工事不要の介護用手すり|据え置き型と突っ張り型の選び方と介護保険

福祉用具・介護用品

親の立ち座りや歩行がふらつくようになると、まず頭に浮かぶのが手すりです。ただ、賃貸だと壁に穴を開けられず、持ち家でも工事となると気が重い、という方は多いでしょう。

そこで選ばれているのが、工事のいらない据え置き型と突っ張り型の手すりです。床に置いたり、床と天井で突っ張ったりして固定するので、壁を壊さずにその日から使い始められます。

この記事では、据え置き型と突っ張り型の違いと置ける場所、選ぶときの基準、そして介護保険で借りられるかどうかまでをまとめました。どこにどの手すりを付けるか迷っている方は、注文する前の手がかりにしてください。

工事不要の手すりが選ばれる理由

手すりと聞くと壁にねじ止めする工事を思い浮かべますが、工事をせずに置けるタイプもあります。ここでは、据え置き型と突っ張り型が選ばれる理由を説明します。

壁を壊さず置ける据え置き型と突っ張り型

工事のいらない手すりは、大きく据え置き型と突っ張り型の2つに分かれます。据え置き型は重い土台を床に置いて自立させるもの、突っ張り型は床と天井のあいだで棒を突っ張って固定するものです。どちらも壁にねじを打たないので、ドライバーや大工仕事なしで置けます。

工事がいらないので、賃貸でも持ち家でも壁を傷つけずに、その日のうちから使い始められます。介護は状態が急に変わることも多く、「来週に業者を手配して」では間に合わない場面もあるものです。まず1本置いてみて、合わなければ場所を変える、という試し方ができるのも据え置き型と突っ張り型の使いやすさでしょう。工事のいらない手すりは、迷っている段階でも動き出しやすい選択肢になります。

賃貸や持ち家を傷つけずに使える

賃貸住宅では、退去時の原状回復を求められるため、壁に穴を開ける工事はためらわれるものです。据え置き型と突っ張り型なら壁に固定しないので、退去のときにそのまま持ち出せて、次の住まいでも使い回せます。持ち家でも、壁の下地に十分な強さがないと工事の手すりは付けられず、補強から始めると費用がかさみます。

工事をしない手すりは、そうした住まいの制約を受けにくいのが強みです。使わなくなれば片づけられ、必要な人に譲ったり、後で紹介する介護保険のレンタルで返却したりもできます。まずは住まいを傷つけずに支えを増やしたい、という方に向く選び方だといえるでしょう。介護用品の種類やレンタルと購入の考え方を先に押さえたい方は、介護用品の全体像もあわせて確認しておくと迷いにくくなります。

据え置き型手すりの特徴と置ける場所

据え置き型は、床に置くだけで使える自立式の手すりです。ここでは、その仕組みと、どんな場所や動作に向くのかを説明します。

重い土台を床に置いて自立させる

据え置き型は、平たく重い土台の上に手すりのバーが立った形をしています。土台そのものの重さと接地面の広さで安定させるので、壁にも天井にも固定しません。床が平らで、土台を置くだけの広さがあれば設置できます。

体重を預けても倒れないよう、土台には10キロを超える重さのものが多く、機種によっては土台の上に人が乗って重しにする使い方をするものもあるほどです。持ち運びは重い反面、いったん置けばずれにくく、支えとして頼れます。畳やフローリングなど床の種類を選ばずに置けるので、和室でも洋室でも同じように使えるでしょう。置き場所の床が水平かどうかだけ、先に確かめておくと安心です。

ベッド脇や玄関の立ち座りを支える

据え置き型が力を発揮するのは、立ち座りを繰り返す場所です。ベッド脇に置けば起き上がってから立ち上がるまでの支えになり、玄関の上がり框のそばに置けば靴の脱ぎ履きや段差の昇り降りを助けます。手すりを握って体を引き上げられるので、足腰の力が落ちてきた方でも動作が安定します。

土台があるぶん場所は取りますが、そのぶん握ったときの安心感は大きいものです。ベッド用の据え置き型には、マットレスの下に土台を差し込んで固定するタイプもあり、狭い寝室でも収まります。どの動作でつまずきやすいかを見てから、その動線上に置き場所を決めるとよいでしょう。

布団やソファからの立ち上がりにも使える

床に敷いた布団や低いソファからの立ち上がりは、膝や腰に負担がかかりやすい動作です。据え置き型を布団のわきやソファの肘掛けのそばに置けば、手すりを支点にして体を起こせるので、立ち上がりが楽になります。低い位置から高い位置へ握り替えられるよう、バーが縦横に組まれた機種を選ぶと動作に沿います。

畳の部屋で布団の生活を続けている家庭では、ベッドに替えずに支えだけ足せるのも利点です。ソファに置くときは、座面の高さと手すりの握り位置が合うかを確かめてください。座ったまま握れて、そのまま立ち上がれる高さに調整できるものだと、毎日の動作が無理なく続きます。

突っ張り型手すりの特徴と置ける場所

突っ張り型は、床と天井のあいだに縦の棒を突っ張って立てる手すりです。ここでは、その仕組みと向いている場所を説明します。

床と天井で突っ張って固定する縦手すり

突っ張り型は、床から天井まで届く縦の棒を、ばねやねじの力で突っ張らせて固定します。天井を押し上げる力で位置が決まるので、壁がなくても部屋の真ん中に近い場所に立てられます。土台が小さく、据え置き型ほど床の面積を取らないのも特徴です。

しっかり突っ張るには、天井に手すりの力を受け止められる強さが要ります。天井の板が薄かったり、真下に下地の骨組みがなかったりすると、突っ張っても緩んで安定しません。設置する前に、天井を軽く押してたわまないか、取扱説明書が示す天井の高さや強さの条件に合うかを確かめてください。条件に合えば、狭い通路にもすっきり立てられます。

階段の上り口や廊下の移動を支える

突っ張り型が向くのは、歩いて移動する動線です。廊下の途中や曲がり角、階段の上り口に立てておけば、歩きながら握って体を支えられます。縦の棒なので、握る高さを自分の楽な位置に選べて、立ち止まって握り直すときにも使いやすいものです。

床の面積を取らないため、人がすれ違う廊下でも通行のじゃまになりにくいでしょう。階段そのものに設置するのではなく、上り口や下り口の踊り場に立てて、段に足をかける前の一歩を支える使い方が基本になります。段差の前後でふらつく場所を見つけて、その位置に立てると転倒を防ぎやすくなります。

手すりバーを足して動線に沿わせる

突っ張り型は、縦の棒に横向きの手すりバーを取り付けて広げられる機種があります。縦の棒だけでは支えきれない横移動に、バーを足して動線に沿わせると、握りながら数歩ぶんを移動できます。ベッドから壁ぎわの棚まで、といった短い区間に沿って手すりを渡すような使い方です。

2本の縦棒のあいだに横バーを渡して、門のような形に組める製品もあります。どこからどこまで手を離さずに移動したいかを先に決めると、バーの向きと長さが選びやすくなるでしょう。組み合わせを増やすほど費用も上がるので、本当に必要な区間だけに絞って足すのがおすすめです。

工事不要の手すりの選び方

据え置き型と突っ張り型のどちらを選ぶかは、置く場所と支えたい動作しだいです。ここでは、迷わず選ぶための3つの基準を説明します。

POINT

選ぶ基準は3つあります。支えたい動作に合う形とバーの位置、床と天井の強さと置くスペース、体重を預けても安定する耐荷重。この順で絞ると、据え置き型か突っ張り型かの当たりがつきます。

支えたい動作に合わせて形とバーの位置を決める

最初に決めたいのは、どの動作を支えたいかです。立ち座りが不安なら握って体を引き上げられる据え置き型、歩行や移動が不安なら動線に立てる突っ張り型、と支えたい動作で向く形が変わります。支えたい動作を先に決めると、据え置き型か突っ張り型かの当たりがつきます

同じ立ち座りでも、ベッドからか、床の布団からかで、必要なバーの高さは違ってきます。低い位置から握り始めるなら縦横にバーが組まれたもの、立ってから握るなら高い位置に横バーがあるものが合います。実際にその場所で立ち座りや歩行の動きをまねてみて、手が自然に届く位置にバーが来る機種を選んでください。据え置き型と突っ張り型の向きの違いは、下の表にまとめました。

比べる点 据え置き型 突っ張り型
固定の仕方 重い土台を床に置いて自立させる 床と天井で突っ張って固定する
向く動作 立ち座り(ベッド脇・玄関・ソファ) 歩行と移動(廊下・階段の上り口)
置ける条件 平らな床と土台を置く広さ 天井までの高さと突っ張れる強さ

床と天井の強さと置くスペースを確かめる

置き場所が手すりの力を受け止められるかも、注文の前に確かめておく点です。据え置き型なら床が平らで土台を置く広さがあるか、突っ張り型なら天井が突っ張る力に耐えるかを見ます。天井の下地が弱いと突っ張り型は緩み、床が斜めだと据え置き型は安定しません。

据え置き型は土台のぶん床の面積を取るので、通路に置くなら人がすれ違えるかまで測ってください。突っ張り型は床から天井までの高さが機種の対応範囲に収まるかを確かめます。設置場所の広さと天井の高さを測ってから候補を選ぶと、届いてから置けないという事態を避けられるでしょう。

注意

天井の板が薄い、または真下に下地の骨組みがない場所では、突っ張り型がしっかり固定できず緩むおそれがあります。天井を軽く押してたわむようなら、突っ張り型は避けて据え置き型を選ぶか、設置できるか事業者に確かめてから注文してください。

体重を預けても安定する耐荷重を選ぶ

手すりは体重を預けて使うものなので、耐荷重の確認は欠かせません。カタログや取扱説明書に載る耐荷重が、使う人の体重に対して十分に余裕があるかを見ます。握って一気に立ち上がると瞬間的に大きな力がかかるため、体重ぎりぎりでなく、余裕をもった数値のものを選んでください。

据え置き型は土台が重いほど安定し、突っ張り型は突っ張る力が強いほどずれにくくなります。同じ工事不要の手すりでも、機種によって耐える重さは幅があります。使う人の体重と、寄りかかり方や引き上げ方まで見込んで、余裕のある耐荷重の機種を選ぶと安心して使えるでしょう。

介護保険で借りられる手すり

工事のいらない手すりは、介護保険を使って借りられます。ここでは、貸与の対象になる手すりと、工事で付ける手すりとの使い分けを説明します。

福祉用具貸与で借りられる工事不要の手すり

据え置き型と突っ張り型の手すりは、介護保険の福祉用具貸与で借りられます。厚生労働省の福祉用具貸与では、手すり(工事を伴わないもの)が車いすや歩行器などとともに貸与の対象種目として示されています。工事のいらない据え置き型と突っ張り型の手すりは、買わずに介護保険のレンタルで借りられます

自己負担は原則として単価の1〜3割で、割合は所得に応じて決まります。レンタルなら、状態が変わったときに別の機種へ交換したり、使わなくなれば返却したりもできます。ただし要支援1・2や要介護1の方は、手すり以外の一部の種目が原則として保険の対象外になる点には気をつけてください。借りられるかどうか迷うときは、担当のケアマネジャーに確認するとよいでしょう。レンタルと購入のどちらが向くかを詳しく知りたい方は、レンタルと購入の違いもあわせて読んでおくと判断しやすくなります。

工事で壁に付ける手すりとの使い分け

同じ手すりでも、壁にねじ止めする工事をするものは、福祉用具貸与ではなく住宅改修の扱いになります。厚生労働省の資料住宅改修の概要では、手すりの取付けが住宅改修の対象種類の1つとされ、支給限度基準額は20万円と示されています。工事の手すりは壁や柱に固定するぶんしっかり支えますが、いったん付けると場所を動かせません。

置き場所が定まっていて長く同じ位置で使うなら工事の手すり、置き場所を試したい、賃貸で工事ができない、まず支えを足したいなら工事不要の手すり、と使い分けるとよいでしょう。住宅改修は事前の申請が必要で、工事の前にケアマネジャーへの相談から始めます。工事不要の手すりで支え、それでも足りない動線だけを住宅改修で補う、という組み合わせも選べます。どちらにするか迷うときは、次に紹介する相談先に見てもらってから決めてください。

介護保険を使わずに購入するときの選び方

急いで支えが欲しいときや、要介護認定をまだ受けていないときは、介護保険を使わずに自分で買う方法もあります。据え置き型や突っ張り型の手すりは、介護用品店やホームセンター、通販でも実費で手に入ります。認定を待たずにその日から使い始められるのが、自分で買う場合の利点です。

ただし実費で買うと、自己負担は全額になります。保険の貸与なら単価の1〜3割で済むぶん、長く使うほど負担の差が開くので、急ぎでなければ先に貸与で借りられるか確かめる方がよいでしょう。買う場合も、耐荷重や置き場所の寸法といった選ぶ基準は貸与のときと変わりません。合うかどうか不安なら、返品できる通販を選んだり、店頭で実物に触れてから決めたりするとよいでしょう。

手すりを選ぶ前に相談したい相手

工事不要の手すりも、置き場所や機種の選定は専門家に見てもらうと失敗が減ります。ここでは、注文の前に相談したい相手を紹介します。

設置場所を見てくれる福祉用具専門相談員

置き場所と機種で迷ったら、福祉用具専門相談員に相談してみましょう。厚生労働省の福祉用具・住宅改修では、本人の心身の状況や住環境をふまえて福祉用具を選び、使い方まで助言する専門職と説明されています。自宅に来て、実際の床や天井を見ながら、据え置き型か突っ張り型かを選んでくれるのが強みです。

貸与や販売の事業者に在籍しているので、事業者に問い合わせれば相談の場をつくってもらえます。設置した後も、使い心地に合わせて位置を調整したり、状態の変化に応じて機種を見直したりしてくれるので、置いて終わりになりません。天井が突っ張れるか、土台を置く広さがあるかといった住まいの条件も見てもらえるので、まず一度来てもらうと安心です。

ケアプランに位置づけるケアマネジャー

介護保険で借りる場合は、ケアマネジャーへの相談も欠かせません。福祉用具のレンタルは、ケアマネジャーが作るケアプランに位置づけて進めるのが基本です。手すりだけを切り離さず、生活の困りごとと合わせて相談すると、何を優先して支えるかまで見きわめてもらえます。

ケアマネジャーは訪問介護やデイサービスなど、ほかのサービスとの兼ね合いも見ています。手すりを借りたいと伝えれば、全体の予算やスケジュールに無理がないかを一緒に考えてもらえるでしょう。担当のケアマネジャーがいない段階なら、次に紹介する地域包括支援センターが相談の入り口になります。手すりを検討していると伝えるところから始めてみてください。

介護の入り口になる地域包括支援センター

担当のケアマネジャーがまだいない段階では、地域包括支援センターが最初の相談先になります。ここは市区町村ごとに置かれた高齢者の総合相談窓口で、介護保険や福祉用具、住宅改修の相談を無料で受け付けています。保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職が常駐し、本人だけでなく離れて暮らす家族からの電話にも応じてくれます。

まだ要介護認定を受けていなくても利用でき、認定の申請手続きの案内までまとめて頼めるのが特徴です。手すりを検討していると伝えれば、貸与の相談につながるケアマネジャーや事業者を紹介してもらえます。住まいの市区町村のホームページや役所の介護保険担当課で、担当のセンターの場所を確かめられます。どこに相談すればよいか迷ったら、まずここへ足を運んでみてください。

まとめ

工事のいらない手すりには、床に置く据え置き型と、床と天井で突っ張る突っ張り型があります。据え置き型はベッド脇や玄関の立ち座りに、突っ張り型は廊下や階段の上り口の移動に向くタイプです。選ぶときは、支えたい動作に合う形とバーの位置、床と天井の強さと置くスペース、余裕のある耐荷重の3つで絞ると迷いにくくなります。

これらの工事不要の手すりは、介護保険の福祉用具貸与で借りられます。壁にねじ止めする工事の手すりは住宅改修の扱いになるので、置き場所を試したいなら貸与、長く同じ位置で使うなら工事、と使い分けてください。まずは支えたい動作と置き場所を決めて、据え置き型か突っ張り型かの当たりをつけましょう。そのうえで、注文の前に福祉用具専門相談員へ一度相談すると、住まいに合った1本を選べます。

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