずに危険をひとつ消せる可能性があるなら、そこから検討するほうが順番として無理がありません。

1階の和室は寝室に変えやすい

1階に和室があるなら、そこは寝室の候補として真っ先に挙がります。客間や仏間として使っている和室は、もともと人が寝起きすることを想定した広さで作られており、6畳や8畳あれば介護ベッドを置いても人が通る幅を残せるためです。日中はほとんど使われていない部屋であれば、家族の生活を大きく変えずに転用できます。

和室が居間の隣にあることも利点になります。親が寝ている部屋と家族が集まる部屋が近ければ、呼び声が届き、様子の変化にも気づきやすくなるでしょう。逆に、和室が家の奥まった位置にあって家族の動線から外れているなら、居間に近い洋室のほうが向く場合もあります。まずは1階の部屋を見回して、どの部屋なら寝室として使えるかを書き出してみてください。

トイレと浴室が同じ階にあるか確かめる

寝室を1階へ移すときは、トイレと浴室が同じ階にあるかどうかを必ず確かめます。夜中にトイレへ行くたびに階段を上るのでは、寝室を移した意味がなくなってしまうからです。国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針でも、部屋の配置の基本レベルとして、便所が寝室のある階にあることが示されています。

同じ指針では、玄関や浴室、食事室、脱衣室、洗面所までが寝室のある階にそろっている状態を推奨レベルとしています。部屋の広さについても、寝室の面積は内法寸法で9平方メートル以上、推奨レベルでは12平方メートル以上という目安が示されました。6畳は約9.9平方メートルなので基本レベルを満たし、8畳あれば推奨レベルに届きます。候補の和室について、トイレの位置と部屋の広さの2点を先に測っておくと、その後の相談が具体的に進みます。

畳とフローリングの選び分け

和室を寝室にすると決めたあと、多くの家族が迷うのが畳をやめるかどうかです。ここでは、畳とフローリングそれぞれの利点を見ていきます。

畳は転んだときの衝撃をやわらげる

畳を残す最大の理由は、転んだときの衝撃が小さいことにあります。畳床にはある程度の弾力があり、床に手やお尻をついたときの力を受け止めてくれます。骨がもろくなった高齢者にとって、同じ転び方でも大腿骨や手首を折るかどうかの分かれ目になりうる差です。

畳は転倒そのものを防ぐ床ではなく、転んだあとの怪我を軽くする床です。布団を敷いて寝る習慣がそのまま続けられる点も、環境を変えたくない親には見過ごせません。畳のへりでつまずく心配はありますが、へりのない琉球畳に替えれば段差を減らせます。親がまだ自分で歩けて、布団の上げ下ろしも続けられているなら、畳を残す選択には十分な根拠があると考えてよいでしょう。

フローリングは車椅子と介護ベッドを置ける

畳をフローリングに変える理由は、床の上に道具を置いて使えるようになることです。畳の上で車椅子を動かすと、細いキャスターが畳表を掘って進みにくくなり、畳もへこんで傷みます。介護ベッドの脚も同じで、四点の脚に体重が集中して畳がへこみ、ベッドがわずかに傾いてしまうでしょう。

掃除のしやすさも変わってきます。フローリングは水拭きができるので、食べこぼしや排泄の失敗があっても拭き取れますが、畳はしみ込むと落ちません。畳のへりや敷居でつまずく危険もなくなります。親が車椅子を使う見込みがある、あるいは介護ベッドを入れる予定があるなら、フローリングへの変更を前提に考えるのが現実的でしょう。滑りにくさで床材を比べたいときは、滑りにくい床材への変更もあわせて確認してみてください。

畳を一部だけ残す手もある

畳とフローリングは、部屋ごとにどちらかを選ぶしかないわけではありません。ベッドを置く側と車椅子が通る側だけをフローリングにして、残りを畳のままにする、といった分け方もできます。親が畳を手放したがらないときや、日中は畳で過ごしたいという希望があるときに取れる折衷案です。

分けるときに気をつけたいのは、境目に段差を作らないことでしょう。畳とフローリングでは厚みが違うため、そのまま並べると数センチの段差が生まれ、いちばん人が行き来する場所に新しい危険を作ってしまいます。下地の高さで調整して面をそろえるよう、業者に明確に伝えてください。置き畳を使う方法もありますが、ずれや浮き上がりが起きないか、実際に置いて確かめてから決めるほうが安心できます。

畳とフローリングの違いを、下の表にまとめました。

比べる点 フローリング
転んだときの衝撃 小さい 大きい
車椅子の通行 畳表が傷み進みにくい 通れる
介護ベッドの設置 脚がへこむ 置ける
掃除・汚れ しみ込むと落ちない 水拭きできる
つまずきやすさ へり・敷居でつまずく 段差が出にくい
布団の上げ下ろし 続けられる ベッド前提になる

和室を寝室に変える工事の中身

和室を寝室にする工事は、床の張り替えだけでは終わりません。ここでは、畳の下から建具まで、あわせて手を入れたい4か所を説明します。

畳からフローリングへの変更は厚みの差を埋める

畳をはがしてフローリングを張るとき、いちばん見落とされるのが厚みの差です。畳の厚みは55ミリから60ミリほどあるのに対し、フローリングは12ミリ前後しかありません。畳をどけてそのまま床材を張ると、40ミリを超える段差が部屋の入口に口を開けることになります。

この差は、下地を組んで高さを合わせることで埋めます。根太を追加して床の高さを持ち上げ、隣の廊下や洋室と面がそろうように仕上げる工事です。厚労省の資料でも、床材の変更のための下地の補修や根太の補強は、床材変更に付帯して必要となる工事として挙げられています。見積書に下地の項目が入っているかを確かめ、入っていなければ段差をどう処理するのかを業者に質問してください。

敷居の段差をなくす

和室と廊下の境目には、たいてい敷居が通っています。この敷居は数センチの出っ張りになっていて、すり足で歩く高齢者にはつまずきの元になり、車椅子では前輪が引っかかって越えられません。寝室にする以上、1日に何度も越える場所なので、床の張り替えと同時に手を入れておきたい場所でしょう。

処理の方法は、敷居そのものを削って低くするか、床全体の高さをそろえて敷居を撤去するかのどちらかです。厚労省が示す段差の解消の例にも、敷居を低くする工事が挙がっています。引き戸のレールが残る場合は、床に埋め込むタイプのレールや、上から吊るタイプの引き戸にすると出っ張りが消えます。家じゅうの段差をまとめて考えたい方は、段差解消の工事と費用もあわせて役立ててください。

襖を引き戸に取り替える

和室の入口が襖のままだと、寝室として使うには心もとない面が出てきます。襖は軽くて開けやすい反面、鍵がかからず、体重を預けると破れ、音も光も通してしまいます。介助のたびに開け閉めする場所なので、引き戸に取り替えておくと扱いやすくなるでしょう。

引き戸には、レールを床に埋め込むものと、上から吊るアウトセット引き戸の2種類があります。アウトセット引き戸は壁の外側にレールを付けるため、床に溝を掘らずに済み、既存の壁を大きく壊さずに設置できます。開口部を広く取れば、車椅子でも介助者と一緒に通れる幅を確保できるでしょう。厚労省の資料では、扉の取替えに開き戸から引き戸への変更が含まれ、扉の撤去やドアノブの変更、戸車の設置も対象に挙げられています。

押し入れをクローゼットに変える

和室の押し入れは、布団を上げ下ろしすることを前提にした収納です。中段があって奥行きが深く、重い布団を胸の高さまで持ち上げて奥へ押し込む動作は、腰にも肩にも負担がかかります。介護ベッドを入れて布団を使わなくなるなら、押し入れは役割を失うでしょう。

中段を外してハンガーパイプを付ければ、衣類を掛けるクローゼットに変わり、しゃがまずに服を出し入れできます。襖を折れ戸や引き戸に替えれば、開口部も広く取れます。壁の下地を補強しておくと、あとから手すりを付けたくなったときに壁を壊さずに済むでしょう。押し入れの中を空にして、何を置く場所にするかを家族で決めてから業者に伝えると、余計な工事を減らせます。

布団から介護ベッドへの切り替え

床の工事とセットで考えたいのが、寝る道具そのものです。ここでは、布団から介護ベッドへ切り替えるときに確かめたい点を説明します。

介護ベッドは立ち座りの負担を減らす

布団は床に敷くので、寝起きのたびに床から立ち上がる動作が必要になります。膝や腰が痛む親にとって、床からの立ち上がりは1日で何度も繰り返すには重すぎる動きです。介護ベッドなら、腰かけた高さから立てるので、負担がかなり軽くなります。

背上げ機能を使えば、自力で起き上がれなくなっても上体を起こせて、食事や着替えを座った姿勢でできます。高さを変えられるので、介助する家族が腰をかがめずに済む点も見逃せません。介護ベッドは要介護度によって介護保険の福祉用具貸与の対象になるため、買う前にケアマネジャーへ相談してみてください。

部屋の広さと搬入経路を先に測る

介護ベッドを入れると決めたら、置く場所と運び込む道を先に測っておきます。ベッド本体は幅が1メートル前後、長さが2メートル前後あり、置いただけで6畳間の3分の1近くを占めます。ベッドの周りには、介助する人が立てる幅と車椅子を寄せる幅が要るので、壁にぴったり付けて置くわけにはいきません。

運び込む道も確かめておく必要があります。介護ベッドは分解して運び込むのが普通ですが、それでも玄関から和室までの通路幅や、曲がり角、敷居の出っ張りが障害になることがあります。床の耐荷重も見ておきたい点で、ベッドと人の重さが四点の脚に集中するので、古い家では床の補強を求められる場合があるでしょう。搬入業者に下見してもらい、通れるかどうかを工事の前に確かめておくと、あとから慌てずに済みます。

寝室の照明とスイッチとコンセント

和室を寝室に変えるなら、電気まわりも寝る部屋の使い方に合わせて直しておきます。ここでは、照明とスイッチ、コンセントの3点を見ていきます。

スイッチは枕元と入口の両方に置く

和室の照明は、紐を引いて点ける蛍光灯のままになっている家がよくあります。紐を手探りで探す動作は、暗い中で体を起こしてバランスを崩す危険があり、寝室には向きません。入口のスイッチだけで点ける方式も、暗いまま部屋を横切ることになって同じく危ないでしょう。

寝床に入ったまま操作できるよう、枕元にもスイッチを増やして、入口と両方から点け消しできるようにします。壁のスイッチは、指1本で押せる大きなパネル型にすると、握力が落ちても扱えます。リモコンで点け消しできるシーリングライトに替える手もありますが、リモコンをなくす心配があるなら壁のスイッチのほうが確実です。ベッドを置く位置を決めてから、枕元がどこに来るかを見て取り付け場所を指定してください。

足元灯で夜のトイレまでを照らす

夜中にトイレへ立つ場面は、家の中でも転倒が起きやすい時間帯です。暗い中で目が慣れないまま歩き、寝ぼけた足でつまずくためです。天井の照明を煌々と点けると目が覚めてしまい、そのあと眠れなくなる親もいます。

足元灯を、寝室の出入口と廊下、トイレの前に点々と付けておけば、目に刺さらない明るさで道筋を照らせます。人の動きを感じて自動で点くタイプなら、スイッチを探す動作そのものが要りません。コンセントに挿すだけの製品でも足りますが、工事で埋め込むと足元に物が出っ張らずに済みます。親が実際にトイレへ歩く道を夜に歩いてみて、暗くて怖い場所に印を付けてから位置を決めるとよいでしょう。

コンセントは介護ベッドの頭側にまとめる

古い和室は、コンセントが部屋の隅に1か所か2か所しかないことがほとんどです。介護ベッドを入れると、ベッドの電源に加えて、エアマットのポンプ、加湿器、吸引器、携帯の充電など、頭側で使いたい機器が一気に増えます。延長コードを引き回すと、床を這うコードが新しいつまずきの元になりかねません。

ベッドを置く位置を決めたら、その頭側の壁にコンセントを増設しておきます。差し込み口は4口から6口ほど見ておくと、あとで機器が増えても足ります。抜き差ししやすいよう、床から40センチほどの高さに付けると、しゃがんだ姿勢を取らずに扱えるでしょう。床の張り替えで壁や床下を開けるときに配線もまとめて頼むと、工事を二度に分けずに済みます。

介護保険の住宅改修で使える部分

和室を寝室に変える工事は、その全部が介護保険の対象になるわけではありません。ここでは、対象になる部分と、なりにくい部分の線引きを見ていきます。

畳からフローリングへの変更は床材の変更にあたる

介護保険の住宅改修には、対象となる工事が6種類定められており、そのひとつが滑りの防止や移動の円滑化のための床の材料の変更です。厚生労働省の福祉用具・住宅改修に関する法令上の規程についてには、この床材の変更の具体例として、居室において畳敷から板製床材やビニル系床材へ変更することが示されています。

畳からフローリングへの張り替えは、条件が合えば住宅改修の対象として扱われうる工事です。同じ資料では、床材の変更のための下地の補修や根太の補強も、付帯して必要となる工事として認められています。厚みの差を埋める下地工事まで含めて相談できる可能性があるので、見積もりを取る段階でケアマネジャーに伝えてみてください。

敷居の段差解消と襖の取替えも対象になる

住宅改修の6種類には、段差の解消と引き戸等への扉の取替えも入っています。厚生労働省が示す段差の解消の例には敷居を低くする工事が挙がっており、和室と廊下の境目の敷居はここに当てはまります。襖から引き戸への取替えも、開き戸を引き戸に替える工事と同じ扱いで対象になりえるでしょう。

手すりの取付けも6種類のひとつで、壁の下地補強まで含まれます。支給限度基準額は要介護度にかかわらず20万円で、原則として1人あたり生涯20万円までです。自己負担は所得に応じて1割から3割となり、残りが支給されます。対象6種類と限度額は、厚生労働省が住宅改修の概要をまとめた資料で示しているので、目を通してから相談に臨むと話が早く進みます。

模様替えや老朽化の張り替えは対象外

同じ畳をはがす工事でも、目的が違えば対象から外れます。部屋を明るくしたい、和室を洋室らしくしたいといった模様替えの意図で床を替える工事や、畳が古くなったから替えるという老朽化への対応は、移動を円滑にする目的にあたらないためです。押し入れをクローゼットに変える工事も、収納の使い勝手を良くするものであって、6種類のどれにも当てはまりません。

厚生労働省の資料では、住宅の新築は住宅改修と認められず、増築で新たに居室を設ける場合も対象外とされています。対象になる工事とならない工事が同じ現場で一緒に行われるときは、対象部分を抜き出して費用を按分する扱いです。工事を頼む前に必ず事前申請が必要なので、着工してから相談することのないよう順番に気をつけてください。

注意

和室の工事が介護保険の住宅改修の対象になるかは、親の体の状態と工事の目的、住んでいる市区町村の判断で変わります。同じ畳の張り替えでも、移動を円滑にする目的なら対象になり、模様替えなら対象外です。工事は着工の前に申請する決まりなので、契約前に必ず担当のケアマネジャーと市区町村の窓口へ確かめてください。

まとめ

和室を寝室に変えるいちばんの値打ちは、2階と1階を往復していた階段を使わずに済むことにあります。1階の和室が客間として空いているなら、そこを寝室に移すだけで毎日の危険をひとつ消せます。移す前に、トイレと浴室が同じ階にあるか、部屋が9平方メートル以上あるかを測っておいてください。

畳をやめるかどうかは、転んだときの衝撃を取るか、車椅子と介護ベッドを取るかの選択です。フローリングに変えるなら、畳との厚みの差を下地で埋め、敷居の段差と襖もあわせて直します。床材の変更や段差の解消、扉の取替えは介護保険の住宅改修の対象になりえますが、模様替えや老朽化の張り替えは外れます。着工の前にケアマネジャーへ相談し、対象になる部分を確かめてから契約してください。何から手をつけるか迷っている方は、バリアフリーリフォームの進め方もあわせて確認しておくと全体像がつかめます。

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