家の中の手すりや段差ばかりを見ていると、門から玄関ドアまでの通路は後回しになりがちです。ところが親が転ぶ場所を聞いてみると、玄関前の階段や、雨で濡れたタイルの通路だったという話が少なくありません。
屋外は家の中と違って、段差の高さも数も大きく、雨や凍結、夜の暗さまで重なります。しかも通路の幅や高低差は敷地の形で決まってしまうため、家の中と同じ感覚で「スロープを付ければいい」と考えると、途中で行き詰まります。
そこで、門から玄関までのどこが危ないのか、屋外の工事は介護保険で直せるのか、スロープにはどれだけの距離が要るのか、駐車場から玄関までをどう繋ぐのかまでをまとめました。屋外に手を入れるかどうかを決める前に読んでみてください。
門から玄関までで転びやすい場所
屋外で転ぶ場所は、たいてい門扉・通路・玄関前の階段の3か所に集まります。ここでは、家の中とは違う屋外ならではの危なさを場所ごとに見ていきます。
屋外の段差は高さも数も家の中より大きい
屋外のいちばんの危なさは、段差の高さが家の中の比ではない点にあります。室内の敷居が2センチ前後なのに対して、玄関前のポーチや門から通路へ上がる段は、1段で15センチから20センチほどあるのが普通です。道路と敷地に高低差のある土地では、玄関にたどり着くまでに3段も4段も上ることになります。
しかも屋外の段は、幅も奥行きも一定でないことがよくあります。造成の都合で1段だけ高い、踏面が斜めに傾いている、といった段は、足の運びのリズムが崩れて踏み外しの引き金になりがちでしょう。まずは玄関から門まで実際に歩いてみて、どこに何センチの段がいくつあるかを紙に書き出してください。この数字が、あとで工事の手段を選ぶときの物差しになります。
雨と凍結でアプローチは滑る
屋外の通路は天気の影響をまともに受け、同じ場所が日によって別物になります。タイルや御影石は水に濡れると一気に滑りやすくなり、コケや落ち葉が乗ればさらに危険です。北側の通路や日の当たらない場所は乾きにくく、冬の朝には薄い氷が張ることもあります。
家族が晴れた昼間に見て「大丈夫そう」と判断しても、親が実際に外へ出るのは雨の日や早朝かもしれません。屋外の安全は、いちばん条件の悪い日を基準に見ないと測れません。雨の日に一度、親が使う時間帯に合わせて同じ道を歩いてみると、乾いた日には気づかなかった滑りやすい場所が見つかるでしょう。
夜は足元が見えず段を踏み外す
夜の屋外は、段差の縁が見えなくなる点でもうひとつの危なさを抱えています。高齢になると暗い場所で目が慣れるまでの時間が長くなり、明暗の差にも弱くなるため、門灯だけでは段の輪郭をつかめません。通院や外食から帰る時間は暗いことも多く、荷物を持っていれば足元はますます見えなくなります。
とくに危ないのは、明るい道路から暗いアプローチへ入る境目の1段目です。目が暗さに追いつく前に段へ足を出すことになり、つま先を引っかけやすくなります。夜に親が帰ってくる場面を思い浮かべて、車を降りてから玄関ドアを開けるまで、どこが暗いかを確かめておきましょう。
屋外の工事も介護保険の住宅改修で直せる
屋外の工事は自費だと思い込んで諦めている方が多いのですが、介護保険の住宅改修は玄関の外にも使えます。ここでは、どこまでが対象になるのか、そのルールがいつ変わったのかを説明します。
平成12年12月から玄関より外の工事も対象になった
介護保険の住宅改修は、制度が始まった当初、玄関ポーチを除いて屋外の工事を対象にしていませんでした。屋外の段差解消や床材の変更、手すりの取付けは給付の外に置かれていたのです。この扱いは告示改正で変わりました。
厚生労働省の住宅改修の対象と支給限度基準額の資料には、「平成12年12月以降、玄関から道路までの(建物と一体ではない)屋外での工事も住宅改修の支給が可能となった」と書かれています。門から玄関までの通路も、条件を満たせば介護保険で直せる工事の範囲に入ります。自費だと決めつけて見積もりも取っていないなら、担当のケアマネジャーに一度ぶつけてみてください。
対象になるのは玄関から道路までの範囲
対象が広がったといっても、屋外のどこでも工事できるわけではありません。原文が示しているのは「玄関から道路まで」であって、敷地の中を自由に直してよいという意味ではないのです。日常の出入りに使う経路から外れた部分、たとえば庭を眺めるための園路や、花壇まわりの造園は、この範囲に入らないと考えてください。
判断が割れやすいのは、駐車場から玄関までの通路や、道路との境にある門扉まわりでしょう。本人が実際にそこを通って出入りしているかどうかが物差しになるので、ケアプランや理由書に、いつ・どの経路で外出しているかを具体的に書いてもらうと通りやすくなります。どこまでを申請に含めるかは、着工前にケアマネジャーと保険者へ確認しておくと安心です。
工事の種類は6つに決まっている
屋外で対象になる工事の中身は、住宅改修の6種類の枠から選ぶ形になります。手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止や移動の円滑化のための床または通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、そしてこれらに付帯して必要となる工事、という並びです。屋外で使うのは、たいてい前の3つと付帯工事でしょう。
通路にコンクリートを打って手すりを立てる、階段の段差を小さくする、滑りにくい舗装材に貼り替える、といった工事はこの枠にあてはまります。反対に、見た目をよくするための門柱の建て替えや、通行と関係のない植栽の手入れは、6種類のどれにも入りません。支給限度基準額は1人あたり生涯20万円で、要支援と要介護の区分にかかわらず定額なので、家の中の工事と屋外の工事を合わせて何を優先するかを先に決めておく必要があります。制度の全体像はバリアフリーリフォームの進め方で確かめておきましょう。
着工前に申請しないと支給されない
住宅改修でいちばん多い失敗は、工事を終えてから申請しようとして支給を受けられないことです。この制度は、ケアマネジャー等に相談したうえで、着工前に支給申請書・住宅改修が必要な理由書・工事費見積もり書・改修後の状態がわかる写真か図を提出し、保険者の確認を受けてから施工する流れになっています。順番が逆になると、同じ工事でもお金は戻りません。
屋外の工事は業者が「すぐできますよ」と言いやすい規模なので、その場で頼んでしまう危険があります。庭や駐車場の工事のついでに手すりを付けてもらう、といった進め方もつまずきの元です。相見積もりを取る前の段階で、まずケアマネジャーへ連絡してください。
屋外の工事は「玄関から道路まで」の範囲に入るかどうかで判断が分かれ、同じ内容でも保険者によって扱いが違うことがあります。庭の園路や駐車場の一部が対象外とされる例もあるので、自己判断で着工せず、必ず着工前にケアマネジャーと市区町村の窓口へ確認してください。
アプローチの段差と屋外階段を直す工事
屋外の段差は、なくす工事だけが答えではなく、上りやすい段に作り替える工事も有力な選択肢になります。ここでは、段と階段に対して実際に打てる手を説明します。
段は高さをそろえて踏面を広げる
屋外階段でまず考えたいのは、段の高さをそろえ、足を置く踏面を広げる工事です。1段が20センチある階段は、上がるたびに膝を大きく曲げることになり、下りでは体が前へ倒れます。この20センチを2段に割って10センチずつにすると、上る力も、踏み外したときの落差も小さくなるでしょう。
踏面が狭い階段では、下りるときにかかとが段から出て、足の裏の一部でしか体を支えられません。踏面を30センチほどまで広げると、足全体を乗せて下りられます。段数が増えるぶん階段は長くなるので、玄関前にどれだけ空きがあるかを測ってから業者に相談してください。
屋外階段の手すりは両側に付ける
屋外の階段には、できるだけ両側に手すりを付けたいところです。家の中の階段と違って、屋外では壁が片側にしかない、あるいは両側とも壁がない階段が普通なので、手をかける場所がそもそもありません。片側だけに付けると、麻痺や痛みのある側で上るときに支えを使えない日が出てきます。
屋外の手すりは、雨に濡れても滑りにくく、夏に熱を持ちにくい素材を選ぶのが基本です。金属をそのまま握ると、冬は冷たく、夏は触れないほど熱くなることがあるため、樹脂で覆ったものが向きます。柱を立てる位置と手すりの高さは本人の体格と動きで変わるので、業者任せにせず、実際に上ってもらいながら決めましょう。
段差を全部なくす工事は選ばない
屋外の段差は、すべて平らにすればよいというものでもありません。玄関前の高さは、雨水が土間へ流れ込むのを防ぐために取ってあることが多く、ゼロまで下げると大雨のときに家へ水が入ります。土地が道路より低い家では、この段差が家を守っている場合すらあるのです。
現実的なのは、上れる段に作り替えたうえで、水の逃げ道を確保する組み合わせでしょう。通路に水勾配を付ける、階段の脇に側溝を通す、といった工事は住宅改修の付帯工事として一緒に頼めることもあります。段差をなくすか、上りやすくするか、雨をどう逃がすかは、現場を見た業者と本人の歩き方を並べて決めてください。玄関ドアの内側の上がり框については玄関のバリアフリーリフォームで扱っています。
屋外スロープの勾配と必要な距離
屋外スロープは万能に見えて、敷地の広さで実現できるかどうかが決まる工事です。ここでは、勾配と距離の関係と、入りきらないときの代わりの手を説明します。
スロープは緩くするほど長い距離が要る
スロープの勾配は、高低差と水平距離の比で決まります。勾配1/12とは、高さ1に対して水平に12進むという意味で、高低差45センチを1/12で上るなら、水平に5.4メートルの長さが必要です。勾配を緩くするほど安全になりますが、そのぶん敷地に長い距離を取られます。
玄関前に5メートル以上の直線が空いている家は多くありません。折り返しを付ければ距離は稼げるものの、曲がり角には車椅子が向きを変えるための平らな部分が要るため、必要な面積はさらに増えます。スロープを検討するなら、まず高低差を測り、12倍した長さが敷地に収まるかどうかを地面にメジャーを当てて確かめてみてください。
1/12という勾配は非住宅の建物向けの数値
よく見かける1/12という数字が、どこから来たものかも知っておきたいところです。国土交通省の高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準では、敷地内の通路に設ける傾斜路について、幅120センチ以上、勾配1/12以下(高さ16センチ以下の場合は1/8以下)、高さ75センチ以内ごとに踏幅150センチ以上の踊場、という数値が示されています。ただしこの標準は、不特定多数が使う店舗や公共施設といった建築物を対象にしたものです。
一戸建ての住宅にこの数値がそのまま義務づけられているわけではありません。国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の一戸建ての屋外部分では、アプローチ通路等が「歩行及び車いす利用に配慮した形状、寸法等のもの」であること、屋外階段の勾配や形状が「昇降の安全上支障のないもの」であることと書かれているだけで、勾配の数値は出てきません。1/12はあくまで公共の建物で使われている目安として、自宅でどこまで近づけるかを業者と話す材料に使いましょう。
敷地に入らないなら階段と手すりに切り替える
長さが足りないからといって、勾配のきついスロープを無理に作るのは避けてください。1/6や1/8といった急なスロープは、車椅子を押す家族の腕力では下りで止めきれず、自力でこぐ方には上れません。雨で濡れれば、杖の先も靴底も滑ります。段差が大きい家ほど、スロープより階段のほうが現実的な答えになることが多いのです。
高低差が40センチを超えて敷地に長さがないなら、上りやすい階段に作り替えて両側に手すりを付けるほうが、費用も面積も抑えられます。スロープにこだわると玄関前が工事だらけになり、それでも安全にならないという結末になりかねません。車椅子で通す前提なら、通路の幅や回転スペースまで含めて判断が要るので、車椅子対応の基準もあわせて確認してください。
可搬式スロープや段差解消機で代える
工事以外の手も選択肢に入れておくと、行き詰まりを抜けられることがあります。可搬式スロープは、必要なときだけ段に掛けて使う持ち運び式の板で、工事なしで数センチから数十センチの段差を越えられます。介護保険では福祉用具貸与の対象になるものがあり、借りて試してから判断できる点も利点でしょう。
高低差が大きく、スロープの長さがどうしても取れない場所には、段差解消機という選択肢もあります。人と車椅子を乗せたまま垂直に持ち上げる機械で、玄関前の1メートル前後の高低差にも対応できますが、電源の確保と設置スペース、それに定期的な点検が必要です。どちらも体の状態と敷地に合うかで向き不向きが分かれるので、福祉用具専門相談員に現場を見てもらってから決めてください。
段差を越える手段ごとの違いを、下の表にまとめました。
| 手段 | 必要な距離・敷地 | 向き不向き |
|---|---|---|
| 屋外スロープ(工事) | 高低差の約12倍の長さ+折り返しの平場 | 高低差が小さく前庭が広い家に向く |
| 上りやすい階段+両側手すり | 段数ぶんの奥行き(スロープより短い) | 高低差が大きく敷地が狭い家に向く |
| 可搬式スロープ(用具) | 掛ける段の前後に置き場所 | 数センチから数十センチの段を時々越える方に向く |
| 段差解消機(機械) | 本体の設置面積と電源 | 高低差が大きく長さが取れない家に向く |
舗装と照明で滑りと暗さを消す
段差を直しても、路面が滑って暗いままでは、転ぶ場所が変わるだけになります。ここでは、通路の仕上げと明かりの見直し方を説明します。
舗装は濡れた日と凍る朝を基準に選ぶ
屋外の路面は、乾いた状態でなく濡れた状態を基準に選んでください。玄関まわりでよく使われる磨いたタイルや石は、見た目が整う一方で、水膜ができると靴底のグリップが効きません。歩くのは晴れの日だけではないので、雨の日と冬の朝に耐えられるかどうかが選ぶときの物差しになります。
屋外用の防滑タイルや、洗い出し・刷毛引きで表面をざらつかせたコンクリートは、濡れても足が滑りにくくなります。落ち葉やコケが乗れば滑るのは同じなので、水はけの取り方と掃除のしやすさもあわせて業者に相談しましょう。滑り防止のための通路面の材料の変更は住宅改修の6種類に含まれるため、屋外でも申請の対象になり得ます。
照明はセンサーライトで足元を照らす
暗さの対策では、明るい照明を1つ足すより、段の際を照らす明かりを分けて置くほうが効きます。門灯だけを明るくしても、光が上から当たると段差の影が消えて、かえって縁が見えなくなるためです。段鼻や通路の脇から低い位置を照らすと、段の輪郭が影で浮かび上がります。
人が近づくと点く人感センサー付きの照明にしておけば、荷物を持っていてもスイッチを探さずに済みます。門から玄関までの距離が長い家では、途中に何か所か置いて、光の切れ目を作らないようにしてください。既存のコンセントから電源が取れない場所なら、ソーラー式の製品でも足元の目印にはなるので、まず暗い場所を1か所ずつ潰していきましょう。
駐車場から玄関までの動線
通院に車を使う家では、車を降りてから玄関に入るまでが毎日の勝負どころです。ここでは、駐車場まわりで見落とされやすい3つの点を説明します。
車の乗り降りには車の横に幅が要る
駐車場を見直すときは、車の寸法でなく、ドアを開けて乗り降りする幅で考えてください。介助が要る方や車椅子を使う方は、ドアを全開にしてから体を回して降りるため、車の真横に人の立つ場所が必要になります。国土交通省が非住宅の建築物向けに定める標準では、車椅子使用者用の駐車施設の幅を350センチ以上、床は水平としていますが、これも公共の建物などを対象にした数値です。
自宅の駐車場をこの寸法にできる家は限られるので、そのまま持ち込むのではなく、どちら側に何センチ空けられるかを実測するところから始めましょう。車を停める位置を左右どちらかへ50センチ寄せるだけで、降りる側の空きが変わることもあります。工事の前に、まず停め方を変えて試してみてください。
カーポートと庇で濡れない動線を作る
車から玄関までのわずか数メートルでも、雨に濡れれば足元は危なくなります。傘を差せば片手がふさがり、杖を持つ手や手すりをつかむ手がなくなるためです。カーポートを玄関側へ寄せて設け、屋根と玄関の庇を繋げると、傘を差さずに家へ入れます。
屋根を足すときは、雨水がどこへ落ちるかも一緒に決めてください。カーポートの端から落ちた水が通路にたまり、そこが凍って新しい危険を作ることがあります。既存の車庫を建て替えるほどの工事でなくても、停める向きを変えて玄関との距離を詰めるだけで、濡れる時間は短くできるでしょう。
門扉は引き戸に替えると開け閉めが楽になる
門扉は、片手がふさがった状態で最初に触れる場所です。手前に開く開き戸の門は、体を後ろへ下げながら引く動きになり、杖を突いた姿勢では重心が崩れます。段の上に立って開ける形になっていれば、なおさら危ないでしょう。
横に滑らせる引き戸の門扉なら、その場で体を動かさずに開けられ、車椅子でも通り抜けやすくなります。門扉そのものは、住宅改修の「引き戸等への扉の取替え」に該当するかどうかが自治体で分かれる部分なので、申請前に確認が要ります。門扉を替えるほどではないなら、開けたままにしておく、掛け金の位置を握りやすい高さへ変える、といった小さな手直しから始めてください。
まとめ
門から玄関までの屋外は、段差の高さも数も家の中を上回り、雨と凍結と暗さが重なる場所です。しかも屋外の工事は自費だと思われがちですが、平成12年12月以降は玄関から道路までの屋外の工事も介護保険の住宅改修で支給を受けられるようになりました。対象は手すりの取付けや段差の解消など6種類の枠で、着工前の申請が要ります。
スロープは、高低差の12倍ほどの長さが要るため敷地に入らないことが多く、段差が大きい家では上りやすい階段と両側の手すりのほうが現実的です。可搬式スロープや段差解消機という代わりの手もあります。滑りにくい舗装とセンサーライト、それに駐車場から玄関までの動線を足せば、毎日の出入りはかなり変わるでしょう。まずは高低差と通路幅を実測し、ケアマネジャーに相談してから業者を呼んでください。玄関ドアから内側の段差が気になるなら、玄関のバリアフリーリフォームもあわせて役立ててください。


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