バリアフリー住宅の間取り|生活動線と失敗しやすい注意点

建てる・住み替える

家を建てるときに手すりや段差のことは考えても、部屋をどこに置くかまで踏み込む方は多くありません。ところが手すりは後から足せるのに対し、寝室と便所の距離や廊下の幅は、図面が決まった時点でほぼ動かせなくなります。

歳を重ねて歩きが不安になったとき、負担になるのは段差そのものより「そこまでの移動」です。夜中に何度もトイレへ通う距離、浴室までの曲がり角の数、車椅子で通れない廊下の幅。どれも間取りの段階でしか手を打てません。

そこで、生活動線のつくり方と、廊下や出入口の幅の目安、引き戸と壁の扱い、そして施主が踏みやすい失敗の型をまとめました。これから図面を詰めていく方は、打ち合わせの前に目を通しておいてください。

バリアフリー住宅の間取りが決めるもの

間取りは、家が建ったあとの暮らしやすさをそのまま左右します。ここでは、プランを考える前に押さえたい前提を見ていきます。

間取りは後から直しにくい部分が多い

バリアフリーの工夫には、後から足せるものと、建ててしまうと動かせないものがあります。手すりの追加や滑りにくい床材への張り替え、段差解消のスロープなどは、住み始めてからでも工事できるでしょう。これに対して部屋の位置関係、廊下の幅、開口部の大きさは、柱や壁の位置に縛られるため、あとで変えようとすると大がかりな工事になります。

つまり、住宅改修で拾える範囲と、間取りでしか拾えない範囲は最初から分かれているわけです。予算に限りがあるなら、後から足せるものは後回しにして、動かせない部分にお金と検討時間を先に割り当ててください。図面の段階で「この壁は将来も残るか」を一つずつ確かめておくと、判断がぶれません。

動線の長さが毎日の負担を決める

暮らしのなかで体力を削るのは、一回きりの大きな段差より、毎日繰り返す移動の積み重ねです。夜間の排泄は一晩に何度も起こり、入浴や食事も毎日続きます。寝室から便所まで10メートル歩く家と、3メートルで着く家では、一年分の移動量がまるで違ってくるはずです。

歩行が不安定になるほど、この差は転倒の危険にも直結します。距離が長ければ途中で支えを失う場面が増え、疲れて足も上がらなくなるからです。廊下の途中に手をかけられる場所がないまま10メートル歩くのと、3メートルで便所にたどり着くのとでは、夜中に転ぶ確率がまるで変わってきます。

図面を見るときは、部屋の広さや見栄えより先に、寝室を起点にした移動の線を指でなぞってみるとよいでしょう。便所へ、浴室へ、食卓へ、玄関へ。この4本の線がどれも短く収まっていれば、間取りの骨格はできています。

幅と広さは介助を見込んで決める

いま元気に歩けていても、間取りは介助が必要になった時点を見込んで決めておきたいところです。国土交通省の住宅性能表示制度ガイドでは、高齢者等配慮対策等級の評価が「移動時の安全性」と「介助の容易性」という2つの目標で組み立てられており、通路や出入口の幅、浴室・寝室・便所の広さは介助の容易性の側で評価されると示されています。

言い換えると、幅と広さは本人が歩けるかどうかだけでは決まらず、誰かが横につく場面まで含めて決まるということです。車椅子で通るのか、家族が体を支えて並んで歩くのか、いずれ介助用車椅子を使うのか。想定する場面を家族で言葉にしてから、担当の建築士に伝えてください。

生活動線のつくり方

動線とは、家のなかで人が動く道すじのことです。ここでは、バリアフリー住宅で優先して短くしたい動線を順に挙げます。

寝室から便所は短く直線でつなぐ

いちばん優先したいのは、寝室と便所を結ぶ道すじです。夜間は照明が暗く、寝起きで足元もおぼつかないため、家のなかで転びやすい時間帯にあたります。そこへ廊下の折れ曲がりや家具の角が加わると、危険がそのまま増えていきます。

寝室の扉を開けたら便所の入口が見える、くらいの近さと分かりやすさを狙ってください。曲がり角が一つ増えるたびに、体の向きを変える動作と、支えを持ち替える場面が生まれます。どうしても離れる間取りになるなら、寝室内にポータブルトイレを置けるスペースを空けておくか、寝室の隣を将来の便所に転用できる部屋にしておく手もあります。図面上で寝室と便所を線で結び、まっすぐ引けるかどうかを確かめてみましょう。

水回りは寝室のそばにまとめる

便所の次に近づけたいのが、浴室と脱衣室、洗面所です。入浴は服を脱いだ状態で移動する場面があり、体が冷えたり足元が濡れたりと、条件が重なります。脱衣室から浴室、浴室から寝室までの距離が長いと、その分だけ体が冷え、疲れも増していくでしょう。

水回りを一か所にまとめると、配管が短く済んで工事費も抑えられ、将来の改修もしやすくなります。ただし、便所と浴室をまとめようとしてユニットバスの中にすべて入れてしまうと、介助する家族が入る余地がありません。「まとめる」のは配置のことで、一室に押し込むことではないと考えて、それぞれの広さは別々に確保してください。

玄関から駐車場までを段差なくつなぐ

家のなかだけを平らにしても、外へ出られなければ暮らしは狭くなります。通院や買い物では、駐車場に停めた車から玄関まで、そして玄関から寝室までが一本の道すじになります。この途中に階段や急な傾斜が挟まると、車椅子や歩行器では通れません。

駐車場の位置は玄関のすぐそばに取り、途中の段差はスロープか緩い傾斜で吸収しておきましょう。国土交通省の指針も玄関の出入口については、くつずりと玄関の外側の高低差を20ミリ以下、くつずりと玄関土間の高低差を5ミリ以下とする方法を示しています。玄関の中と外を別々に考えず、車のドアを開けた瞬間から寝室までを一続きで描いてください。

夜間の移動は明かりと手すりで支える

道すじを短くしたら、その道すじが夜でも安全かを確かめます。夜間は視界が悪く、寝ぼけた状態で歩くため、昼間なら気づく家具や敷居に足を取られます。廊下の照明スイッチが遠い位置にあると、暗いまま歩き出すことにもなりかねません。

寝室から便所までの経路には、人が近づくと点く足元灯を入れておくと、スイッチを探さずに済みます。壁には手すりを付けるか、少なくとも付けられる下地を入れておいてください。国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針でも、便所・浴室・玄関・脱衣所への手すりの設置が挙げられているので、寝室からその手前までをどうつなぐかは施主の側で足しておくとよいでしょう。

廊下と開口部の幅の目安

幅は、車椅子や介助が必要になったときに通れるかどうかを分ける数字です。ここでは、指針が示す寸法の目安を見ていきます。

通路の有効幅は780ミリが基本レベル

廊下の幅は、壁から壁までの見た目の寸法ではなく、実際に通れる有効幅で考えます。「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」は、日常生活空間内の通路の有効な幅員を780ミリ(柱等の箇所は750ミリ)以上とする水準を基本レベルとして示しています。同じ指針の推奨レベルでは、850ミリ(柱等の箇所は800ミリ)以上とされ、介助用車椅子を想定した場面ではこちらが目安になります。

木造住宅でよくある3尺モジュールの廊下は、壁の仕上がりを引くと有効幅が780ミリ前後になり、基本レベルにぎりぎり届く程度です。推奨レベルまで広げたいなら、廊下部分だけ半間ずらすか、モジュールそのものを変える相談が要ります。工事費に響く判断なので、図面が固まる前に担当の建築士へ「有効幅で何ミリ取れるか」と数字で聞いてください。

出入口の幅は750ミリ以上を確保する

廊下が広くても、部屋の入口で詰まれば通れません。指針は、日常生活空間内の出入口の幅員を750ミリ以上(浴室の出入口は600ミリ以上)とする水準を基本レベルとし、推奨レベルでは800ミリ以上としています。この幅は、開き戸なら建具の厚み、引き戸なら引き残しを差し引いた、通行上有効な幅で測る点に気をつけてください。

つまりカタログ上の建具の寸法と、実際に体が通れる幅は別物ということです。引き戸を選んだのに引き残しの分で有効幅が足りなくなる例は珍しくありません。打ち合わせでは建具の呼び寸法ではなく、有効幅の数字を図面に書き込んでもらうと、あとで測って落胆せずに済みます。

曲がり角と方向転換は幅だけでは足りない

まっすぐ通れる幅があっても、曲がれるとは限りません。車椅子は前後に長いため、直角に曲がる場面では、進行方向の幅と曲がった先の幅の両方が要ります。便所や脱衣室の入口のように、狭い廊下から直角に入る位置は、幅の数字が足りていても実際には入れないことがあるでしょう。

指針が定めているのは通路や出入口の幅員までなので、曲がり角で回れるかどうかは施主と建築士で確かめる必要があります。方向転換する場所には家具を置かないゆとりを見込んでください。図面に実際の車椅子の大きさの紙を当てて回してみると、通れるかどうかが打ち合わせの場ではっきりします。車椅子を前提に寸法を詰めたい方は、車椅子で暮らす家の寸法もあわせて確認しておくとよいでしょう。

指針が示す寸法の目安を、下の表にまとめました。

部位 基本レベル 推奨レベル
通路の有効幅員 780ミリ以上(柱等 750ミリ) 850ミリ以上(柱等 800ミリ)
出入口の幅員 750ミリ以上(浴室 600ミリ) 800ミリ以上
便所の広さ 長辺 内法1,300ミリ以上、または便器と壁の距離500ミリ以上 短辺 内法1,300ミリ以上 等
浴室(戸建て) 短辺 内法1,300ミリ以上・面積2.0平方メートル以上 短辺 内法1,400ミリ以上・面積2.5平方メートル以上

建具と壁まわりの決めごと

扉の種類と壁の使い方は、間取りと同時に決まってしまう部分です。ここでは、図面の段階で指定しておきたい3点を挙げます。

引き戸は体を引かずに開けられる

バリアフリー住宅で扉を選ぶなら、まず引き戸を候補にしてください。開き戸は、手前に引くときに体を後ろへ下げる動作が要り、杖や歩行器を使っていると、その半歩が難しくなります。開いた扉の分だけ手前に空きも要るため、狭い廊下では扉と壁に挟まれる場面も出てきます。

引き戸は横に滑らせるだけなので、体の位置を変えずに開けられ、扉の前で待つ空きも要りません。開けたままにしておける点も、介助する家族が両手をふさいでいるときには効いてきます。便所や浴室のように介助が入りやすい場所から順に、引き戸へ振り分けていきましょう。

戸袋のある壁には手すりを付けられない

引き戸を選ぶと、その代わりに壁が一枚使えなくなります。引き込み式の引き戸は、開けた扉が壁の中の戸袋に収まる仕組みのため、その壁には下地を入れられず、手すりも棚も付けられません。便所の入口を引き戸にしたら、入ってすぐの壁が戸袋で、手すりを付ける場所がなかったという話はよくあります。

上吊りタイプにして扉を壁の外側に走らせる、引き込む向きを手すりの要らない側へ変える、といった逃げ道はあります。どちらにしても、扉の種類を決める前に「この壁のどこに手すりを付けるか」を先に決めておくのが順番です。図面に手すりの位置を書き込んでから建具を割り付けると、この行き違いは防げます。

スイッチとコンセントは座った姿勢に合わせる

高さの指定は、間取りと同じ打ち合わせで決めてしまいます。一般的な住宅では、スイッチは床から120センチ前後、コンセントは25センチ前後に付きますが、この高さは立って歩ける人に合わせた寸法です。車椅子に座った姿勢では、スイッチは手が届きにくく、低いコンセントは前かがみにならないと差せません。

車椅子や座位を見込むなら、スイッチを100センチ前後まで下げ、コンセントを40センチ前後まで上げると届く範囲に収まります。腰をかがめずに済む分、抜き差しのたびにふらつく危険も減ります。ベッドの脇や便所の入口など、実際に手を伸ばす位置を家族で確かめてから、電気図面に落としてもらってください。

ワンフロアで暮らせる間取り

階段は、家のなかでもっとも転落の危険が大きい場所です。ここでは、生活の場を一つの階に収める考え方を見ていきます。

便所は寝室と同じ階に置く

二階建てを建てるなら、最低限の線として便所の位置を先に決めます。指針は部屋の配置について、日常生活空間のうち便所が特定寝室(高齢者の利用を想定する寝室)の存する階にあることを基本レベルとしています。寝るのが二階で便所が一階という間取りだと、夜間の排泄のたびに階段を下りることになるからです。

寝室を一階に置く前提なら、一階に便所があれば基本レベルには届きます。二階を寝室にする計画でも、将来一階の部屋を寝室へ移せるよう、一階に6畳程度の部屋と便所を隣り合わせで残しておくと、住み替えずに済みます。図面を見て「寝る場所と便所が同じ階か」を最初に確かめてください。

玄関と浴室まで同じ階にそろえる

さらに踏み込むなら、生活の一式を同じ階に収めます。指針の推奨レベルは、日常生活空間のうち玄関・便所・浴室・食事室と、脱衣室・洗面所(ある場合)が特定寝室の存する階にあることとしています。ここまでそろうと、階段を使わずに一日を過ごせるため、歩行が不安定になっても暮らしが縮みません。

ワンフロアで完結させる手段として分かりやすいのが平屋ですが、二階建てでも一階に生活の一式を置き、二階を来客用や物置に回せば同じ状態をつくれます。土地の広さや予算で選べる形は変わってくるので、両方を並べて比べるとよいでしょう。段差ゼロを平屋で狙う考え方は、バリアフリー平屋の価格と間取りで詳しく見ていけます。

間取りで失敗しやすい注意点

寸法を守った家でも、住み始めてから使いにくさが出ることがあります。ここでは、施主が踏みやすい失敗の型を挙げます。

広すぎる間取りは移動距離が延びる

バリアフリーというと広さを求めがちですが、広さは移動距離と引き換えです。廊下を広く取り、部屋を大きくし、玄関ホールをゆったり構えるほど、便所までの距離も、台所から食卓までの距離も延びていきます。歩行が不安定な方にとって、その延びた分はそのまま疲れと転倒の危険に変わります。

幅は通れるだけ広く、距離は届くだけ短く。これが間取りで狙う形です。広さが要るのは、車椅子が回る場所、介助者が横に立つ場所、将来ベッドを置く場所に限られます。図面を渡されたら「どこを広げ、どこを詰めたのか」を建築士に説明してもらい、ただ全体を大きくしただけの案は突き返してください。

手すりを付ける壁が残っていない

明るく開放的な間取りを追うと、壁そのものが減っていきます。廊下を減らして部屋をつなげ、開口部を大きく取り、収納を壁一面に据えると、手を伸ばして支えにできる壁が家から消えます。手すりは後から足せる工事だと言われますが、それは付ける壁と下地があってこその話です。

寝室から便所、玄関から居間といった主要な道すじについては、片側に手すりを付けられる壁を連続で残しておきましょう。いま付けないとしても、下地の合板を入れておく費用はわずかです。図面に手すりを引く線を仮に書いてみて、途中で線が途切れる箇所があれば、そこが将来困る場所になります。

便所の介助スペースが足りない

便所は、扉から便器までの動線と、介助者の立つ位置の両方が要る場所です。指針は日常生活空間内の便所について、長辺が内法寸法で1,300ミリ以上であること、または便器の前方か側方で便器と壁の距離が500ミリ以上であることのいずれかを満たす水準を基本レベルとしています。一般的な0.5坪の便所は長辺が1,200ミリ前後で、この数字に届きません。

介助を見込むなら、便所の広さは早い段階で1坪へ寄せておくか、隣の収納を将来つぶして広げられる配置にしておく手もあるでしょう。便器の向きも、横から介助できる側に空きを取れるかで決まります。担当の建築士に「介助者が入る位置はどこか」と図面上で指を差してもらってください。

段差をゼロにすると水と雨が入り込む

段差解消を突き詰めると、水の逃げ場がなくなる場面が出てきます。浴室と脱衣室の間を完全に平らにすればお湯が脱衣室へ流れ出し、玄関の内外を平らにすれば雨水が土間へ入り込むでしょう。バルコニーの掃き出し窓も同じで、床面をそろえるほど雨仕舞いが難しくなります。

指針が段差のない床としながら、玄関のくつずりで20ミリ以下、浴室の出入口で20ミリ以下の単純段差を例外として認めているのも、この事情によるものです。段差をなくした床は、排水溝やグレーチング、水勾配、庇の張り出しといった手当てとセットで初めて成り立ちます。「段差ゼロにしてください」とだけ伝えるのではなく、水をどこへ逃がすのかまで担当の建築士と詰めてください。

注意

ここで挙げた寸法は、国土交通省の指針が示す一般的な目安です。実際に必要な幅や広さは、使う車椅子の大きさ、体格、麻痺の有無、介助する家族の人数によって変わります。図面を確定する前に、担当の建築士と、必要ならケアマネジャーや福祉用具専門相談員にも見てもらってください。

まとめ

バリアフリー住宅の間取りで先に決めたいのは、寝室から便所までの道すじです。短く直線でつなぎ、水回りをそのそばにまとめ、玄関から駐車場までを段差なく続けると、毎日の移動が軽くなります。幅は、通路の有効幅員780ミリ、出入口750ミリが指針の基本レベルで、介助を見込むなら850ミリと800ミリの推奨レベルが目安になります。

扉は引き戸を軸にしつつ、戸袋で手すりの壁を失わないよう、手すりの位置を先に決めておきましょう。失敗しやすいのは、広げすぎて移動が延びる、支えにする壁が消える、便所に介助者が入れない、段差ゼロで水が逃げないという4つです。どれも図面の段階でしか直せないので、打ち合わせのたびに寝室を起点に線をなぞって確かめてください。家づくりそのものから見直したい方は、バリアフリー住宅とはもあわせて役立ててください。

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