介護靴・シューズの選び方|転倒しにくい靴の特徴とサイズの合わせ方

福祉用具・介護用品

親の足元がおぼつかなくなってくると、まず靴から見直したいと考える家族は多いものです。ただ、店頭や通販に並ぶ介護靴を見ても、ふつうのスニーカーと何が違うのか、どこを見て選べばよいのかまではなかなか分かりません。

靴は一日じゅう足を支え、地面との唯一の接点になる道具です。つま先の反りや靴底の素材が合っていないと、わずかな段差でつまずいたり、濡れた床で滑ったりして、かえって転びやすくなります。むくみで夕方には入らなくなる、片手では履けないといった悩みも起こりがちです。

そこで、転倒しにくい介護靴の特徴と、履き口や留め具の見方、むくみや左右差をふまえたサイズの合わせ方、介護保険の扱いや購入するときの注意までをまとめました。高齢の親に合う一足を選ぶ手がかりとして役立ててください。

介護靴が転倒を防ぐ役割

靴を選ぶ前に、足元の転倒がどこで、なぜ起こるのかを知っておくと、見るべき点の見当がつきます。ここでは、介護靴が高齢者の歩きに対して果たす役割を見ていきます。

高齢者の転倒は自宅で最も多く起こる

転倒はよそでなく、住み慣れた自宅でこそ起こりやすい事故です。消費者庁の高齢者の事故を防ぐためにでは、令和2年に転倒・転落・墜落で亡くなった高齢者が交通事故のおよそ4倍にのぼると示されました。数字の上でも、転倒は高齢者にとって身近で重い事故だと分かります。

場所も外出先とはかぎりません。政府広報オンラインの転倒事故の記事では、高齢者の転倒のおよそ6割が自宅で起こると伝えています。転びやすい場所は、居間や寝室、玄関、階段や廊下、浴室です。同じ資料には、介護が必要になった原因のうち骨折・転倒が13.9パーセントを占めるという数字も載っていました。毎日はく靴は、その自宅での歩きを足元から支える身近な備えにあたります。

つまずきは足先が上がりにくくなって起こる

高齢になると、足首を持ち上げる力が落ち、歩くときにつま先が下がりやすくなります。すると足先がわずかな段差やカーペットの縁に引っかかり、つまずきや転倒につながるのです。若いころと同じ感覚で歩いていても、実際には足が上がっていない、というずれが転倒の引き金になります。

平らに見える室内でも、敷居やマットの厚み、電源コードなど、足先が引っかかる場所は意外に多いものです。つま先が引っかかりにくい形の靴をはいておくと、足が上がりにくくなっても、つまずく前に足先が段差を越えられます。まずは「足先が下がっても引っかからないか」という目で靴を見てみてください。

合わない靴は転倒と外出控えを招く

サイズや形が足に合わない靴は、それ自体が転倒の原因になります。大きすぎる靴は歩くたびに中で足が動き、脱げそうになって歩き方が不安定になるのです。小さすぎたり幅がきつかったりすれば痛みが出て、かばう姿勢からバランスを崩しやすくなります。

一度つまずいて怖い思いをすると、「また転ぶかもしれない」という不安から外出そのものを控えるようになりがちです。行動する範囲がせまくなれば、脚の力や気力も落ちていきます。足に合った靴で歩きを支えることは、転倒を防ぐだけでなく、外へ出る意欲を保つことにもつながるのです。靴を含めた道具全体の考え方を先に押さえたい方は、介護用品の全体像もあわせて確認しておくと迷いにくくなるでしょう。

転倒しにくい介護靴の特徴

介護靴には、つまずきや滑りを防ぐための工夫がいくつも盛り込まれています。ここでは、転倒を防ぐうえで確かめておきたい4つの特徴を順に説明します。

つま先が反り上がってつまずきを防ぐ

まず見てほしいのが、つま先の形です。介護靴の多くは、つま先が地面から少し反り上がるように作られています。足首を持ち上げる力が落ちてつま先が下がりぎみでも、靴の先が段差を乗り越えやすく、引っかかりを防げるからです。

つま先が反り上がった靴は、足先が下がってきた高齢者のつまずきを、履くだけで減らしてくれます。平らな靴やつま先の薄い靴は、見た目はふつうでも、わずかな段差に引っかかりやすいので気をつけてください。店頭で選ぶなら、靴を床に置いてつま先が浮いているかを見て、通販なら商品写真の横からの形を確かめるとよいでしょう。

靴底は滑りにくく適度に硬い

靴底は、地面をつかむ力と歩きやすさの両方を左右します。表面の溝が深く、ゴムに滑りにくい加工がされた靴底なら、濡れた床やタイル、雨の日の路面でも足がすべりにくくなります。反対に、すり減ってつるつるになった靴底は、室内でも滑って転倒の原因になるのです。

やわらかすぎる靴底も気をつけたいところです。薄くふにゃふにゃした底は、小石や段差の凹凸をそのまま足裏に伝え、地面をとらえる感覚がぼやけてしまいます。適度に硬さのある靴底のほうが、踏ん張りが効いて歩きが安定するでしょう。室内用か屋外用かでも求められる硬さは変わるので、はく場所を思い浮かべながら選んでください。

軽くて足を持ち上げやすい

靴そのものの重さも、転倒のしやすさに関わります。重い靴は一歩ごとに足を持ち上げる負担が大きく、脚の力が落ちた高齢者ほど足が上がりきらず、すり足になってつまずきやすくなります。長く歩くと疲れがたまり、後半になるほど足元があやしくなることもあるのです。

介護靴には、片足で200グラム前後まで軽く作られたものが多くあります。軽い靴なら足を運ぶ負担が減り、最後まで足を上げて歩きやすくなるでしょう。ただし軽さだけを求めると靴底が薄くなり、地面をつかむ力が落ちることもあります。軽さと靴底の安定は片方に振りきらず、両方を見比べて選ぶのがおすすめです。

かかとを包んで着地を安定させる

かかと部分のつくりも、歩きの安定を支えます。かかとをしっかり包んで支える構造の靴は、着地したときに足がぐらつかず、体重をまっすぐ受け止められるのです。かかとがやわらかく崩れる靴や、スリッパのようにかかとのない履き物は、着地のたびに足元が定まらず、転倒につながります。

高齢の親がかかとを踏んでスリッパのようにはいてしまう場合は、脱ぎ履きのしやすさばかりを優先している合図かもしれません。かかとを包む靴でも、面ファスナーや広い履き口を選べば、支えと履きやすさは両立できます。かかとまわりが崩れていないかを、選ぶときに手で押して確かめてみてください。

履き口と留め具で選ぶ

毎日の脱ぎ履きのしやすさは、履き口の開き方と留め具の形で決まります。ここでは、本人が自分で、あるいは介助者がらくに履かせられる工夫を2つ説明します。

面ファスナーは片手で留め外しできる

留め具は、ひもより面ファスナー(マジックテープ)のものが扱いやすくなります。ひも靴は結び直しに両手と指先の細かい動きが要り、握力や手先の動きが落ちた高齢者には負担が大きいからです。面ファスナーなら、貼って剥がすだけで留め外しができ、片手しか使えない方でも自分ではきやすくなります。

面ファスナーの靴は、片手で留め外しでき、足のむくみに合わせて締め具合も調整できます。開き具合を変えられるので、朝はゆるめ、夕方はきつめといった一日のむくみの変化にも合わせられるのです。麻痺などで片手が使いにくい方や、介助者が履かせる場面でも扱いやすいでしょう。留め具に迷ったら、まず面ファスナーを候補にしてください。

履き口が大きく開くと足を入れやすい

履き口の開き方も、脱ぎ履きのしやすさを大きく左右します。履き口が大きく開く靴は、足を差し入れる動きがらくで、かがんで足を押し込む手間が減るのです。むくんだ足や、曲げにくい足でも、開いた履き口からするりと入れられます。

甲の部分が大きく開いて、全体をぱたんと広げられるタイプなら、介助して履かせるときも足を入れやすいでしょう。かかとに指を掛ける輪(つまみ)が付いた靴は、引き上げるときの助けになります。ファスナーで大きく開く商品や、靴べらを使わずにはける形もあるので、脱ぎ履きの負担が大きい方は探してみてください。本人が座ったまま自分ではくのか、介助して履かせるのかを思い浮かべ、その動きに合う開き方の靴を選ぶとよいでしょう。

サイズの合わせ方

介護靴は、正しいサイズに合わせてはじめて転倒を防ぐ働きをします。ここでは、むくみや左右差をふまえて足に合う一足を選ぶための3つの確かめ方を説明します。

足のむくみで一日の中でもサイズは変わる

高齢者の足は、一日の中でもむくみでサイズが変わります。朝はすっきりしていた足が、夕方には水分がたまってむくみ、同じ靴でもきつく感じることが珍しくありません。朝の状態だけを見て選ぶと、夕方には入らない、締めつけて痛いという靴になってしまうのです。

サイズを測ったり試しばきをしたりするなら、足がむくみやすい夕方を選ぶと失敗が減ります。むくみの大きい方は、面ファスナーで開き具合を変えられる靴にしておくと、その日の状態に合わせて締め具合を調整できるでしょう。むくみは日によっても差が出るので、少し余裕を持たせて選んでください。

足長・足幅・足囲の3つを測る

サイズは、足の長さだけでは決まりません。かかとから足先までの足長に加えて、いちばん広い部分の横幅である足幅、その位置をぐるりと一周した足囲の3つを測ると、足に合う靴を選びやすくなります。同じ足長でも、幅や甲の高さは人によってかなり違うからです。

高齢者は幅が広く甲が高い足の方が多く、足長だけで選ぶと横がきつくなりがちです。介護靴には、3Eや4E、5Eといった幅の広いつくりの商品も多くそろっています。左右それぞれの足で3か所を測り、幅の表示も見て選ぶと、痛みや脱げやすさを防げるでしょう。測り方に迷うときは、福祉用具の店で測ってもらうと確実です。

左右差があるときは大きい方に合わせる

左右の足は、大きさや形が違うことがよくあります。とくに片方の脚に麻痺やむくみがある方は、左右で1センチ近く差が出ることもあるのです。左右をひとまとめにして小さいほうに合わせると、大きいほうの足が締めつけられ、痛みや転倒の原因になりかねません。

左右の足の大きさが違うときは、小さい方でなく大きい方の足に合わせて靴を選びます。大きいほうに合わせても、小さいほうは中敷きや面ファスナーの締め具合で調整できます。左右差がとても大きい場合は、左右で違うサイズを組める靴を扱う店もあるので、福祉用具専門相談員に相談してみるとよいでしょう。合わせるのはいつも大きいほうの足だと覚えておいてください。

用途別の選び方

介護靴は、はく場所によって重視したい機能が変わります。ここでは、室内用・屋外用・リハビリ用の3つに分けて、それぞれで見るべき点を説明します。

室内用は軽さと滑りにくさを重視する

家の中ではく靴は、軽さと滑りにくさを第一に選びます。室内では長い距離を歩かないぶん、防水や丈夫さよりも、足を上げやすい軽さと、フローリングや畳で滑らない靴底が効いてくるのです。かかとを包んで脱げにくいことも欠かせません。

スリッパを室内ばきにしている家庭は多いものの、かかとがなく底も滑りやすいため、転倒の危険が高くなります。かかとを覆い、面ファスナーで留められる室内用の介護靴に替えると、家の中の歩きが安定するでしょう。手洗いできる素材なら、汚れても清潔に保てて長くはけます。洗い替えに2足を用意しておくと、片方が乾かないときも足元に困りません。

屋外用は防水と靴底の安定を重視する

外ではく靴は、防水性と靴底の安定を重視します。雨や朝露で濡れた路面、砂利道やちょっとした坂など、屋外は室内より足元の条件が厳しくなるのです。水がしみにくい素材と、溝が深く滑りにくい靴底の靴を選ぶと、濡れた場所でも足がすべりにくくなります。

屋外用は室内用より靴底がしっかりして重くなりがちですが、その重さが地面をとらえる安定にもつながります。通院や買い物など長めに歩く場面では、クッションのある靴底が疲れをやわらげてくれるでしょう。歩行が不安な方は、靴だけで支えきれないこともあるので、杖・ステッキもあわせて備えておくと外出時に安心です。

リハビリ用は足首の支えを重視する

退院後やリハビリの時期にはく靴は、足首の支えを重視します。足首まで覆うつくりや、面ファスナーでしっかり固定できる靴は、足首がぐらつくのを抑え、装具を付けたままはける商品もあるのです。歩行訓練の段階では、この支えが安定した一歩を助けてくれます。

リハビリ用の靴は、理学療法士など専門職の助言を受けて選ぶと、体の状態に合ったものを選べるでしょう。歩きの不安が強く、靴だけでは支えきれない場合は、歩行器・歩行車への切り替えも視野に入ります。3つの用途の違いを、下の表にまとめました。

用途 とくに重視する点 向いている場面
室内用 軽さ・滑りにくさ・洗える素材 家の中で毎日はく
屋外用 防水・靴底の安定・クッション 通院や買い物で外を歩く
リハビリ用 足首の支え・装具対応・固定力 退院後や歩行訓練の時期

介護保険と購入するときの注意

介護靴は、費用と手続きの面でも杖や手すりと扱いが違います。ここでは、介護保険の対象になるかどうかと、買う前に確かめておきたい点を説明します。

一般的な介護靴は介護保険の対象外になる

まず押さえておきたいのは、ふつうの介護靴やリハビリシューズは介護保険では買えないという点です。厚生労働省の福祉用具貸与で対象になる用具は、車いすや手すり、歩行器、歩行補助つえなど13の種目に限られ、靴や履物はそこに含まれていません。

一般的な介護靴・リハビリシューズは介護保険の対象外で、購入費は全額が自己負担になります。数千円から買える商品も多いので、まずは足に合う一足を自費で用意する形が現実的でしょう。ごく一部、変形した足に合わせて作る特別な靴が別の制度で助成される場合もありますが、対象はかぎられます。あてはまるか気になるときは、ケアマネジャーに相談してから決めてください。

注意

一般的な介護靴・リハビリシューズは介護保険の福祉用具貸与・購入の対象ではなく、費用は全額自己負担です。杖や手すりのように借りられる用具と混同しないよう気をつけてください。対象になるか判断に迷うときは、担当のケアマネジャーか福祉用具専門相談員に確かめましょう。

医師の証明があれば医療費控除の対象になることがある

自費が基本の介護靴でも、条件を満たせば医療費控除で税の負担が軽くなることがあります。治療やリハビリのために医師が必要と認め、その証明を受けて購入した靴は、確定申告で医療費控除の対象になる場合があるからです。日常生活の便利さや予防のためだけに買った靴は対象になりません。

対象になるかどうかは、医師の証明の有無や靴の目的で変わります。買う前に主治医やケアマネジャーに、控除の対象になりそうか確かめておくと安心でしょう。対象になる場合は、領収書と医師の証明書類を保管し、確定申告のときに申告してください。判断が難しい部分なので、迷ったら税務署や専門職に相談するとよいでしょう。

買う前に本人に試し履きしてもらう

最後に大切なのが、買う前に本人の足で試しばきをすることです。同じサイズ表示でも、メーカーや商品によって幅や甲の高さ、履き口の開き方はかなり違います。カタログの数字だけで選ぶと、届いてから幅がきつい、かかとが合わないと分かることも珍しくありません。

できれば足がむくむ夕方に、いつもはく靴下を履いて試すと、実際の使い心地に近づきます。数歩でも歩いて、つま先が当たらないか、かかとが浮かないかを確かめてください。通販で買うときは、サイズ交換ができる店を選ぶと、届いてから合わなくても直せます。本人が離れて暮らしていて試せない場合は、福祉用具専門相談員に相談すると、足に合うものを選んでもらえます。

まとめ

介護靴は、足元から転倒を防ぎ、外へ出る意欲を保つための身近な備えです。転倒しにくい靴は、つま先が反り上がり、靴底が滑りにくく適度に硬く、軽くてかかとを包む形をしています。留め具は片手で扱える面ファスナーが履きやすく、履き口が大きく開くものなら脱ぎ履きの負担も減ります。

サイズは、むくみやすい夕方に、足長・足幅・足囲の3つを測り、左右差があれば大きいほうの足に合わせます。はく場所によって室内用・屋外用・リハビリ用と重視する点が変わる点も忘れないでください。一般的な介護靴は介護保険の対象外で全額自己負担ですが、医師の証明があれば医療費控除の対象になることもあります。買う前に本人の足で試しばきをして、迷ったら福祉用具専門相談員に相談してから決めましょう。

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