バリアフリー新築の費用相場|追加でかかる部分と予算の立て方

建てる・住み替える

老後まで住み続けられる家を新築で建てたいと考えたとき、まず気になるのは「普通に建てるより、いくら高くつくのか」という点でしょう。ところが調べても、上乗せ額をはっきり示した数字はなかなか出てきません。

というのも、バリアフリーの費用は一つの工事としてまとまっているわけではないからです。間取りの工夫だけで済んで金額がほとんど動かない部分と、設備や面積が増えて確実に加算される部分が、同じ「バリアフリー」という言葉の中に混ざっています。この二つを分けないまま総額だけを眺めても、予算の見当はつきません。

そこで、新築の建設費の目安と、追加費用が出ない部分と出る部分の分かれ目、いま要るものと将来の備えをどう分けて予算に入れるかまでをまとめました。ハウスメーカーや工務店との打ち合わせに入る前の準備として役立ててください。

バリアフリー新築の費用の考え方

バリアフリーの新築費用は、住宅そのものの建設費に「バリアフリー分」が上乗せされる形で語られがちですが、実際の内訳はもう少し入り組んでいます。ここでは、費用を見るときの土台になる考え方を説明します。

注文住宅の建設費は全国平均で約3,900万円

金額の見当をつけるには、まず一般的な注文住宅がいくらで建っているかを押さえておくとよいでしょう。住宅金融支援機構の2024年度フラット35利用者調査では、注文住宅(土地を持っている方が建てる場合)の建設費は全国平均で3,932.1万円と示されています。土地から購入する土地付注文住宅では、建設費が3,512.0万円、土地取得費が1,495.1万円でした。

この数字は、バリアフリーかどうかを区別せず集計した全体の平均です。実際の金額は、地域や住宅の広さ、建てる会社の価格帯によって大きく振れます。同じ調査でも首都圏と地方では建設費に数百万円の差が出ているので、平均額はあくまで話の出発点として見て、自分の条件に近い数字は建てる会社から出してもらってください。

バリアフリーの上乗せ額は一律に決まらない

「バリアフリーにすると何百万円高くなる」という一律の相場は、残念ながら存在しません。バリアフリーという言葉が指す範囲が広く、床の段差をなくすだけの家と、車椅子で全室を回れてホームエレベーターまで載せた家では、必要な工事も金額もまるで別物になるためです。

同じ「段差のない家」でも、平屋なら階段そのものが無く、2階建てなら将来の昇降をどうするかという課題が残るでしょう。上乗せ額を知りたいときは、「バリアフリーでいくら増えますか」と漠然と聞くより、「引き戸に変えると」「浴室を1坪広げると」と項目を指定して聞くほうが、答えが返ってきます。家そのものの特徴から先に押さえたい方は、バリアフリー住宅とはもあわせて確認しておくと、費用の話も飲み込みやすくなります。

費用は標準で吸収できる部分と加算される部分に分かれる

上乗せ額を見きわめる物差しになるのが、その工夫に「モノ」が増えるかどうかという線引きです。段差をなくす、引き戸にする、廊下を広く取るといった配慮は設計の段階で決まるため、標準仕様の範囲で吸収でき、追加費用はほとんど出ません。反対に、ホームエレベーターや広い水回りのように設備や面積が増える部分は、そのぶんの金額がはっきり乗ります。

この線引きを持っておくと、見積書を見たときに「これは本当に必要な加算か」を自分で判断できます。まずは自分が入れたい配慮を書き出し、それぞれがどちらに入るのかを分けてみてください。分けた結果、加算されるのはごく一部だったというケースも珍しくありません。

追加費用がほとんど出ない部分

バリアフリーの中心にあたる配慮の多くは、実は図面の指示だけで成り立ちます。ここでは、標準仕様の範囲で収まりやすい4つの部分を見ていきます。

段差のない床は図面の段階で決まる

床の段差をなくす工事は、新築なら追加費用がほぼ発生しません。既存の家で段差を解消しようとすると床を壊してスロープを作る工事になりますが、新築では最初から床の高さをそろえて図面を引くだけで済むからです。同じ結果を得るのに、片方は工事、片方は指示という違いがあります。

国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針では、日常生活を送る空間の床は段差のない構造(5mm以下の段差を含む)とすることが基本レベルとして示されています。玄関の上がりかまちや浴室の出入口など、つくり上どうしても高低差が残る箇所には、寸法の上限が別に定められています。打ち合わせの初期に「日常生活空間は段差のない構造で」と伝え、残る箇所の寸法を図面で確かめておきましょう。

引き戸は建具の選び方で収まる

開き戸を引き戸に変える配慮も、新築なら大きな加算にはなりにくい部分です。引き戸は横に滑らせて開けるので、体の位置を後ろにずらす動作が要らず、杖や車椅子を使う方でも通りやすくなります。開き戸と引き戸では建具そのものの価格差はあるものの、壁や枠を作り直す工事が不要なぶん、リフォームで同じことをするより安く済みます。

注意したいのは、引き戸には戸を引き込むための壁が要る点です。図面が固まってから引き戸に変えると、壁の位置や窓の配置まで動かすことになり、そこで費用が膨らみます。引き戸にしたい場所は間取りを決める段階で伝えておくのが、いちばん安く付ける方法にあたります。

廊下と出入口の幅は寸法の取り方で変わる

廊下や出入口を広く取る配慮も、面積が増えなければ材料費はほとんど変わりません。同じ坪数の中で、どこに壁を立てるかという寸法の取り方の問題だからです。あとから壁を動かして廊下を広げる工事に比べると、費用の差は歴然としています。

国土交通省の指針では、日常生活空間内の通路の有効幅員は基本レベルで780mm(柱などの箇所は750mm)以上、推奨レベルで850mm(柱などの箇所は800mm)以上とされています。出入口の幅員は基本レベルで750mm(浴室は600mm)以上、推奨レベルで800mm以上です。車椅子を使う可能性があるなら推奨レベルの寸法を目標にし、図面のどこが何mmかを設計者に確かめてください。

コンセントとスイッチの高さは打ち合わせで決まる

見落とされやすいのが、コンセントやスイッチの高さです。高さを変えても費用は変わらないのに、後から直そうとすると壁を開けて配線をやり直す工事になります。かがんで抜き差しするのがつらくなる年齢を見越して、コンセントは床から40センチ前後、スイッチは低めの位置にそろえておくと、体が動かしにくくなってからも扱えるでしょう。

同じ考え方は、手すりの下地やドアの取っ手の形にもあてはまります。金額に響かず、後から変えると工事になるものは、打ち合わせの席で決めきってしまうのが得策です。電気図面の承認前に、コンセントとスイッチの高さを一つずつ確かめる時間を取ってもらいましょう。

費用が明確に加算される部分

金額がはっきり乗るのは、設備や面積が増える部分です。ここでは、予算に組み込んでおきたい4つの加算要因を挙げます。

ホームエレベーターは本体と工事の両方がかかる

新築のバリアフリーで金額がいちばん大きく動くのが、ホームエレベーターです。本体の価格に加えて、昇降路のスペースと専用の基礎、電源工事が必要になり、建築確認の手続きや設置後の定期的な保守点検も欠かせません。1階と2階を行き来する手段としては確実ですが、費用は他の配慮とけたが違います。

そもそもエレベーターが要らない家にするという選択肢も残っています。生活に必要な部屋を1階にまとめる、あるいは平屋にすれば、昇降そのものが発生しません。土地の広さと価格しだいではありますが、バリアフリー平屋という選び方も候補に入れて、エレベーターの費用と比べてみてください。

広い水回りは面積の分だけ建設費が増える

浴室やトイレを介助できる広さにすると、その面積の分だけ建設費が上がります。介助する方が横に立てる浴室、車椅子で入れるトイレは、標準的な間取りより広いスペースを取るためです。面積が増えれば基礎も屋根も外壁も増えるので、坪単価がそのまま効いてきます。

広げ方には幅があり、浴室を1坪サイズにする程度なら選べる商品も多く、金額の増え方は緩やかです。介助を前提に大きく広げたり、特注のユニットバスを入れたりすると、金額は跳ね上がります。どこまで広げるかは、いま必要な介助の内容から逆算して決めるとよいでしょう。

特注寸法の建具と造作は既製品より高くなる

既製品で対応できない寸法を求めると、そこも加算の対象になります。車椅子が通る幅の広い引き戸や、体格に合わせた高さの洗面台、通常より大きな開口部などは、メーカーの標準品から外れて特注扱いになるためです。特注品は本体価格が上がるうえ、納期も延び、数か月先の引き渡しに響くこともあります。

多くの住宅設備メーカーは、標準品の中にも幅の広い建具や高さを選べる洗面台をそろえています。特注に走る前に、標準品の選択肢で足りないかを設計者に確かめてもらってください。標準品で収まれば、同じ使い勝手を保ったまま金額を抑えられます。どうしても特注が要る場所は、洗面台なら1台、建具なら1枚というように数を絞ると、加算を小さくとどめられます。

広い敷地と外構は土地取得費にはね返る

平屋にする、駐車スペースを広く取る、玄関までスロープを回すといった判断は、必要な敷地の広さを押し上げます。フラット35利用者調査でも、土地付注文住宅の土地取得費は全国平均で1,495.1万円、首都圏では2,285.0万円と、地域によって大きな開きがありました。土地の価格が高い地域ほど、敷地を広く取る判断は総額に響きます。

外構も忘れやすい費用です。玄関までのスロープは、緩やかな勾配にするほど長い距離が要り、そのぶん面積と工事量が増えます。建物本体の見積りに外構が含まれていないケースは多いので、資金計画には外構費を別枠で入れておきましょう。

追加費用の出方を、下の表にまとめました。

部分 追加費用 見きわめ方
床の段差をなくす ほとんど出ない 図面の床高さの指示で決まる
引き戸への変更 建具の価格差のみ 間取り確定前に伝えれば工事は増えない
廊下・出入口の幅 ほとんど出ない 同じ坪数での寸法の取り方
コンセント・スイッチの高さ 出ない 電気図面の打ち合わせで決まる
ホームエレベーター 大きく出る 本体・基礎・電源・保守点検まで含む
広い水回り 面積分だけ出る 増える坪数に坪単価をかけて概算
特注寸法の建具・造作 出る 標準品で足りるか先に確認
広い敷地・外構 土地代と外構費に出る 建物本体の見積りと別枠で用意

予算の立て方

加算される部分が見えてきたら、次はどこまでを今の予算に入れるかを決める番です。ここでは、限られた予算を配分するときの考え方を説明します。

いま要るものと将来の備えを分ける

予算を立てるときの分かれ道は、「いま必要な設備」と「将来必要になるかもしれない設備」を同じ扱いにしないことです。将来のためにと設備まで先に入れると、使わないまま古くなり、いざ必要になった頃には型落ちして交換が要ります。ホームエレベーターや介助用の広い浴室は、必要になってから入れても間に合う設備でしょう。

一方で、後から入れると壁や床を壊す工事になるものは、いま入れておく価値があります。この線引きで自分の希望リストを二つに割り、いま要るものだけを本体工事に入れて、残りは将来の備えに回してください。予算が足りないときも、削る順番で迷わなくなります。

手すりの下地は先に入れておく

将来の備えとして最優先に入れたいのが、手すりの下地です。手すりは壁の中の柱や下地板にビスを効かせて固定するので、下地がない壁に後から付けようとすると、壁を開けて補強を入れる工事から始まります。新築の段階で合板を1枚仕込んでおくだけなら、費用はごくわずかで済みます。

国土交通省の指針でも、玄関の上がりかまち部や脱衣室の手すりについて「設置できるようになっていること」という要件が示されており、実物の手すりが無くても下地があれば要件を満たす形になっています。廊下、階段、トイレ、浴室、玄関、脱衣室の壁には、下地を入れておくよう図面に書き込んでもらいましょう。

将来の設置スペースだけ空けておく

下地と同じ発想で、場所だけ確保しておく手もあります。ホームエレベーターを将来載せる可能性があるなら、1階と2階の同じ位置に押し入れや物入れを重ねて配置しておくと、その部分を抜いて昇降路に転用できるでしょう。同じように、トイレの横に少し余白を残しておけば、介助が必要になったときに間仕切りを動かして広げられます。

このやり方なら、いま出る費用は収納が少し増える程度に収まり、将来の工事も小さく収まるでしょう。間取りの打ち合わせで「将来ここにエレベーターを載せる可能性がある」と伝えておくと、柱や梁の検討まで含めて対応してもらえます。図面が固まる前に、将来の想定を口に出しておいてください。

注意

バリアフリーの追加費用は、間取りや設備の内容、建てる会社の標準仕様、地域の土地相場によって大きく変わります。この記事の金額はあくまで公的統計による全国平均の目安なので、自分の家がいくらになるかは必ず見積りで確かめてください。とくにホームエレベーターや特注設備は、条件しだいで金額が大きく動きます。

性能の等級と金利優遇

バリアフリーの配慮を積んだ家は、住宅ローンの金利や税制で優遇を受けられる場合があります。ここでは、費用に効いてくる制度の入り口を説明します。

高齢者等配慮対策等級はフラット35Sの基準になる

新築のバリアフリー性能は、住宅性能表示制度の「高齢者等配慮対策等級」という物差しで表されます。この等級は、住宅金融支援機構のフラット35Sの技術基準にも使われており、新築住宅では金利Aプランが高齢者等配慮対策等級4以上(共同建て住宅の専用部分は等級3でも可)、金利Bプランが等級3以上とされています。基準を満たすと、当初一定期間の借入金利が引き下げられます。

段差をなくす、幅を確保する、下地を入れるといった配慮は、この等級を上げる要素と重なります。追加費用がほとんど出ない配慮を積み上げた結果、金利の引き下げに手が届くこともあるわけです。ローンをフラット35で組む予定なら、等級をいくつで申請できるかを設計者に確認してみてください。

介護保険の住宅改修は新築では使えない

一方で、介護保険の住宅改修費は新築には使えません。介護保険の住宅改修は、すでに住んでいる家に手すりを付けたり段差を解消したりする改修に対して支給される仕組みで、これから建てる家の工事は対象外だからです。新築の予算を立てるときに、この20万円を当てにしないよう気をつけてください。

新築で使える支援は、国や自治体の補助金と、住宅ローン減税をはじめとする税制のほうです。制度は年度ごとに内容が変わり、着工前の申請が条件になっているものも多くあります。使える制度がないかは、契約の前に建てる会社と一緒に洗い出しておきましょう。

見積りの確かめ方

同じ図面でも、見積書の作り方は会社によって違います。ここでは、金額を比べるときに確かめたい3つの点を挙げます。

標準仕様に含まれる範囲を先に聞く

見積りを取る前に確かめたいのが、その会社の標準仕様にバリアフリーの配慮がどこまで入っているかです。段差のない床や引き戸を標準に含んでいる会社もあれば、オプション扱いにする会社もあり、同じ配慮が一方では0円、もう一方では追加費用として計上されます。この違いを知らないまま総額だけを比べると、安く見えるほうが実は仕様の薄い家だったという事態が起きます。

確かめ方は簡単で、標準仕様書を見せてもらい、床の段差、建具、廊下幅、手すり下地の4点がどう書かれているかを読むだけです。書かれていない項目は、口頭で確認して議事録に残してもらってください。契約後に「それはオプションです」と言われる展開を防げます。

相見積りは同じ条件で比べる

複数の会社から見積りを取るときは、渡す条件をそろえるのが鉄則です。A社には「バリアフリーで」とだけ伝え、B社には「廊下幅850mm、手すり下地あり、引き戸」と具体的に伝えると、出てくる金額の差が仕様の差なのか価格の差なのか分からなくなります。条件がそろっていない相見積りは、比べる意味を失います。

希望する配慮を1枚の紙に書き出し、各社に同じものを渡してください。廊下と出入口の幅は数字で、下地を入れる場所は部屋名で、水回りの広さは畳数か坪数で書くと、伝わり方のぶれが減ります。同じ条件で並べてはじめて、どの会社が自分の希望を安く実現できるかが見えます。

追加費用は工事の項目ごとに出してもらう

「バリアフリー工事一式」とまとめられた見積書は、中身が判断できません。一式でいくら、ではなく、どの配慮にいくらかかっているかを項目ごとに出してもらうと、削る場所と残す場所を自分で選べます。浴室の拡張に何十万、エレベーターに何百万と分かれていれば、予算が足りないときにどこを将来へ回すかを決められるでしょう。

項目ごとの内訳は、多くの会社が依頼すれば出してくれます。出せないと言われた場合は、その理由を聞いてみてください。内訳が見えない見積りにサインすると、あとから減額の交渉もできなくなります。

まとめ

バリアフリー新築の費用は、一律の上乗せ額として存在するわけではありません。注文住宅の建設費は全国平均で3,932.1万円という公的統計の目安があり、そこにバリアフリー分がどう乗るかは、内容によって分かれます。段差をなくす、引き戸にする、廊下と出入口の幅を取る、コンセントの高さを合わせるといった配慮は図面の段階で決まるので、追加費用はほとんど出ません。

金額が明確に乗るのは、ホームエレベーター、広い水回り、特注寸法の建具、広い敷地と外構です。予算を立てるときは、いま要るものと将来の備えを分け、手すりの下地と将来のスペースだけを先に入れておくと、後付けの工事を小さく抑えられます。金額は条件で大きく動くため、標準仕様の範囲を確かめ、条件をそろえた相見積りを項目ごとの内訳で受け取ってから判断してください。新築で使える支援を先に知っておきたい方は、バリアフリー新築の補助金もあわせて役立ててください。

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