平屋のバリアフリー住宅|段差をなくす間取りと価格の考え方

建てる・住み替える

親の介護や自分の老後を考えて家を建て替えるとき、平屋を候補に挙げる方は多くいます。階段のない家なら、体が思うように動かなくなっても今の暮らしを続けられそうに思えるからです。

ただ、平屋にすれば自動でバリアフリーになるわけではありません。玄関や浴室には段差が残りますし、間取りの取り方によっては車椅子で回れない家にもなります。価格も、同じ延床面積の2階建てとそのまま比べられるものではありません。

そこで、平屋が加齢や介護に強い理由と、平屋でも残る段差、段差をなくす間取りの決め方、価格の考え方までをまとめました。年をとってからの暮らしを見越して平屋を選ぼうとしている方は、見積りを取る前の手がかりとしてお使いください。

平屋がバリアフリーに向く理由

平屋の強みは、暮らしがひとつの階で完結する点にあります。ここでは、加齢や介護の場面で平屋が効いてくる理由を見ていきます。

階段がないので将来の2階問題が起きない

2階建てで年を重ねた家庭がぶつかるのが、2階へ上がれなくなる問題です。寝室や子ども部屋が2階にあると、脚力が落ちた時点で寝る場所を1階へ移さざるをえず、和室を寝室に作り替えたり、リビングにベッドを置いたりする家庭も出てきます。階段昇降機を後から付ける手もありますが、本体と工事で数十万円かかり、階段の幅によっては設置できません。

平屋なら、この先延ばしにしてきた問題そのものが起きません。寝室も浴室もはじめから同じ階にあるため、体の状態が変わっても寝る場所を動かさずに済みます。国土交通省の高齢者が居住する住宅の設計に係る指針でも、基本レベルとして便所が寝室と同じ階にあること、推奨レベルとして玄関・便所・浴室・食事室・脱衣室・洗面所が寝室と同じ階にあることが示されています。平屋はこの推奨レベルを間取りの工夫なしに満たせるので、まず「階段のない家に住む」という一点を、家づくりの出発の条件として建築士に伝えてみてください。

生活がワンフロアで完結する

洗濯や掃除といった毎日の家事も、平屋なら上下の移動なしに回せます。2階のベランダへ洗濯物を運ぶ、掃除機を抱えて階段を上がる、といった動きは若いうちなら何でもありませんが、膝や腰を痛めたとたんに重い負担へ変わるものです。物を持って階段を下りる動作は、高齢期の転落事故が起きやすい場面でもあります。

洗面所から物干し場まで数歩で届く平屋は、家事の途中で息を切らす場面が減り、日々の負担を抑えられます。将来ヘルパーや家族が家事を手伝う段になっても、上下に散らばった動線を覚えてもらう必要がありません。間取りを考えるときは、洗濯・物干し・収納の3か所を近くへ寄せられるか、建築士に問いかけてみましょう。

介助と見守りの動きが短くなる

介護が始まってからの平屋は、支える側の動きの短さで効いてきます。トイレへの付き添い、入浴の介助、夜間の呼び出しといった用事は、どれも介助する家族が本人のところへ移動するところから始まります。寝室が2階にあると、この移動のたびに階段の上り下りが挟まり、夜中の呼び出しでは家族の睡眠も削られてしまうものです。

平屋は、寝室と便所と浴室が同じ床でつながるため、介助のたびに階段を上下する必要がありません。将来デイサービスの送迎や訪問入浴を頼む場面でも、玄関から寝室まで平らな道でつながっていると受け入れがしやすくなります。住まい全体の考え方から見比べたい方は、バリアフリー住宅の特徴とメリットもあわせて確認しておくとよいでしょう。

平屋と2階建てを、加齢と介護の観点だけで比べると下の表のようになります。

比べる点 平屋 2階建て
階段 なし あり(昇降機の増設は工事が必要)
寝室と水回り 同じ階に置ける 分かれやすく後から移す家庭が多い
介助のしやすさ 同じ床で完結する 呼び出しのたびに上下移動が挟まる
必要な敷地 広めに要る 狭くても建てやすい
同じ延床の建築費 割高になりやすい 抑えやすい

平屋でも残る段差

階段がなくなっても、家の中の段差がすべて消えるわけではありません。ここでは、平屋を建てても残りやすい3つの段差を見ていきます。

玄関の上がり框は平屋でも残る

平屋の図面を見て見落としやすいのが、玄関の上がり框です。日本の住宅は土間と床の間に高さの差を設けるのが一般的で、平屋でもこの差はそのまま残る部分です。階段のない家を建てても、家に入る最初の一歩だけは段差をまたぐことになります。高さが20センチ近くある框は、脚が上がりにくくなった方にとって家の中でいちばん危ない場所へ変わってしまいます。

設計指針では、推奨レベルとして上がり框の段差を110mm以下(地面に接する階の玄関では180mm以下)に抑える形が示されています。踏み段を1段挟んで一度に上がる高さを分ける方法もあり、框の脇に縦手すりを付ければ体を引き上げる支えになります。玄関の図面を見るときは框の高さが何ミリなのかを必ず数字で聞き、口頭で「低め」と言われたまま進めないようにしてください。

浴室の出入口とまたぎは平屋でも残る

浴室も、平屋かどうかとは関係なく段差が生まれやすい場所です。洗い場の水を脱衣室へ流さないために、出入口には水返しの立ち上がりが付きます。浴槽のふちをまたぐ動作も残るので、階段のない家を建てただけでは入浴中の転倒の危険は減りません。

設計指針は、浴室出入口の段差について20mm以下の単純段差とするか、浴室内外の高低差を120mm以下かつまたぎ高さを180mm以下として手すりを設ける形を示しています。新築の平屋なら、床の高さをそろえてグレーチング(溝ぶた)で排水を受ける納まりも選べます。図面の段階なら数ミリ単位で決められる部分なので、浴室の出入口をどう納めるつもりか、契約前に確かめておきましょう。

掃き出し窓は屋内と屋外の高低差が残る

庭に面した掃き出し窓も、平屋で段差が残る場所にあたります。木造住宅では床下の換気や雨の吹き込みを避けるため、床面が地面より高い位置に来るからです。窓の外にウッドデッキやテラスを付ける場合も、床と同じ高さでつなぐか一段下げるかで、外へ出られるかどうかが変わってきます。

庭で洗濯物を干したい、車椅子で外へ出たいといった希望があるなら、掃き出し窓の外側をどう納めるかを早い段階で伝えてください。床と同じ高さのデッキを付けて、そこから緩やかなスロープで地面へ下ろす形にすれば、外との行き来が楽になります。窓のサッシ下枠にもわずかな立ち上がりが残るので、フラットレールの製品を選べるか建築士に聞いてみるとよいでしょう。

バリアフリー平屋の間取りの要点

平屋の良さは、間取りの取り方しだいで生きも死にもします。ここでは、段差以外に図面の段階で決めておきたい4つの要点を見ていきます。

水回りは寝室の近くにまとめる

平屋の間取りでまず決めたいのが、寝室と便所と浴室の位置関係です。同じ階にあっても、寝室が家の東端で便所が西端にあれば、夜中に何度もトイレへ通う体には遠すぎます。夜間の移動が長い家ほど転倒の危険が増し、間に合わずに困る場面も出てくるでしょう。

寝室のとなりに便所を置き、その奥へ脱衣室と浴室を続ける並べ方にすると、夜の移動が数歩で済みます。給排水の配管を1か所へ寄せられるため、工事費も抑えやすくなるでしょう。建築士に希望を伝えるときは、部屋の名前を並べるだけでなく「寝室から便所まで何歩か」を数字で確かめると、図面の良し悪しが判断しやすくなります。

廊下を減らして部屋どうしをつなぐ

長い廊下は、平屋の弱点になりやすい部分です。平屋は部屋が横に並ぶため、間取りを詰めずに図面を起こすと、家の端から端まで廊下が伸びて延床面積だけが増えていきます。廊下は住むためでなく通るためだけの床なので、面積が増えるほど建築費が上がり、掃除の手間も増えていくでしょう。

リビングを家の中心に置き、そこから各部屋へ直接入る形にすると、廊下そのものを減らせます。回り込んで戻らずに一周できる並べ方にしておけば、介助する家族が動きやすく、車椅子でも切り返しの回数が減ります。動線の考え方をもっと詳しく知りたい方は、バリアフリー住宅の間取りもあわせて役立ててください。

通路と出入口の幅は数値で決める

廊下や出入口の幅は、図面では見た目の印象で判断できないので、数字で押さえてください。設計指針では、寝室や便所などをつなぐ日常生活空間の通路について、有効な幅員を780mm以上(柱等の箇所では750mm以上)とする基本レベルが示されています。有効幅員とは、壁の仕上げから仕上げまでの実際に通れる寸法を指します。

住宅性能評価・表示協会が説明する高齢者等への配慮では、介助のしやすさの水準が段階で分かれており、最上位の等級5で通路850mm以上・出入口幅800mm以上、浴室は短辺1,400mm以上(内法)とされています。車椅子で介助を受ける前提なら、この上位の数値を目標に伝えると建築士も判断しやすくなります。図面を受け取ったら、廊下・出入口・浴室の3か所の寸法だけは自分の目で拾って確かめましょう。

将来の車椅子を見込んで回れる余白を残す

今は歩けていても、車椅子を使う日が来る前提で余白を残しておくと、あとから困りません。車椅子は前へ進むだけでなく、向きを変える場所が要ります。廊下の突き当たりや便所の中に回れる余白がないと、幅だけ足りていても実際には入れない家になりかねません。

便所や脱衣室は、扉を開けたところに車椅子が入る広さを取り、扉自体を引き戸にしておくと、車椅子に座ったまま開け閉めできます。今すぐ手すりを付けなくても、壁の中に下地の板を入れておけば、必要になった日に壁を壊さず取り付けられます。新築の段階なら数万円の追加で済む備えなので、下地補強を入れる場所を図面へ書き込んでもらってください。

平屋の価格の考え方

平屋は「階段の分だけ安い」と思われがちですが、実際の見積りは逆に出ることがあります。ここでは、平屋の価格が上がりやすい仕組みと、金額の確かめ方を見ていきます。

同じ延床面積でも基礎と屋根が広くなる

平屋の建築費を考えるとき、まず知っておきたいのが基礎と屋根の面積です。同じ延床面積30坪の家でも、2階建てなら1階と2階に15坪ずつ載るのに対し、平屋は30坪すべてが地面に接する形です。基礎の工事も屋根の工事も、面積に比例して材料と手間が増えていきます。

同じ広さの家を建てても、平屋は基礎と屋根がおよそ2倍の面積になるため、坪あたりの単価は上がりやすくなります。階段が要らない分は減りますが、階段の工事費より基礎と屋根の増加分が上回る例も少なくありません。「平屋のほうが安いはず」という前提で予算を組むと後から苦しくなるので、最初の資金計画の段階でこの仕組みを頭に入れておきましょう。

平屋には2階建てより広い敷地が要る

土地から探す方にとっては、敷地の広さも価格に響きます。延床30坪を平屋で建てるなら、建物だけで30坪の面積が地面を占めるうえ、建ぺい率の制限があるため、敷地はそれよりかなり広く要る計算です。駐車場や庭を確保するとなれば、必要な広さはさらに増えていきます。

土地の値段が高い地域では、この差が建築費の増減より大きく効いてくるでしょう。すでに親の土地がある、郊外で広めの敷地が手に入るといった条件なら、平屋の不利は小さくなります。土地を探す段階で、狙う地域の建ぺい率と広さの相場を不動産会社に聞き、平屋が成り立つ敷地かどうかを先に見きわめてください。

相場でなく見積りで確かめる

平屋の坪単価は、耳にする相場の幅が広く、そのまま自分の家に当てはめられません。同じ平屋でも、屋根の形や基礎の仕様、地盤改良の要否や水回りの設備によって金額が変わります。バリアフリーの仕様を加えるなら、引き戸への変更や下地補強、浴室の納まりも金額に乗ってくるでしょう。

複数の会社から見積りを取り、どの工事がいくらなのかを項目ごとに見比べると、条件の違いが金額の差として見えてきます。値段だけでなく、段差や幅の希望をどこまで図面に反映してくれたかも見比べる材料にしてください。新築の予算感をもう少し細かく知りたい方は、バリアフリー新築の費用相場もあわせて確認しておくと迷いにくくなります。

注意

平屋の価格は、土地の条件や地盤の状態、屋根の形や設備の選び方によって大きく変わるものです。ネット上の坪単価をそのまま自分の家に当てはめると、資金計画が狂います。必ず複数社から見積りを取り、同じ条件で比べたうえで判断してください。

平屋のバリアフリー性能を数値で確かめる

希望を言葉で伝えるだけでは、出来上がった家が思った通りかどうか確かめられません。ここでは、平屋のバリアフリー性能を数値で示す2つの物差しを見ていきます。

高齢者等配慮対策等級で希望を伝える

住宅性能表示制度には、加齢に伴う体の変化への配慮を示す高齢者等配慮対策等級という項目があり、専用部分は等級1から等級5までの5段階に分かれます。等級が上がるほど、移動時の安全性と介助のしやすさに配慮した水準が求められます。段差や手すり、通路や出入口の幅、浴室の広さなどが、等級ごとに数値で決まっている仕組みです。

「バリアフリーにしてください」と伝える代わりに「高齢者等配慮対策等級4で」と伝えると、建築士と施主の間で認識がずれません。第三者機関の評価を受ければ、図面と現場が基準を満たしているかを外部の目で確かめられます。等級を上げるほど費用も上がるので、どの等級を狙うかは見積りと見比べながら決めてください。

設計指針の基本レベルと推奨レベルを注文に使う

国土交通省の設計指針は、配慮事項を基本レベルと推奨レベルの2段階で示しており、注文住宅の希望を具体化するときの物差しになります。指針では段差のない構造を5mm以下の段差を含むものと定めていて、玄関出入口についてはくつずりと外側の高低差を20mm以下、くつずりと土間の高低差を5mm以下とする形が示されています。数字で書かれているので、図面のどこを見ればよいかがはっきりします。

指針をすべて満たそうとすると予算が膨らむため、譲れない場所から順に選ぶのが現実的です。寝室まわりと便所は推奨レベル、その他は基本レベルというように、場所ごとに水準を分ける決め方もできます。打ち合わせの前に指針へ目を通し、気になる箇所を印刷して持ち込むと、話が早く進むでしょう。

まとめ

平屋がバリアフリーに向くのは、階段がなく、寝室も水回りも同じ床でつながるからです。将来2階へ上がれなくなる問題が起きず、介助や見守りの動きも短くなります。ただし玄関の上がり框、浴室の出入口、掃き出し窓の段差は平屋でも残るため、階段のない家=段差のない家ではありません。

間取りでは、水回りを寝室の近くへ寄せ、廊下を減らし、通路と出入口の幅を数値で決め、車椅子が回れる余白と下地補強を残しておくと、体の状態が変わっても住み続けられます。価格は基礎と屋根が広くなる分だけ坪単価が上がりやすく、敷地も広めに要るので、相場でなく複数社の見積りで確かめてください。希望を伝えるときは高齢者等配慮対策等級や設計指針の数値を使うと、認識のずれを防げます。住まい全体の選び方から見比べたい方は、バリアフリー住宅の特徴とメリットもあわせて役立ててください。

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