親が朝起き上がるのに時間がかかったり、布団からの寝起きをつらそうにし始めると、介護ベッドを考える家族は多いものです。ただ、店頭やカタログを見ても、電動で何がどう変わるのか、いくらかかるのかまではなかなか分かりません。
介護ベッドは、背もたれを起こしたり高さを変えたりして、寝起きの動きを助ける道具です。体の状態に合わないものを選ぶと、使わずに場所を取るだけになりかねません。モーターの数や幅、介護保険の対象になるかどうかで、使い心地も費用も大きく変わります。
そこで、電動ベッドの種類と選ぶ基準、介護保険で借りられる条件と自己負担、レンタルと購入の使い分けまでをまとめました。はじめて介護ベッドを検討する段階の手がかりとして役立ててください。
介護ベッドが寝起きを支える役割
介護ベッドを選ぶ前に、ふつうのベッドと何が違うのかを知っておくと、必要な機能の見当がつきます。ここでは、介護ベッドが本人と家族に対して果たす役割を見ていきます。
電動ベッドは背上げと高さ調整で起き上がりを助ける
介護ベッドのいちばんの役割は、背もたれや脚の角度、床からの高さを電動で変えて、寝起きの動きを助けることです。腹筋や脚の力が落ちると、平らな布団から自分で起き上がるのが難しくなり、起きるたびに大きな力がいります。そこで背もたれを起こせば、体を引き上げる力が減り、少ない負担で上体を起こせます。
背上げで上体を先に起こし、ベッドの高さを立ち上がりやすい位置へ合わせると、起き上がりから立ち上がりまでの動きがひと続きになる仕組みです。高さを膝より少し高めにすると、浅く腰かけた姿勢から足に体重を移しやすく、立つときのふらつきも抑えられます。まず「起き上がりと立ち上がりのどちらがつらいのか」を思い浮かべると、あとで選ぶ型の見当がつくでしょう。
マットレスとサイドレールで転落と床ずれを防ぐ
介護ベッドは、付属するマットレスやサイドレール(ベッド柵)によって、転落や床ずれを防ぐ役割も持ちます。寝返りが減ると同じ場所に体重がかかり続け、お尻やかかとの皮膚が赤くただれる床ずれが起こりやすくなります。体圧を分散するマットレスを合わせると、一点にかかる圧力がやわらぎ、床ずれができにくくなるのです。
サイドレールは、寝ている間の転落を防ぎ、起き上がるときにつかまる支えにもなります。ベッドの高さがあるぶん、落ちたときのけがは布団より大きくなりがちなので、柵は欠かせません。マットレスやサイドレールは本体とは別の付属品として扱われ、単体でも交換できるので、体の状態に合わせて選び直せます。用具全体の考え方を先に押さえたい方は、介護用品の全体像もあわせて確認しておくと迷いにくくなります。
介護する家族の腰の負担を軽くする
介護ベッドは、本人だけでなく介護する家族の体もかばう道具です。低い布団のまま着替えやおむつ交換を手伝うと、家族は前かがみの姿勢を長く続けることになり、腰を痛めやすくなります。介護は毎日続くので、一度の負担が小さくても積み重なれば大きな痛みにつながるものです。
ベッドの高さを介助する人の腰の位置まで上げれば、前かがみにならずに手を添えられ、体を起こす動作も楽になります。介助が終わったら本人が立ち上がりやすい高さへ下げるなど、場面に合わせて高さを変えられるのも電動ベッドの強みです。本人の動きだけでなく、誰が介助するのかも思い浮かべながら選ぶとよいでしょう。
電動介護ベッドの種類
介護ベッドは動かせる部分の数によってモーターの数が変わり、値段も使い勝手も違ってきます。ここでは、代表的な1モーターから3モーターまでを順に説明します。
1モーターは背上げと脚上げが連動して動く
もっとも手に取りやすいのが、モーターが1つの1モーターベッドです。1つのモーターで背もたれと脚の部分が連動して上がる仕組みで、背を起こすと同時に脚も持ち上がり、体がずり落ちるのを抑えます。動く部分が少ないぶん価格が抑えられ、まだ自分である程度動ける方に向いた入り口の型といえます。
反面、床からの高さは変えられないものが多く、立ち上がりやすい位置に合わせたり、介助の高さに上げたりはできません。背と脚が別々に動かせないため、脚だけ上げたいといった細かい調整もききません。自分で起き上がれて、少し支えがほしい段階の方に向く型と考えてください。
2モーターは背上げと高さ調整を別々に操作する
2モーターベッドは、背上げ(脚上げと連動)と床からの高さ調整を、別々のモーターで動かせる型です。背もたれを起こして上体を支えながら、ベッドの高さを立ち上がりやすい位置に合わせられるため、起き上がりから立ち上がりまでを一続きで助けられます。介護ベッドの中でもっとも選ばれている標準的な型です。
高さを変えられるので、介助するときは家族の腰の高さへ、本人が立つときは足がつく低さへと、場面ごとに調整できます。起き上がりに少し手が要る方や、立ち座りが不安になってきた方に向きます。価格と機能のつり合いがとれているため、どれにするか迷ったときの基準になる型でしょう。
3モーターは背・脚・高さをすべて個別に動かす
3モーターベッドは、背もたれと脚、床からの高さを、それぞれ独立したモーターで動かせる型です。背を起こさずに脚だけ上げてむくみをやわらげたり、角度を細かく合わせて楽な姿勢を探したりと、体の状態に細やかに合わせられます。寝ている時間が長く、介助の量が多い方に向いた型です。
そのぶん本体価格や、購入する場合の費用はもっとも高くなります。動く部分が増える分だけ操作も覚えることが多く、機能を使いこなせないと持ち腐れになりかねません。ほぼ寝たきりに近い方や、姿勢を細かく変える必要がある方に向くので、本人の動ける度合いを見て選ぶとよいでしょう。
3つの型の違いを、下の表にまとめました。
| モーター数 | 動かせる部分 | 向いている方 |
|---|---|---|
| 1モーター | 背上げと脚上げが連動 | 自分で起き上がれて支えがほしい方 |
| 2モーター | 背上げと高さを別々に | 起き上がりや立ち座りに少し介助がいる方 |
| 3モーター | 背・脚・高さを個別に | 寝ている時間が長く介助量が多い方 |
介護ベッドの選び方の基準
種類が見えてきたら、次は親の体と住まいに合うかを見きわめる番です。ここでは、介護ベッドを選ぶときに順に確かめたい4つの物差しを説明します。
モーター数は本人の動ける度合いで選ぶ
最初に確かめたいのは、本人がどこまで自分で動けるかという点です。自分で起き上がれて支えが少しほしいだけなら1モーターで足り、起き上がりや立ち座りに手が要るなら高さも変えられる2モーターが安心できます。寝ている時間が長く介助の量が多い場合は、姿勢を細かく変えられる3モーターが向きます。
動ける度合いは、今の状態だけでなく、この先どう変わりそうかまで見て判断してください。今は自分で起きられても、数か月で介助が増えそうなら、高さを変えられる型を選んでおくと買い替えずにすみます。迷うときは機能が一段多い型を候補に入れておくと、状態が進んでも使い続けやすくなります。
ベッド幅は寝返りと介助のしやすさで選ぶ
ベッドの幅も、毎日の寝心地と介助のしやすさを左右する物差しです。幅の狭いレギュラー幅は83センチ前後で、置き場所を取らず小柄な方や部屋の狭い住まいに向きます。寝返りをよく打つ方や体格の大きい方には、90センチ前後のセミワイド幅のほうがゆとりを持って眠れます。
幅が広いほど寝返りは楽になりますが、介助する家族が反対側の手まで届きにくくなり、部屋の通り道もふさぎがちです。狭い部屋なら、まず搬入経路と置いたあとの通路の幅を測っておくと、大きすぎて動かせない失敗を防げます。本人の体格と部屋の広さ、介助のしやすさの三つを見比べて幅を決めるとよいでしょう。
マットレスは床ずれの心配で選ぶ
マットレスは、床ずれの起こりやすさに合わせて硬さと種類を選びます。自分で寝返りが打てる方には、寝返りしやすい硬めのマットレスが向き、沈み込みすぎず起き上がりも楽になります。寝返りが減って床ずれの心配が大きい方には、体圧を分散するやわらかめのマットレスやエアマットが向いています。
やわらかいマットレスは床ずれを防ぎやすい反面、体が沈んで自力での寝返りや起き上がりがしにくくなる面もあります。どちらを重く見るかは、本人が自分で動ける度合いによって変わります。マットレスは介護ベッド本体とは別の付属品なので、状態に合わせて選び直せる点も覚えておいてください。
手すりとサイドレールで起き上がりを支える
ベッドの脇に付けるサイドレールや介助バー(起き上がり用の手すり)も、選ぶときに欠かせない要素です。サイドレールは転落を防ぎ、寝返りのときの手がかりになります。握って上体を引き起こせる介助バーを付ければ、起き上がりや立ち上がりのときにつかまる支えができ、本人が自分でできる動きが増えます。
介助バーは、握りやすい高さや位置を本人の動きに合わせて選ぶことが大切です。ベッド周りだけでなく、トイレや廊下など動く道筋に手すりをそろえると、移動全体が安全になります。据え置きや突っ張りで壁を壊さずに付けられる手すりもあるので、工事のいらない手すりの選び方もあわせて確認しておくとよいでしょう。
介護保険で借りられる介護ベッド
介護ベッドは介護保険を使って借りられるので、費用を抑えたいときは対象かどうかを先に確かめておきたいところです。ここでは、貸与の対象になる条件と、自己負担の決まり方を説明します。
特殊寝台は福祉用具貸与の対象になる
介護保険では、介護ベッドが「特殊寝台」として福祉用具貸与の対象になります。厚生労働省の福祉用具貸与では、特殊寝台と特殊寝台付属品が貸与の対象種目として示されており、背上げや高さ調整ができるベッド本体と、マットレスやサイドレールなどの付属品がここに含まれます。
ただし特殊寝台と付属品は、要支援1・2と要介護1の方は原則として保険給付の対象にならず、借りられるのは原則要介護2以上の方です。繰り返し使え、体の状態が変われば別の型へ交換もできるので、介護ベッドはもともと買い切るより借りるのに向いた用具です。まずは担当のケアマネジャーに、対象になるかを相談してみてください。
要介護1以下は例外給付で借りられることがある
要介護1以下の軽度と判定された方でも、体の状態によっては例外的に借りられる場合があります。厚生労働省の要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与では、特殊寝台について「日常的に起きあがりが困難な者」または「日常的に寝返りが困難な者」にあたる場合、例外給付として貸与が認められると示されています。
この例外にあたるかは、要介護認定の基本調査の結果や、医師の所見をもとにした市町村の判断で決まります。自分だけで対象かどうかを決めつけず、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。起き上がりや寝返りが難しくなってきた方は、軽度と判定されていても、あきらめずに一度確認してもらうとよいでしょう。
自己負担は原則1〜3割で決まる
介護保険の貸与で借りると、自己負担は原則として月々のレンタル料金の1〜3割で済みます。割合は所得に応じて決まり、多くの方は1割の負担です。特殊寝台のレンタル料金は型によって幅がありますが、1割負担なら付属品とあわせて月あたり千数百円ほどで借りられることが多く、買い切るより初めの出費を抑えられます。
同じ介護ベッドでも、要介護度や付ける付属品によって毎月の負担は変わります。料金は事業者ごとに設定されているので、契約の前に見積もりを出してもらい、月にいくらかかるのかを確かめておくと安心です。負担割合が分からないときは、介護保険負担割合証で自分の割合を確認しておきましょう。
介護ベッド(特殊寝台)は原則要介護2以上で介護保険の貸与対象になり、要支援や要介護1の軽度者は原則対象外です。ただし起き上がりや寝返りが難しい方は例外給付で借りられる場合があります。対象になるかは体の状態や要介護度で変わるので、注文の前に必ず担当のケアマネジャーか福祉用具専門相談員に確かめてください。
レンタルと購入の使い分け
介護ベッドは借りるだけでなく買うこともできるので、どちらが向くかは状態と使う期間で分かれます。ここでは、レンタルと購入それぞれが向く場面を説明します。
状態が変わりやすいときはレンタルが向く
体の状態が変わりやすい時期には、レンタルのほうが無駄になりません。介護ベッドは要介護度が上がると必要な機能も変わり、1モーターでは足りず高さ調整のいる型へ替えたくなることがあります。レンタルなら、状態に合わせて型を交換でき、使わなくなったら返せるので、体に合わないベッドを抱え込まずにすみます。
保管や処分の手間がかからないのも借りる利点です。介護ベッドは大きく重いため、使い終わったあとの置き場所や運び出しに困りがちです。回復して不要になる見込みがある方や、この先さらに介助が増えそうな方は、まず借りて様子を見るとよいでしょう。レンタルと購入の分かれ目をもっと詳しく見たい方は、介護用品のレンタルと購入の使い分けもあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
長く同じ状態で使うなら購入も選べる
状態が落ち着いていて、長く同じ型を使い続ける見込みなら、購入も選択肢に入ります。介護ベッドの本体価格は型によって幅がありますが、レンタルの自己負担が毎月かかり続けることを思うと、長く使うほど買い切ったほうが総額で安くなる分かれ目が出てきます。何年も同じ状態が続きそうな方は、この分かれ目を目安に考えるとよいでしょう。
ただし買い切ると、状態が変わって別の型が必要になったとき、買い替えの費用がまるごとかかります。処分するときの手間や費用も自分持ちです。介護保険の貸与は原則要介護2以上が条件なので、対象にならない軽度の方が自費で用意する場合にも購入が選ばれます。使う期間の見通しと状態の変わりやすさを見比べて、借りるか買うかを決めてください。
まとめ
介護ベッドは、背上げと高さ調整で寝起きを助け、マットレスやサイドレールで転落と床ずれを防ぐ道具です。電動の型は動かせる部分によって1モーターから3モーターに分かれ、本人の動ける度合いに合わせて選びます。ベッドの幅は寝返りと介助のしやすさで、マットレスは床ずれの心配で選び、起き上がりを支える手すりも欠かせません。
介護ベッドは特殊寝台として介護保険の福祉用具貸与の対象になり、原則要介護2以上で借りられます。要介護1以下でも、起き上がりや寝返りが難しい方は例外給付で借りられる場合があり、自己負担は原則としてレンタル料金の1〜3割です。状態が変わりやすいならレンタル、長く同じ状態で使うなら購入と使い分け、対象になるかや型選びで迷ったら、注文の前に福祉用具専門相談員かケアマネジャーに相談してから決めてください。用具全体の選び方を見比べたいときは、介護用品の全体像もあわせて役立ててください。


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