親の介護が重くなってくると、このまま家で見られるのか、施設に移ったほうがよいのかで迷う場面が出てきます。ただ、いざ調べ始めると特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など名前の似た住まいが並び、どれが親に合うのかまで見分けるのは簡単ではありません。
施設は在宅の代わりになる選択肢のひとつであって、どちらかが必ず優れているわけでもありません。介護の重さや家の造り、費用の出し方によって、家で暮らし続けたほうが合う方もいれば、移ったほうが本人も家族も楽になる方もいます。
そこで、在宅と施設が分かれる場面から、公的施設と民間施設の違い、種類ごとの入居要件までを見ていきます。施設も選択肢に入れて在宅と比べたい方は、判断の材料として役立ててください。
在宅と施設が分かれる場面
在宅か施設かの分かれ目は、介護がどれだけ手を必要とするかと、その手を用意できるかにあります。ここでは、どんな場面で施設が選択肢に上がるのかを見ていきます。
施設を考えるのは介護が一日中必要になったとき
施設が現実の選択肢に上がるのは、介護が昼夜を問わず必要になった段階です。日中のデイサービスや週に何度かの訪問介護で足りているうちは、家で暮らし続けられる方が多くいます。夜間のトイレ介助が毎晩続いたり、目を離すと外に出てしまったりするようになると、同居の家族だけでは支えきれません。
在宅と施設の分かれ目は、介護の重さそのものより「その介護を誰が担えるか」にあります。親の介護度が同じでも、近くに住む家族の人数や仕事の状況によって、続けられるかどうかは変わってくるでしょう。まずは一日のうちどの時間帯に手が足りていないのかを書き出し、担当のケアマネジャーに相談してみてください。
在宅を続けられるかは住まいと介助の手で決まる
家で暮らし続けられるかどうかは、本人の体の状態だけで決まるわけではありません。段差の多い家で車椅子を使えば、移動のたびに家族が抱え上げることになり、介護する側の腰や時間を削ります。反対に、廊下の幅や手すりが体に合っていれば、同じ要介護度でも本人が自分で動ける場面が残るはずです。
介助の手も同じで、同居の家族がいるか、訪問介護をどれだけ組めるかによって、在宅の限界は前後します。住まいを直せば手が足りるのか、直しても足りないのかを分けて考えると、施設を検討すべき段階かどうかが見えてきます。訪問した福祉用具専門相談員やケアマネジャーに、家の造りと介助の量の両方を見てもらうとよいでしょう。
迷ったら在宅の改善余地から確かめる
在宅と施設で迷ったときは、家で暮らす側にまだ打てる手が残っていないかを先に確かめてください。手すりの追加や段差の解消、夜間の見守り機器、ショートステイの併用など、施設に移らずに負担を減らす方法はいくつもあります。介護保険の住宅改修や福祉用具の貸与を使えば、費用を抑えながら試せる範囲も広がるでしょう。
打てる手を出し尽くしてなお、夜も昼も手が足りない、家族の体が持たないという状態なら、施設は逃げではなく妥当な選択肢になります。順番を逆にして先に施設を探すと、本当は家で続けられたのに移ってしまったという後悔が残りかねません。在宅の改善余地を一度洗い出したうえで、施設の情報を集め始めるとよいでしょう。
在宅と施設の違いを、下の表にまとめました。
| 見る点 | 在宅で暮らす | 施設で暮らす |
|---|---|---|
| 住まい | 住み慣れた家をそのまま使う | 居室に移り生活の場が変わる |
| 介護の手 | 家族と訪問介護で組み立てる | 職員が常駐して交代で担う |
| 費用 | 改修や用具の費用と介護保険の自己負担 | 介護費に居住費と食費が加わる |
| 家族の負担 | 夜間や急変時に家族が動く | 日常の介助は職員が担う |
| 始めるまで | 手を打てばすぐ始められる | 空きを待つことがある |
公的施設と民間施設の違い
高齢者施設は、介護保険の施設サービスにあたる公的な施設と、企業などが運営する民間の住まいに大きく分かれます。ここでは、両者で費用と入りやすさがどう違うのかを見ていきます。
公的施設は費用が抑えめで入所まで待つ
公的施設にあたるのは、介護保険の施設サービスとして位置づけられた特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3つです。運営は社会福祉法人や医療法人などが担い、公費と介護保険の財源が入るぶん、入居時の一時金がなく月々の負担も抑えめに収まります。所得が低い方には、居住費と食費の負担を軽くする仕組みも用意されています。
そのぶん希望者が集まりやすく、地域によっては申し込んでから入所まで待つことになります。とくに特別養護老人ホームは待機が生じやすく、申し込めば順番に入れるという性質のものでもありません。費用を抑えたいなら公的施設を軸にしつつ、待つ間の暮らしをどうするかまで含めてケアマネジャーと相談してください。
民間施設は入りやすく費用の幅が広い
民間の住まいには有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあり、公的施設より空きが見つかりやすい傾向にあります。運営会社が自前で建てて募集するため、地域によっては選択肢が多く、見学から入居までの期間も短めです。設備やサービスの幅も広く、食事や催しに力を入れたところを選べます。
反面、費用は立地や居室の広さ、サービスの手厚さで大きく変わり、入居時に一時金が必要なところもあります。同じ有料老人ホームという名前でも、月額の負担が数倍違うことは珍しくありません。パンフレットの月額だけで判断せず、介護が重くなったときに何がいくら増えるのかまで、契約前に必ず確かめておきましょう。
介護保険で入る公的な施設の種類
介護保険の施設サービスは特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3つに分かれ、入れる要介護度も目的もそれぞれ違います。ここでは、3つの施設の役割と要件を見ていきます。
特別養護老人ホームは原則要介護3以上が入る
正式には介護老人福祉施設と呼ばれるのが、いわゆる特養です。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や機能訓練、療養上の世話を提供する施設だと示されています。生活の場として長く暮らせるため、最期まで過ごす想定で選ぶ家族も少なくありません。
入れるのは原則として要介護3以上で、要支援1・2の方は対象外、新規入所の要介護1・2の方もやむを得ない理由がある場合に限られます。費用は施設サービス費に居住費と食費が加わり、要介護度や居室の型によって変わるため、見学のときに内訳まで聞いておくと比べやすくなります。入所を考えるなら、要介護度が要件に届いているかを担当のケアマネジャーに確かめてください。
介護老人保健施設は在宅復帰を目指す間に入る
老健と呼ばれる介護老人保健施設は、家に戻るための通過点にあたる施設です。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、在宅復帰を目指している方の入所を受け入れ、自立した日常生活を送れるようリハビリテーションや必要な医療、介護を提供すると示されています。入れるのは要介護1から5の認定を受けた方で、要支援1・2の方は利用できません。
在宅復帰が目的なので入所には期間の区切りがあり、住み続ける前提の施設ではありません。退院後に体力が落ちて家に戻れないときや、家の改修が終わるまでの間を埋める使い方が向いています。老健にいる間に家の段差を直しておく段取りもできるので、入所が決まったらリハビリの担当者と戻る時期を合わせて相談しましょう。
介護医療院は長期の療養が必要な方が入る
医療の管理が続けて必要な方の受け皿になるのが、介護医療院です。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、長期にわたって療養が必要である方の入所を受け入れ、療養上の管理や看護、介護、機能訓練とあわせて、必要な医療と日常生活のサービスを提供すると示されています。対象は要介護1から5の認定を受けた方に限られます。
たんの吸引や経管栄養など、家では担いきれない医療的な手当てが毎日続く場合の候補になる施設です。在宅で訪問看護を組む道も残りますが、夜間まで対応が必要になると家族の負担は重くなります。主治医から医療の必要度を聞いたうえで、在宅の訪問看護でまかなえるかどうかをケアマネジャーと突き合わせてみてください。
民間が運営する高齢者向け住まいの種類
民間の住まいは、介護をホームの職員が担うのか、外部の事業所に頼むのかで性格が分かれます。ここでは、代表的な4つの住まいの違いを見ていきます。
介護付有料老人ホームはホームの職員が介護する
介護付と名乗れるのは、特定施設入居者生活介護の指定を受けたホームだけです。厚生労働省の有料老人ホームの類型では、介護が必要になっても、そのホームが提供する特定施設入居者生活介護を使いながら居室で生活を続けられる住まいだと説明されています。指定を受けていないホームは、広告やパンフレットに介護付やケア付と表示できません。
介護サービスをホームの職員が提供する一般型と、安否確認や計画作成をホームが行い介護は委託先の事業所が担う外部サービス利用型に分かれます。介護が重くなっても住まいを変えずに済む点が、在宅から移る家族にとっての利点になります。見学に行ったら、まず特定施設の指定を受けているかどうかを確かめておきましょう。
住宅型有料老人ホームは外部の介護サービスを使う
住宅型有料老人ホームは、生活支援などのサービスが付いた住まいにあたります。同じ有料老人ホームの類型では、介護が必要になった場合、入居者自身の選択により地域の訪問介護などを使いながら居室での生活を続けられると説明されています。介護は外から呼ぶ形なので、在宅の暮らしを住まいごと移したような使い方に近くなります。
使う分だけ介護費がかかるため、介護が軽いうちは負担が小さく収まりますが、重くなるほど費用が積み上がります。介護が進んだときに住み続けられるのか、退去を求められるのかは契約によって違うので、入居前に条件を読み込んでおいてください。ケアマネジャーに契約書を一緒に見てもらうと、見落としを減らせます。
サービス付き高齢者向け住宅は賃貸借契約で借りる
サービス付き高齢者向け住宅は、施設ではなく高齢者向けの賃貸住宅にあたります。国土交通省と厚生労働省が共管するサービス付き高齢者向け住宅情報提供システムでは、居室の広さや設備、バリアフリーといったハード面の条件を備えたうえで、ケアの専門家による安否確認と生活相談サービスを提供する住宅が登録される仕組みだと示されています。
サ高住は入居ではなく賃貸借契約で部屋を借りる住まいなので、介護は基本的に外部の事業所と別に契約します。自由度が高く、元気なうちから住み替えて備える方も多くいます。介護が重くなったあとも住み続けられるかは物件ごとに違うため、安否確認と生活相談の先にどこまでのサービスが付くのかを、登録の内容で確かめてみてください。
ケアハウスは軽費老人ホームにあたる
ケアハウスは老人福祉法にもとづく軽費老人ホームの一種で、比較的低い費用で暮らせる住まいです。自宅で独立して生活するには不安があり、家族の援助を受けにくい高齢者が対象で、食事や生活相談などの支援を受けながら暮らします。運営は社会福祉法人などが担い、所得に応じて負担が決まる仕組みが取られています。
介護が必要になったときの扱いは、その施設が特定施設入居者生活介護の指定を受けているかどうかで変わります。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、特定施設入居者生活介護の対象となる施設として、有料老人ホームとあわせて軽費老人ホーム(ケアハウス)が挙げられています。介護型かどうかで住み続けられる範囲が変わるので、問い合わせのときに指定の有無を聞いてください。
公的施設と民間の住まいの違いを、下の表にまとめました。
| 種類 | 運営 | 介護の担い手 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 公的(社会福祉法人など) | 施設の職員 | 原則要介護3以上 |
| 介護老人保健施設 | 公的(医療法人など) | 施設の職員 | 要介護1から5で在宅復帰を目指す方 |
| 介護医療院 | 公的(医療法人など) | 施設の職員 | 要介護1から5で長期の療養が必要な方 |
| 介護付有料老人ホーム | 民間 | ホームの職員または委託先 | 要支援1から要介護5 |
| 住宅型有料老人ホーム | 民間 | 外部の訪問介護など | 自立から要介護まで幅がある |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 民間 | 外部の事業所と別に契約 | 自立から軽い介護が中心 |
| ケアハウス | 社会福祉法人など | 外部または施設(介護型) | 自宅での生活に不安がある方 |
認知症のある方が入るグループホーム
認知症のある方向けの住まいとして、少人数で共同生活を送るグループホームがあります。ここでは、その仕組みと入れる条件を見ていきます。
グループホームは少人数で共同生活を送る
グループホームの正式な名称は、認知症対応型共同生活介護です。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、認知症の利用者がグループホームに入居し、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練を受けるサービスだと示されています。暮らすのは5人から9人ほどの少人数の単位です。
大きな施設と違い、職員と一緒に食事の支度や掃除をしながら日常を続ける形が取られます。慣れた顔ぶれと決まった日課が保たれるため、環境の変化で混乱しやすい方でも落ち着いて過ごせることがあります。認知症の診断を受けていて、大人数の場になじめるか不安があるなら、候補として見学してみてください。
入れるのは要支援2以上で市町村に住民票がある方
グループホームは地域密着型サービスに分類され、誰でもどこでも入れる住まいではありません。同じ介護サービス情報公表システムでは、要支援2以上の方が対象で、要支援1の方は利用できないと示されています。地域密着型サービスはその市町村に住民票のある方が使える仕組みなので、隣の市のホームには原則として申し込めません。
親を呼び寄せて近くのグループホームに入れたい場合は、住民票の移動が必要になることもあります。手続きや空き状況は市町村の窓口や地域包括支援センターが把握しているので、探し始める前に問い合わせておくと動きやすくなります。認知症の診断書や主治医意見書の準備も要るため、早めに主治医へ相談しておきましょう。
在宅と施設の中間にあたる住まい
グループホームは、大規模な施設と自宅の中間に位置づけられる住まいです。居室に加えて台所や居間を共有し、家事の一部を自分で担いながら暮らすため、生活の形は自宅に近く保たれます。地域の行事に参加したり、なじみの店に出かけたりと、地域との行き来が残る点も特徴のひとつでしょう。
反面、医療的な対応や重い介護には限りがあり、体の状態が進むと特別養護老人ホームなどへ移ることを検討する場面が出てきます。看取りまで対応するかどうかもホームによって差があるので、入居の相談時に必ず確かめてください。在宅を続けるか施設に移るかで迷っている段階なら、中間の選択肢として比べてみるとよいでしょう。
在宅と施設を比べるときの見方
施設の種類が見えてきたら、自分の家の事情と突き合わせる番です。ここでは、比べるときに押さえておきたい3つの点を見ていきます。
費用は施設の種類と所得と地域で変わる
施設の費用は、種類だけでなく所得や地域、居室の型によって変わるので、相場という一つの数字では捉えられません。介護保険の施設では施設サービス費の自己負担が原則1割から3割で、これに居住費と食費、日常生活費が加わります。民間のホームでは家賃にあたる部分と管理費、介護費が別々に積み上がり、入居時の一時金を求めるところもあります。
所得の低い方には、居住費と食費の負担を軽くする仕組みが用意されています。適用されるかどうかは世帯の状況で決まるため、パンフレットの月額を鵜呑みにせず、自分の場合はいくらになるのかを施設と市町村の両方に確かめてください。在宅と比べるときは、家の改修費や用具の費用も並べて計算すると、差が見えやすくなります。
特別養護老人ホームは入所待ちを見込んで相談する
特別養護老人ホームは費用が抑えめなぶん希望が集まり、申し込んでから入所するまでに待つ場面が出てきます。入所の順番は申し込み順ではなく、介護の必要度や家族の状況をもとに施設が判断する仕組みが取られています。要介護3の要件に届いていても、すぐに部屋が空くとは限りません。
待つ間をどう暮らすかまで含めて考えると、在宅の手当てを止める判断にはなりにくくなります。申し込みだけ先に済ませ、空きが出るまでは家で暮らしながらショートステイを挟む、老健を挟むといった組み立ても可能です。空き状況や申し込みの方法は施設と市町村で違うので、まずはケアマネジャーに地域の実情を聞いてみてください。
在宅の続けやすさは家の造りで変わる
同じ介護度でも、家の造りによって在宅を続けられる年数は変わります。段差だらけの廊下やまたぎの高い浴槽が残っていると、本人ができることまで家族が代わりに担うことになり、施設を考える時期が早まりがちです。手すりや引き戸、床の段差解消といった手当てが入れば、自分で動ける場面が残り、介助の量そのものが減ります。
新築や住み替えまで視野に入れるなら、住まいの性能から見直す道もあります。どこまで直せば在宅を続けられるのかを知りたい方は、バリアフリー住宅の特徴とメリット・デメリットを読んだうえで、施設の費用と見比べてみてください。工事の可否と概算は、ケアマネジャーと施工業者の両方に見てもらうと判断しやすくなります。
入居の要件や費用は、施設の種類と要介護度、所得、地域によって変わります。この記事の内容はあくまで目安なので、実際に入れるか、月々いくらかかるかは、施設と市町村の窓口、担当のケアマネジャーに必ず確かめてください。
まとめ
高齢者施設は、介護保険の公的な施設と民間の住まいに分かれます。特別養護老人ホームは原則要介護3以上が長く暮らす場、介護老人保健施設は在宅復帰を目指す間に入る場、介護医療院は長期の療養が必要な方の受け皿にあたります。民間では、介護付有料老人ホームはホームの職員が介護を担い、住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は外部の介護サービスを使う形です。
在宅と施設のどちらが合うかは、介護の重さと、その手を用意できるかで分かれます。家に打てる手が残っているうちは在宅を続けられることも多く、施設を探すのは手を出し尽くしてからでも遅くありません。費用や要件は施設と地域で変わるため、申し込みの前にケアマネジャーと市町村の窓口に確かめてください。在宅を続ける道と住み替えの道を並べて考えたい方は、老後の住まいの選び方もあわせて役立ててください。


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