介護保険の住宅改修で使える工事・使えない工事|対象と対象外の一覧

費用・補助金・税制

親の家に手すりを付けたい、玄関の段差をなくしたいと考えて調べ始めると、介護保険で費用の一部が戻ると知る方は多いものです。ただ、どんな工事でも対象になるわけではなく、家を直す工事の中には給付を受けられるものと受けられないものがあります。

対象かどうかの線引きは、厚生労働省の告示と、その読み方を示した解釈通知で決められています。あいまいなまま業者に見積もりを頼むと、対象外の工事まで自費で払うことになったり、あとから給付を断られたりしかねません。

そこで、介護保険の住宅改修で給付を受けられる六種類の工事と、その具体例、対象外になりやすい工事を一覧にまとめました。何が対象で何が対象外かを申請の前に確かめておきたい方の手がかりとして役立ててください。

介護保険の住宅改修で給付を受けられる条件

対象になる工事を見る前に、そもそも誰がいくらまで給付を受けられるのかを押さえておきましょう。

要介護・要支援の認定を受けた方が自宅を直す

介護保険の住宅改修費は、要支援または要介護の認定を受けた方が、住んでいる自宅を直したときに支給される給付です。認定を受けていない方の工事や、本人が暮らしていない家の工事は、たとえ親のためであっても対象になりません。まず認定を受けているかどうかが、給付の入り口になります。

対象になる住宅は、原則として介護保険の被保険者証に記載された住所の家です。施設や病院に入っている場合は、そこが生活の場とみなされて自宅の工事が対象外になることもあります。制度全体の流れやいくら戻るかの全体像は介護保険の住宅改修とはにまとめているので、対象工事とあわせて確かめておくと迷いにくくなります。

支給限度額は生涯20万円で自己負担は1〜3割

給付を受けられるのは、対象工事にかかった費用のうち、支給限度基準額の20万円分までです。厚生労働省の住宅改修に関する資料では、要支援・要介護の区分にかかわらず定額の20万円と定められており、そのうち保険が負担するのは所得に応じて7割から9割にあたります。残る1割から3割が自己負担です。

この20万円は、要支援・要介護の区分にかかわらず、ひとり生涯で一つの枠として扱われます。ただし要介護の状態区分が三段階上がったときや、引っ越して住まいが変わったときには、あらためて20万円の枠が設定される仕組みです。枠の使い方や超えたときの扱いは住宅改修の限度額で詳しく見られるので、工事の規模が大きくなりそうなときは先に確認しておくとよいでしょう。

給付対象になる工事①〜③(支える・移動する)

まず対象六種類のうち、体を支えたり移動を助けたりする三つの工事を見ていきます。

手すりの取付けは廊下・浴室・玄関などが対象

一つ目の対象は、転倒を防いだり立ち座りや移動を助けたりするための手すりの取付けです。厚生労働省の福祉用具・住宅改修に関する法令上の規程についての解釈通知では、廊下・便所・浴室・玄関・玄関から道路までの通路などに設置する手すりが対象と示されています。形状は横に付けるもの、縦に付けるもの、二段式などがあり、体の状態に合わせて選ぶとよいでしょう。

ここでいう手すりは、壁などにねじで固定する工事を伴うものを指します。工事をせずに床に置くだけの手すりや、突っ張り式の手すりは、住宅改修ではなく福祉用具の扱いになり、この給付の対象からは外れます。手すりを支える壁の下地が弱いときは、下地を補強する工事も付帯工事として一緒に対象です。

段差の解消は敷居やスロープの工事が対象

二つ目の対象は、部屋と部屋の間や玄関まわりの段差をなくす工事です。解釈通知では、敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げなどが具体例として挙げられています。つまずきやすい上がりかまちや、車いすで越えにくい通路の段差をなくす目的の工事が、幅広く含まれます。

ただし、床に置くだけの持ち運びできるスロープや、浴室に敷く「すのこ」を置いて段差を減らすものは、工事を伴わないため対象外です。同じように、電動の昇降機や段差解消機など、動力で人や車いすを持ち上げる機器を据える工事も、この項目からは外れます。浴室の床をかさ上げしたことで必要になる給排水の工事や、スロープの脇に付ける転落防止の柵などは、付帯工事として対象に入ります。

床や通路面の材料変更は滑り止めが対象

三つ目の対象は、滑りを防いだり移動しやすくしたりするための、床や通路の材料の変更です。解釈通知では、居室の畳を板やビニル系の床材へ替える、浴室の床を滑りにくいものへ替える、屋外の通路を滑りにくい舗装材へ替える、といった工事が具体例として示されています。濡れると滑る浴室の床や、歩くと沈む畳を替えたいときが、この項目にあたる工事です。

床材を替えるときには、その下地の補修や、床を支える根太の補強といった工事も一緒に必要になることがあります。こうした下ごしらえの工事や、屋外の通路を舗装し直すための路盤の整備も、付帯工事として対象に入ります。見た目をよくするための張り替えではなく、あくまで滑りにくさや歩きやすさを目的とした材料変更が対象になる点は覚えておいてください。

給付対象になる工事④〜⑥(扉・便器・付帯)

残る三つの対象工事として、扉と便器の取替え、そして付帯工事を見ていきます。

引き戸等への扉の取替えはドアノブ交換も対象

四つ目の対象は、開けにくい扉を使いやすいものへ替える工事です。解釈通知では、開き戸を引き戸・折戸・アコーディオンカーテンなどへ取り替えることに加え、扉そのものの撤去、ドアノブの変更、戸車の設置までが含まれると示されています。力が弱くなって重い開き戸を開けにくい方や、車いすで通りにくい方に向いた工事です。

一つ注意したいのは、扉の取替えにあわせて自動ドアにした場合の線引きです。扉を替える工事自体は対象になりますが、自動で開閉させる動力部分の設置は対象に含まれず、その費用は自己負担になります。扉の取替えに伴って壁や柱を直す必要が出たときは、その工事は付帯工事として対象に入るので、見積もりの内訳で対象部分を分けて確かめておくとよいでしょう。

洋式便器等への便器の取替えは和式からの交換が対象

五つ目の対象は、和式の便器を洋式の便器へ取り替える工事です。しゃがむ姿勢がつらくなった方が立ち座りしやすいように替える工事で、暖房便座や洗浄機能が付いた洋式便器への取替えも、和式からの交換であれば対象に含まれます。便器を替えることに伴う床材の変更や、給排水の工事も付帯工事として対象です。

一方で、すでに洋式便器を使っている家で、暖房や洗浄の機能だけを後から付け足す工事は対象になりません。また、床に置いて和式便器を腰掛け式に変える「腰掛便座」は、住宅改修ではなく福祉用具の購入で扱う品なので、この項目からは外れます。汲み取り式の和式から水洗の洋式へ替える場合、水洗化そのものにかかる費用は対象外になる点にも気をつけてください。

五つの工事に付帯して必要になる工事が対象

六つ目の対象は、①から⑤までの工事に付帯して必要になる工事です。手すりや扉、便器といった主となる工事を安全に仕上げるために欠かせない下ごしらえの工事が、これにあたります。単体では対象にならない工事でも、対象工事とセットで必要になれば給付の枠に入る、という考え方です。

具体的には、手すりを付けるための壁の下地補強、段差解消のかさ上げに伴う給排水工事、床材変更のための根太の補強、扉の取替えに伴う壁や柱の改修、便器の取替えに伴う給排水工事や床の張り替えなどが挙げられています。ただし便器の工事のうち水洗化・簡易水洗化にあたる部分は、付帯工事であっても対象から外れます。何が付帯として認められるかは判断が分かれやすいので、見積もりの段階で担当者に確かめておくと安心です。

対象外になりやすい工事

対象六種類にあてはまらず、給付を受けられない工事も知っておきましょう。

新築・増築や老朽化に伴う一般リフォーム

住宅改修はあくまで既にある家を住みやすく直すための給付なので、新築や増築は対象になりません。家を建て替える工事や、部屋を新しく建て増す工事は、たとえそこに手すりや段差解消を含めても、給付の対象からは外れます。介護のためであっても、家そのものを新しく作る工事は制度の範囲外です。

同じように、傷んだ設備を新しくするだけの老朽化リフォームや、見た目をよくするための工事も対象になりません。壊れた床を張り替えるだけ、古くなった扉を同じ形の扉に替えるだけ、といった工事は、介護のための改修とはみなされないためです。給付の対象になるのは、あくまで本人の自立や介護のしやすさを目的とした、六種類にあてはまる工事だけです。

動力で動く機器や自動ドアの動力部分

人や車いすを持ち上げる動力付きの機器は、住宅改修の対象には含まれません。段差解消機や昇降機、リフトのように、電気などの力で段差を越えさせる機器を据える工事は、対象工事の「段差の解消」から外れると解釈通知に示されています。手すりや床材のように、家に固定して使う改修とは性格が違うためです。

扉を自動ドアにしたときの動力部分の費用も、同じ考え方で対象外になります。扉を替える工事そのものは対象でも、自動で開閉させる装置の部分は給付の枠に入りません。動力で動く機器を検討しているときは、住宅改修の給付とは別に、福祉用具の貸与など使える制度がないかをケアマネジャーに相談するとよいでしょう。

工事を伴わない福祉用具そのもの

床に置くだけ、立てかけるだけといった、工事をせずに使える道具は、住宅改修ではなく福祉用具の領域です。持ち運びできるスロープ、突っ張り式や据え置き式の手すり、浴室に敷くすのこ、和式便器に置く腰掛便座などは、いずれも工事を伴わないため住宅改修の対象になりません。これらは福祉用具の貸与や購入で扱う品です。

同じ「手すり」や「スロープ」という名前でも、壁に固定する工事をするか、置くだけで済ませるかで、住宅改修か福祉用具かに分かれます。どちらの制度を使うかで手続きや自己負担の計算も変わるため、迷ったときは福祉用具専門相談員やケアマネジャーに、工事を伴うかどうかから確かめてもらうと確実です。

既に洋式の便器への機能追加や水洗化の費用

便器まわりは、対象と対象外が細かく分かれるところなので注意が必要です。和式から洋式への取替えは対象ですが、すでに洋式の便器を使っている家で、暖房便座や温水洗浄の機能だけを付け足す工事は対象になりません。取り替えるのではなく機能を足すだけの工事は、給付の目的から外れると整理されています。

汲み取り式の和式便器を水洗の洋式便器へ替える場合も、便器を替える部分は対象ですが、水洗化そのものにかかる費用は対象外です。工事の見積もりでは、対象になる便器の取替え部分と、対象にならない水洗化の部分が一つにまとまっていることがあります。どこまでが給付の対象かを分けて見積もってもらい、担当者に確かめておいてください。

対象になる工事と対象外になりやすい工事を、下の表にまとめました。

区分 対象になる工事の例 対象外になりやすいもの
手すり 壁に固定する手すりの取付け 置き型・突っ張り式の手すり(福祉用具)
段差 敷居を低くする・スロープ設置・浴室のかさ上げ 可搬式スロープ、昇降機など動力で動く機器
床・通路 滑りにくい床材や舗装材への変更 老朽化・美観目的の張り替え
引き戸・折戸への取替え、ドアノブ交換 自動ドアの動力部分
便器 和式から洋式への取替え 既に洋式の場合の機能追加のみ、水洗化の費用
全般 上記に付帯して必要な工事 新築・増築

対象かどうかを見きわめる進め方

対象と対象外の線引きは細かいので、迷ったときは自分だけで判断せず、担当者と確かめる手順を踏みましょう。

判断はケアマネジャーと理由書ですり合わせる

対象になるかどうかの判断は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員とすり合わせながら固めるのが基本です。住宅改修では「住宅改修が必要な理由書」を作る必要があり、この書類で、本人の状態に照らしてなぜその工事が必要かを説明します。理由書と工事の内容がかみ合っていないと、対象と認められないことがある点に注意しましょう。

理由書は、ケアマネジャーや、市区町村に届け出た福祉用具専門相談員などが作成します。どの工事なら本人の状態に合い、対象として認められそうかは、こうした専門職が制度に沿って見てくれるはずです。工事の内容を決める前に相談し、対象になりそうな範囲を一緒に確かめておくと、あとで給付を断られる失敗を防げます。

対象か迷う工事は着工前に市区町村へ確認する

対象になるかどうかで迷う工事は、工事を始める前に市区町村の窓口へ確認しておくことが欠かせません。介護保険の住宅改修は、原則として工事の前に申請し、保険者である市区町村が「保険給付として適当な改修か」を確かめる仕組みになっています。先に工事を済ませてしまうと、対象外と判断されても取り返しがつきません。

とくに、付帯工事にあたるか、動力部分にあたるかといった細かい線引きは、自治体ごとに運用が分かれることもあります。見積もりの内訳を持って窓口やケアマネジャーに相談し、どこまでが対象かをはっきりさせてから工事を発注してください。着工前に確認する手順を守れば、自己負担が思わぬ額にふくらむのを避けられます。

対象外の工事は別の制度や自費で計画する

やりたい工事が対象外だと分かったときは、あきらめる前に別の使える制度がないかを探しておきましょう。介護保険の対象にならない工事でも、市区町村が独自に設けているバリアフリー改修の助成や、高齢者向けのリフォーム補助が使えることがあります。窓口で介護保険の対象外と言われたら、自治体独自の制度についてもあわせて聞いてみてください。

置くだけの手すりや可搬式のスロープのように、住宅改修では対象外でも、福祉用具の貸与や購入なら使える道具もあります。工事にこだわらず「同じ困りごとを別の道具で減らせないか」という目で見ると、選べる手が増えるはずです。対象外の工事を自費でやるかどうかも含めて、費用の全体像をケアマネジャーと相談しながら決めていくと、無理のない計画になります。

注意

介護保険の住宅改修は、原則として工事を始める前の申請が必要です。対象になるか迷う工事を自己判断で先に発注すると、対象外と判断されても給付を受けられません。工事の前に必ずケアマネジャーや市区町村の窓口に相談し、どこまでが給付の対象かを確かめてください。

まとめ

介護保険の住宅改修で給付を受けられるのは、手すりの取付け、段差の解消、床や通路面の材料変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、そしてこれらに付帯して必要となる工事の六種類です。壁に固定する手すりや、和式から洋式への便器の取替えは対象になります。

一方で、置くだけの福祉用具、新築や増築、老朽化に伴う一般リフォーム、自動ドアの動力部分や水洗化の費用は対象外になりやすい工事です。対象かどうかの線引きは細かく分かれるため、工事を始める前にケアマネジャーや市区町村へ相談し、対象になる範囲を確かめてから発注してください。使える20万円の枠をどう組み合わせるかは、住宅改修の限度額もあわせて確認しておくと計画を立てやすくなります。

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