介護用品はレンタルと購入で使い分ける|違いと選び方を解説

福祉用具・介護用品

親の介護で用具を揃え始めると、同じ杖や手すりでも「借りる」ものと「買う」ものがあると気づきます。値段だけを見て決めてしまい、あとで交換したくなっても返せない、といった戸惑いは珍しくありません。

背景には、介護保険に福祉用具貸与と特定福祉用具販売という2つの仕組みがあり、用具ごとにどちらで使うかが分かれていることがあります。仕組みを知らないまま選ぶと、負担額も手続きも思っていたのと変わってきます。

そこで、レンタルと購入の費用や手続き、対象になる用具の違いをまとめ、「使う期間」「衛生面」「状態が変わるか」という3つの物差しで自分の親のケースに当てはめられるようにまとめました。どちらを選べばよいか迷っている方は、参考にしてください。用具の種類やそろえ方の全体像から知りたい方は、介護用品の全体像もあわせて確認しておくとよいでしょう。

介護用品のレンタルと購入を分ける基本

介護用品の借りる・買うは、好みで決めるのではなく介護保険の区分で決まっています。ここでは、レンタルと購入を分ける2つの制度と、その線引きの考え方を説明します。

貸与と販売という介護保険の2つの区分

介護用品の借りる・買うは、福祉用具貸与と特定福祉用具販売という2つの区分に沿って決まります。介護保険では、繰り返し使える用具は貸与(レンタル)で、肌に触れて他人と使い回しにくい用具は販売(購入)で、と種目ごとにあらかじめ振り分けられているからです。

つまり、利用者が「これは借りたい」「これは買いたい」と自由に選べるわけではありません。車いすや介護ベッドは貸与、腰掛便座や入浴補助用具は販売、というように用具側で決まっています。まずは手元の用具や欲しい用具が、貸与と販売のどちらの区分にあたるのかを確かめるところから始めてください。

肌に触れる用具は購入、繰り返し使う用具はレンタル

区分を分ける考え方は、その用具を他人と使い回せるかどうかにあります。入浴や排泄で直接肌に触れる用具は再利用しにくいため購入となり、消毒して繰り返し使える用具はレンタルになるという線引きです。

たとえばシャワーチェアや腰掛便座は、体に直接触れるため他人が使ったものを使いにくく、購入する用具に分類されます。一方、車いすや歩行器、手すりは、清掃や点検をすれば次の人にも貸せるのでレンタルの対象です。据え置き型や突っ張り型の手すりも工事のいらないレンタル品として使えるので、据え置き・突っ張り手すりで借りられる種類を確かめておくと選びやすくなります。この線引きを頭に入れておくと、個々の用具がどちらになるか見当がつきます。

レンタル(福祉用具貸与)の特徴

レンタルは月々の負担で借り続け、状態に合わせて変えられるのが持ち味です。ここでは、福祉用具貸与の費用の仕組みと、交換のしやすさ、対象外になる種目を順に見ていきます。

月額の1〜3割負担で借り続ける

レンタルの費用は、月ごとにかかる利用料の一部を負担する形になります。厚生労働省の福祉用具貸与では、貸与にかかる費用の1割(一定以上所得者は2割または3割)を利用者が負担すると示されています。

たとえば月額のレンタル料が2,000円で負担割合が1割なら、毎月の支払いは200円ほどです。負担割合は前年の所得に応じて決まり、同じ用具でも人によって支払額が変わります。使っている間はずっと月々の支払いが続くので、どのくらいの期間使いそうかを想像しながら、総額でどうなるかを見ておくとよいでしょう。

状態が変われば交換も返却もできる

レンタルの強みは、体の状態に合わせて用具を入れ替えられる点にあります。介護は数か月で状況が変わることも多く、買い切りだと合わなくなった用具が手元に残ってしまいますが、貸与なら合わなくなったときに返却や交換ができます。

たとえば退院直後は歩行器で歩けても、しばらくして車いすが必要になる、といった変化は珍しくありません。レンタルならその都度、担当者に相談して用具を切り替えられるので、使わなくなったものを抱え込まずに済みます。回復に向かうのか、進んでいくのかが読みにくい時期には、身軽に変えられるレンタルが向いています。

要支援・要介護1で対象外になる種目がある

レンタルには、軽度の認定では原則として借りられない種目がある点に注意が必要です。前掲の福祉用具貸与では、車いすや特殊寝台(介護ベッド)、床ずれ防止用具、移動用リフトなどは、要支援1・2と要介護1の方は原則として保険給付の対象にならないと示されています。

これは、比較的自立している段階では必要性が低いと考えられているためです。ただし、状態によっては例外的に貸与が認められる場合もあります。自分の親が対象外の種目を必要としそうなときは、あきらめる前に担当のケアマネジャーへ確認してください。

注意

要支援1・2と要介護1の方は、車いすや介護ベッドなど8種目がレンタルの保険対象外になります。状態によっては例外的に借りられることもあるので、必要なときはケアマネジャーに相談してください。

購入(特定福祉用具販売)の特徴

購入は年ごとの上限のなかで買い、自分のものとして長く使えるのが持ち味です。ここでは、特定福祉用具販売の費用の仕組みと、対象になる用具、買い切りの利点を説明します。

年10万円までの償還払いで買う

購入の費用は、1年間の上限の範囲で保険が使える仕組みになっています。厚生労働省の特定福祉用具販売では、同一年度に購入できるのは10万円までで、いったん全額を支払った後に費用の9割(一定以上所得者は8割または7割)が払い戻される償還払いと示されています。

たとえば5万円のシャワーチェアを負担1割で買うと、窓口でいったん5万円を支払い、あとから4万5,000円が戻ってきます。年度は4月から翌年3月までで区切られ、10万円の枠はその期間で数えます。まとめて買うと枠を使い切ることもあるので、その年に何を買うかを見通してから注文するとよいでしょう。

入浴と排泄で肌に触れる用具が対象

購入になるのは、体に直接触れて衛生面で使い回しにくい用具です。前掲の特定福祉用具販売では、腰掛便座や入浴補助用具、簡易浴槽などが対象として挙げられています。

具体的には、浴室で使うシャワーチェアや浴槽の出入りを助ける手すり、ポータブルトイレなどが購入する用具にあたります。いずれも入浴や排泄の場面で肌に密着するため、他人が使ったものを再び使うのはためらわれる種類です。カタログでは「購入」「特定福祉用具」といった表記で見分けられることが多いので、注文の前に区分を確かめておきましょう。

一度買えば自分のものとして使い続けられる

購入した用具は自分のものになり、期限を気にせず使い続けられます。レンタルのように毎月の支払いが続かないため、長く同じものを使う見込みがあるなら、購入のほうが総額を抑えられることもあります。

たとえば毎日の入浴で何年も使うシャワーチェアは、月々のレンタル料を払い続けるより、一度買ってしまったほうが割安になりやすいものです。買い切りなので返却や交換の手間もなく、使い慣れた同じ用具をそのまま使えます。事業者との契約を続ける必要もないので、そのぶん手続きの手間もかかりません。長く使うことがはっきりしている用具は、購入を軸に考えてみてください。

レンタルと購入の使い分けの基準

どちらを選ぶかは、費用の大小だけでなく使う期間や衛生面から判断します。ここでは、迷ったときに当てはめたい3つの物差しを説明します。

POINT

迷ったら3つの物差しで考えます。短く使うか長く使うか、肌に触れるか触れないか、体の状態が変わりそうか。この順で当てはめると、レンタルと購入のどちらが向くか絞り込めます。

使う期間の長さで分かれる選択

最初の物差しは、その用具をどのくらいの期間使うかです。短い期間だけ使うならレンタル、長く同じものを使い続けるなら購入というのが基本の分かれ目になります。

たとえば骨折の回復期に数か月だけ歩行器を使うなら、月々の負担で借りて回復したら返せるレンタルが向いています。反対に、毎日の入浴で何年も使うシャワーチェアなら、買い切りの購入のほうが支払いの総額を抑えやすくなります。同じ用具でも、半年で使い終えるか5年使い続けるかで、レンタルと購入のどちらが割安かは逆転します。今の用具をどのくらい使いそうかを見積もり、短ければ借りる、長ければ買う、と当たりをつけてください。

衛生面から購入がすすめられる用具

次の物差しは、その用具が肌に触れるかどうかです。入浴や排泄で直接体に触れる用具は、他人が使ったものを再利用しにくく、そもそも制度上も購入する区分に振り分けられています。

腰掛便座や入浴補助用具は、衛生面の理由から新品を買って使うのが前提です。この区分の用具については、レンタルと購入で迷うこと自体がなく、購入する前提で予算を組んでおけば済みます。年10万円の購入枠を使うことになるので、同じ年に他の用具も買う予定があるなら、合わせて枠の残りを見ておくと安心です。肌に触れる用具かどうかを最初に見分ければ、そこは迷わずに購入へ振り分けられます。

身体の状態が変わりそうかどうか

3つ目の物差しは、これから体の状態が変わりそうかどうかです。回復に向かうのか、少しずつ進んでいくのかで、同じ用具でも借りたほうがよいか買ったほうがよいかが変わってきます。

状態が動きそうな時期は、合わなくなったら交換や返却ができるレンタルのほうが小回りが利きます。反対に、状態が落ち着いていて同じ用具を長く使えそうなら、買い切りの購入で腰を据えて使うのが向いています。今が変化の途中なのか、落ち着いた段階なのかを見て、変わりそうなら借りる、落ち着いていれば買う、と考えてみてください。

区分ごとの違いを、下の表にまとめました。

見る点 レンタル(福祉用具貸与) 購入(特定福祉用具販売)
費用の扱い 月額の1〜3割を負担 年10万円まで、費用の一部が払い戻し
主な用具 車いす、介護ベッド、手すり、歩行器 腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽
向く場面 短期間、状態が変わりそう 長期間、肌に触れる用具
状態が変わったとき 交換・返却できる 買い切りで手元に残る

令和6年から始まった選択制の対象用具

一部の用具は、令和6年からレンタルと購入のどちらでも選べるようになりました。ここでは、選択制の対象になる種目と、選ぶときに担当者へ相談したい点を説明します。

選択制の対象は固定用スロープ・歩行器・歩行補助つえ

令和6年4月から、一部の用具でレンタルと購入を選べる選択制が始まりました。厚生労働省の選択制の対象とする種目に関する解釈では、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、歩行補助つえ(松葉杖を除く多点杖など)が対象種目として示されています。

これらは比較的長く使うことも短く使うこともある用具で、これまで一律にレンタルとされていました。選択制になったことで、長く使うと見込めるなら購入、期間が読めないならレンタル、と利用者側の事情に合わせて選べます。自分の親が使う用具がこの3種目にあたるなら、どちらが得か一度立ち止まって考えてみてください。

貸与か販売かは担当者と相談して決める

選択制の用具は、利用者が一人で決めるのではなく担当者との協議をへて選ぶ流れになっています。前掲の選択制の対象とする種目に関する解釈では、ケアマネジャーが制度の趣旨を説明し、医師などの所見も踏まえたサービス担当者会議での協議を経て、最終的に利用者が貸与か販売かを選ぶプロセスが示されています。

そのため、選択制の用具を使うときは、どのくらいの期間使いそうかを担当者に伝えることが大切です。長く使う見込みなら販売、判断がつかない段階なら貸与、といった提案を受けながら決められます。費用の総額と使う期間の両方を担当者と照らし合わせて、納得したうえで選んでください。

貸与を選んだ後もモニタリングで見直せる

選択制でいったん貸与を選んでも、その後の状況に応じて見直せる仕組みが用意されています。前掲の選択制の対象とする種目に関する解釈では、貸与を選んだ場合は利用開始時か6か月以内に少なくとも1回、福祉用具専門相談員がモニタリングを行うと示されています。

そこでは、体の状態の変化や用具の利用状況、貸与を続けるか購入に切り替えるかの意向が記録され、ケアマネジャーに報告されます。つまり、最初の選択が固定されるわけではなく、使ってみてから買うほうがよいと分かれば切り替えられます。判断に迷ったら、まず貸与で使い始めて様子を見る、という進め方も選択肢に入れておいてください。

レンタルと購入で迷ったときの相談先

自分たちだけで決めきれないときは、専門職に相談すると判断しやすくなります。ここでは、注文の前に頼りたい2つの相談先を紹介します。

ケアプランと合わせて見るケアマネジャー

生活全体を見ながら相談できるのが、ケアマネジャーです。福祉用具の利用は、ケアマネジャーが作るケアプランに位置づけて進めるのが基本で、用具だけを切り離さず生活の困りごとと合わせて考えてもらえます。

介護保険で借りる・買うときは、注文の前にケアマネジャーへ相談しておくと手続きがスムーズです。ケアマネジャーはデイサービスや訪問介護など他のサービスとの兼ね合いも見ているので、用具にかける予算やタイミングに無理がないかを一緒に確かめられます。担当がいない場合は、地域包括支援センターで探すところから始めるとよいでしょう。

適合を確かめる福祉用具専門相談員

用具が体に合うかを見てくれるのが、福祉用具専門相談員です。厚生労働省の福祉用具・住宅改修によれば、本人の心身の状況や住環境を踏まえて用具を選び、使い方の適合や助言まで行う専門職とされています。

貸与や販売の事業者に在籍しているので、事業者に問い合わせれば相談の場をつくってもらえます。カタログで挙げた候補が実際に体に合うかを確かめ、レンタルと購入のどちらがよいかまで一緒に見てくれるのが強みです。届いて終わりにせず、使い心地に合わせて調整もしてくれるので、迷ったら一度相談してみてください。

担当がいないときの入り口は地域包括支援センター

まだ担当のケアマネジャーがいない段階なら、地域包括支援センターが最初の窓口になります。ここは介護保険や福祉用具、住宅改修の相談を無料で受け付ける公的な窓口で、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職が常駐しています。

要介護認定をまだ受けていない段階でも利用でき、認定の申請手続きの案内までまとめて頼めるのが特徴です。本人だけでなく、離れて暮らす家族からの電話相談にも応じてくれます。レンタルと購入のどちらにするか以前に、そもそも誰に相談すればよいか分からないときは、まずここに問い合わせてみてください。

まとめ

介護用品のレンタルと購入は、好みではなく介護保険の区分で分かれます。レンタル(福祉用具貸与)は月額の1〜3割負担で借り続け、状態が変われば交換や返却ができます。購入(特定福祉用具販売)は年10万円までの償還払いで買い、肌に触れる用具を自分のものとして使い続けられます。

迷ったときは、使う期間の長さ、肌に触れるかどうかの衛生面、体の状態が変わりそうかの3つを物差しにしてください。令和6年からは固定用スロープや歩行器などで選択制も始まっています。使う期間と衛生面で当たりをつけ、対象用具かどうかを介護用品のカタログ・選び方で確かめて、判断に迷ったら注文の前にケアマネジャーへ相談してから決めましょう。

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