バリアフリー住宅とは|特徴・メリット・デメリットと建てる前に決めること

建てる・住み替える

親の介護が近づいたり、自分の膝が痛みはじめたりすると、今の家にこのまま住み続けられるのかが気になってきます。手すりを付ける、段差をなくすといった工事を調べるうちに、いっそ家そのものを建て直したほうが早いのではないかと考える方も少なくありません。

そこで出てくるのがバリアフリー住宅という言葉です。ただ、住宅会社のカタログには段差ゼロや広い廊下といった言葉が並ぶばかりで、どこまでやれば十分なのか、費用や面積にどんな跳ね返りがあるのかまでは分かりません。良いことばかり書かれていると、かえって決めにくくなります。

バリアフリー住宅とリフォームの違いから始めて、特徴とメリット、正直なデメリット、そして建てる前に決めておきたいことまでを順にまとめました。新築や住み替えで根本から手を打とうと考えている方は、判断の手がかりとして役立ててください。

バリアフリー住宅とリフォームの違い

バリアフリー住宅は、手すりや段差解消を後から足した家とは出発点が違います。ここでは、両者がどこで分かれるのかを説明します。

バリアフリー住宅は建てる前に身体の変化を見込む

バリアフリー住宅とは、住む方の身体がこの先どう変わるかを見込んだうえで、間取りや寸法を決めて建てた家を指します。今は元気に歩けていても、10年後には杖を使い、20年後には車椅子が必要になるかもしれません。その将来を最初から計算に入れて、廊下の幅や部屋の並びを決めておくのがバリアフリー住宅の考え方です。

ここが後付けの工事といちばん違う点です。壁の位置や柱の場所は、建ててしまうと簡単には動かせません。逆にいえば、建てる前なら紙の上で自由に動かせます。バリアフリー住宅は、動かせなくなる前に動かしておく家だと考えると分かりやすいでしょう。まずは「誰が、いつ、どんな状態でこの家に住んでいるか」を10年単位で書き出してみてください。

リフォームは今ある不便を後から取り除く

バリアフリーリフォームは、すでに建っている家に出てきた不便を、その都度取り除いていく工事です。浴室で立ち上がれなくなったから手すりを付ける、玄関の上がりかまちでつまずいたからスロープを足す、という順番で進みます。困りごとが起きてから動くぶん、費用も期間も小さく収まるでしょう。

ただし、家の骨組みは変えられないので、直せる範囲には限りがあります。廊下が狭ければ手すりを付けるほど通れる幅は減り、寝室が2階なら階段の上り下りは残ります。困りごとが出るたびに工事を重ねると、費用の合計が新築との差を埋めてしまうこともあるものです。今の家でどこまで直せるかは、まず現地を見てもらってから判断してください。

国の指針が住宅の配慮事項を示している

どこまでやればバリアフリー住宅と呼べるのかは、住宅会社ごとに言うことが違います。判断のよりどころになるのが、国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針です。加齢に伴って心身の機能が低下しても住み続けられるよう、住宅の配慮事項が項目ごとに書かれています。

この指針では、段差や幅員、手すり、階段の勾配などについて、基本レベルと推奨レベルの2段階で仕様が示されました。カタログの謳い文句を読むときも、この指針のどのレベルを満たしているのかという物差しを持っておくと、比べやすくなります。住宅会社と話す前に、指針の項目名だけでも目を通しておくとよいでしょう。

バリアフリー住宅の主な特徴

バリアフリー住宅の中身は、大きく分けて4つの点に表れます。ここでは、指針が示す仕様を手がかりに、それぞれを見ていきます。

段差をなくして毎日の動線をつなぐ

いちばん分かりやすい特徴が、床の段差をなくすことです。国土交通省の指針では、玄関や寝室、便所、浴室、食事室とそれらを結ぶ経路を日常生活空間と呼び、その範囲の床を段差のない構造にすることが基本レベルとされています。段差のない構造とは完全な平坦だけを指すのではなく、5mm以下の段差までを含む扱いです。

高齢者のつまずきは、大きな階段よりもわずかな床の高低差で起きます。和室の入口、洗面所の床、廊下と居室のつなぎ目といった数センチの段差が転倒のもとになります。玄関の上がりかまちや浴室の出入口のように、指針でも例外として一定の高さが認められる箇所はあるので、どこをゼロにしてどこを許すのかを図面の段階で1か所ずつ確かめておきましょう。

廊下と出入口は車椅子が通る幅を取る

廊下と出入口の幅も、バリアフリー住宅を分ける特徴です。国土交通省の指針の基本レベルでは、日常生活空間内の通路の有効幅員を780mm以上(柱などの箇所は750mm以上)、出入口の幅員を750mm以上(浴室は600mm以上)としています。推奨レベルでは、通路が850mm以上、出入口が800mm以上へと広がる水準です。

数字だけ見ると小さな差ですが、介助用車椅子で曲がる場面では、この数十ミリが通れるかどうかを分けます。廊下は直線だけでなく、角を曲がる部分と扉の前で人が入れ替わる部分に余裕が要ります。車椅子を前提にするなら寸法の取り方がさらに細かくなるので、車椅子で暮らす家の設計と寸法もあわせて確認してから間取りを決めてください。

水回りは寝室と同じ階にまとめる

部屋の並べ方も、バリアフリー住宅を分ける特徴です。指針の基本レベルでは、便所が寝室のある階にあることが求められ、推奨レベルでは玄関、便所、浴室、食事室、脱衣室、洗面所までが寝室と同じ階にそろうこととされています。夜中にトイレへ行くたびに階段を下りる家では、どれだけ手すりを付けても危険が残るためです。

歩く距離が短いほど、転ぶ機会も、介助する家族の手間も減ります。寝室からトイレまで何歩か、浴室までは何歩かを、図面に線を引いて数えてみてください。部屋の並びで迷ったときは、バリアフリー住宅の間取りと動線で失敗しやすい型を先に見ておくと、打ち合わせが早く進みます。

間仕切りと余白で将来の変化を受ける

見落とされやすいのが、後から変えられる余白を残しておくことです。将来、介護ベッドを入れる、寝室を1階に移す、浴室に介助者がもう1人立つ、といった変化は前もって時期を読めません。そこで、抜ける間仕切り壁にしておく、下地だけ入れて手すりは後で付ける、水回りの配管を動かせる位置に通しておく、といった仕込みが効いてきます。

とくに壁の下地は、後から入れようとすると壁を壊すことになり、費用が跳ね上がってしまうでしょう。今は手すりが要らない場所でも、下地を入れておくだけなら費用はわずかで済みます。図面の打ち合わせでは「今つけるもの」と「後でつけられるようにしておくもの」を分けて、住宅会社に一覧で出してもらうとよいでしょう。

バリアフリー住宅のメリット

バリアフリー住宅を建てる利点は、高齢になってからだけに現れるものではありません。ここでは、暮らしに返ってくる3つの利点を挙げます。

転倒による大けがを防げる

いちばん大きな利点は、家の中で転ぶ危険を減らせることです。高齢者の転倒は骨折につながりやすく、そこから入院、筋力の低下、寝たきりという流れをたどってしまうことがあります。段差をなくし、廊下に手すりを回し、階段の勾配をゆるくした家では、転ぶきっかけそのものが減るはずです。

後から工事で直すと、廊下の幅や階段の位置は元のままなので、防げる範囲に限りが出ます。建てる段階であれば、階段の勾配や踏面の寸法まで指針の水準に合わせられるのが強みです。今の家で危ないと感じる場所を書き出し、それが工事で消せるのか、建て替えでないと消せないのかを、住宅会社と一つずつ突き合わせてみてください。

介護が始まっても住み替えずに済む

介護が必要になったときに、住み慣れた家にとどまれる点も見逃せません。今の家で暮らせなくなる理由は、身体の状態そのものよりも、階段が上れない、浴槽をまたげない、トイレに車椅子が入らないといった家の側の事情であることが多くあります。家がその条件を先に満たしていれば、施設や子の家への移動を急がずに済むでしょう。

住み替えには、費用だけでなく、近所付き合いや通院先を手放す負担もついてきます。在宅で暮らし続けたいという希望があるなら、その希望を叶える条件を家に持たせておくことが早道です。家族で「どこまでの状態なら家で暮らすか」を話し、その線に届く家かどうかを図面で確かめておきましょう。

子育て世代や来客にも使いやすい

バリアフリー住宅の使いやすさは、高齢者だけのものではありません。段差のない床はベビーカーや掃除機を押しやすく、広い廊下は洗濯物を抱えたまま通れます。小さな子どもの転倒も減り、けがをして松葉づえになった家族や、車椅子で訪ねてくる知人も家に入れます。

高齢者向けの家という言い方をすると、まだ先の話に聞こえてしまうでしょう。実際には、家族の誰かが一時的に動きにくくなる場面はいつでも起こるものです。妊娠中の家族が階段を避けたい時期もあれば、腰を痛めて数か月だけ立ち座りがつらくなる時期もあります。今の家族構成で使いやすいかどうかも判断の材料に入れて、10年後だけを見て決めないようにしてください。

バリアフリー住宅のデメリット

利点が並ぶ一方で、バリアフリー住宅には引き受けなければならない負担もあります。ここでは、住宅会社が積極的には言わない4つの負担を挙げます。

建築費が上がる

まず費用です。段差のない床、広い廊下、引き戸への変更、壁の下地補強、階段の勾配をゆるくするための面積といった項目は、どれも一般的な仕様より手間と材料が増えます。ホームエレベーターや介助用の広い浴室まで入れると、上乗せはさらに大きくなるでしょう。

上乗せの幅は、どの水準まで狙うかで大きく変わります。指針の基本レベルに合わせるのか、推奨レベルまで踏み込むのかで、必要な面積も仕様も違ってくるためです。予算の見当をつけたい方は、バリアフリー新築の費用相場で内訳ごとの目安を見てから、住宅会社に見積もりを頼んでください。

広い床面積が必要になる

面積の問題も避けて通れません。廊下を780mmから850mmへ広げ、トイレの長辺を1,300mm以上とり、浴室に介助者の立つ場所を足していくと、そのぶん床面積が増えます。同じ延床面積なら、居室が削られるか、収納が減るかのどちらかを選ぶことになるでしょう。

都市部の狭い敷地では、この面積が最大の壁になります。1階に寝室と水回りをまとめようとすると、平屋に近い形が必要になり、敷地に収まらないこともあるものです。土地の広さに不安があるなら、バリアフリー住宅と平屋の相性を先に読んで、階を分けない選択肢が成り立つかどうかを確かめておきましょう。

若いうちは使わない設備が出てくる

建てた時点では出番のない設備が出てくる点も、正直に見ておきたいところです。50代で建てた家のホームエレベーターや介助用の浴室が、実際に使われるのは20年先かもしれません。使わないまま点検費や電気代がかかり、いざ使う頃には部品が手に入らないという話もあります。

ここで効いてくるのが、今つけるものと後で足せるようにしておくものを分ける考え方です。エレベーターなら、設置せずに上下階へ吹き抜けの空間だけ確保しておく手もあります。設備ごとに「今要るか、場所だけ空けておけばよいか」を仕分けして、初期費用を抑えてください。

作り込みすぎるとかえって暮らしにくい

やりすぎの弊害も知っておいてください。手すりを廊下じゅうに回すと荷物を持って歩きにくくなり、床をすべて平らにすると玄関の履き替えが落ち着かなくなります。支えを増やしすぎた家では、自分の脚や手を使う場面が減り、かえって身体の力が落ちてしまうこともあります。

バリアフリーは、多いほど良いというものではありません。今の身体の状態に対して過不足のない水準を選んでください。どこまでやるか迷ったら、住宅会社だけでなく、理学療法士や福祉住環境コーディネーターなど身体の側を見る専門職にも図面を見てもらうと、加減の判断がつきやすくなります。

利点と負担を並べると、次のようになります。

見る点 メリット デメリット
安全 転倒と骨折の危険が減る 支えが多すぎると身体の力が落ちる
暮らし 介護が始まっても住み続けられる 若いうちは使わない設備が出る
お金 住み替えや後からの工事を抑えられる 建築費が一般的な仕様より上がる
面積 車椅子でも通れる余裕が生まれる 居室や収納を削ることになる

新築とリフォームの選び方

根本から直したい場合でも、新築だけが答えではありません。ここでは、新築とリフォームのどちらを選ぶかの分かれ目を説明します。

新築は動線ごと作り直せる

新築の強みは、部屋の並びと寸法を白紙から決められる点です。寝室と便所と浴室を1階にそろえ、廊下を850mmで通し、階段の勾配をゆるく取る、といった条件を同時に満たせます。今の家では骨組みに阻まれて叶わない条件も、新築なら図面の上で組み替えられるのが自由度の高さです。

反面、費用と期間の負担は最も重く、仮住まいも必要になります。土地から探す場合は、その手間と費用も乗ってきます。建て替えなら、解体費と工事中の仮住まいの家賃も別に見ておくことになるでしょう。今の家の間取りが根本から合っていないと感じるなら新築が候補に入りますが、まずは今の家でどこまで直せるかを聞いたうえで比べてください。

リフォームは費用と工期を抑えられる

リフォームの強みは、負担の軽さです。手すりの取り付けや段差の解消、引き戸への交換であれば、数日から数週間で終わり、住みながら工事できることもあります。介護保険の住宅改修や自治体の補助を使えば、自己負担はさらに軽くなります。

ただし、廊下の幅や階を越える移動といった骨組みに関わる部分は動かせません。部分的な工事を重ねても、寝室が2階のままなら根本の問題は残ったままです。介護保険で使える範囲から手を付けたい方は、介護保険の住宅改修の全体像で対象になる工事を確かめてから、業者に相談してください。

比べる点 新築 リフォーム
費用 数千万円規模 数万円から数百万円
期間 半年から1年ほど 数日から数週間
直せる範囲 間取りと動線ごと 骨組みを残した範囲
公的な支援 補助金・減税が中心 介護保険の住宅改修も使える
住みながら できない できる場合が多い

建てる前に決めること

バリアフリー住宅は、決める順番を間違えると費用も面積もふくらみます。ここでは、住宅会社と話し始める前に家族で決めておきたい4つを挙げます。

誰の身体に合わせるかを決める

この家を誰の身体に合わせるかは、間取りを描き始める前に決めておきたい一点です。今すぐ介助が要る親に合わせるのか、20年後の自分たちに合わせるのかで、必要な寸法も設備も変わります。両方を同時に満たそうとすると、面積も費用も一気にふくらみます。

同居する家族それぞれについて、今の状態と、想定される変化を書き出してみてください。歩けるか、杖か、車椅子か、介助が要るか、という段階で分けると住宅会社にも伝わります。この一枚があるかないかで、打ち合わせの精度が大きく変わってくるので、図面を頼む前に用意しておきましょう。

目標にする等級をそろえる

目標にする等級は、住宅会社と話し始める前に家族でそろえておいてください。住宅性能表示制度には高齢者等配慮対策等級(専用部分)という項目があり、住宅性能評価・表示協会の説明では、移動時の安全性と介助の容易性を組み合わせて等級1から5までで表されます。等級が上がるほど、通路や出入口の幅、浴室や便所の広さに求められる水準も高くなるのが特徴です。

段差ゼロや広い廊下といった言葉で話すと、住宅会社ごとに解釈がずれます。等級という共通の物差しで「等級4を狙う」と言えば、条件が具体的にそろいます。複数の会社に見積もりを頼むときは、同じ等級を指定して比べると、金額の差の中身が見えてくるでしょう。

注意

この記事で挙げた寸法は、国土交通省の指針が示す目安であって、すべての方に当てはまる数字ではありません。必要な幅や広さは、使う車椅子の型や介助の仕方、身体の状態によって変わります。図面を決める前に、理学療法士や福祉住環境コーディネーター、住宅会社の担当者に、実際の身体の状態を見せたうえで確かめてください。

予算の上限と優先順位を決める

予算の上限と優先順位も、打ち合わせに入る前に決めておいてください。バリアフリーの仕様は足せばいくらでも足せるので、上限を先に決めておかないと、打ち合わせのたびに金額が増えていきます。総額の上限と、そのうちバリアフリー関係にいくらまで割くかを、最初に紙に書いておいてください。

そのうえで、外せない項目と、後回しにできる項目に仕分けます。段差の解消や廊下の幅、水回りの配置は建ててからでは動かせないので優先度が高く、手すりや設備は後からでも足せるでしょう。減税や補助金で戻る分も含めて、住宅会社に総額の見通しを出してもらうと判断しやすくなります。

そもそも建てるかどうかを決める

そもそも建てるかどうかも、一度立ち止まって疑ってみてください。今の家を直す、中古を買って直す、賃貸に移る、施設を選ぶという道もあり、新築が最も費用のかかる選択肢です。年齢や資金の状況によっては、建てたあとの返済が生活を圧迫することもあります。

判断の材料は、あと何年その家で暮らすか、その間に必要な費用はいくらか、家族が近くにいるか、という3点です。80歳を超えてから住宅ローンを組める先は限られ、中古を買って直すほうが総額で安く収まる場合もあります。数字を並べると、建てるという結論が変わることもあるものです。急いで住宅会社を回る前に、家族で一度この3点を突き合わせてから動き出してください。

まとめ

バリアフリー住宅とは、手すりや段差解消を後から足した家ではなく、将来の身体の変化を見込んで間取りと寸法を決めた家を指します。特徴は、段差をなくすこと、廊下と出入口に車椅子が通る幅を取ること、水回りを寝室と同じ階にそろえること、そして後から変えられる余白を残すことの4点です。国土交通省の指針は、通路780mm以上、出入口750mm以上を基本レベルとし、推奨レベルではさらに広い寸法を示しています。

その代わりに、建築費が上がり、広い床面積が要り、若いうちは使わない設備が出て、作り込みすぎると暮らしにくくなるという負担もついてきます。建てる前には、誰の身体に合わせるか、どの等級を狙うか、予算の上限をいくらにするか、そもそも建てるかどうかの4つを家族で決めておいてください。建てる以外の道も含めて比べたい方は、老後の住まいの選び方もあわせて役立ててください。

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